抗凝固薬アピキサバンやリバーロキサバンとアミオダロンの併用は出血関連リスクと関連するのか?
アミオダロンはP糖蛋白やCYP3A4阻害作用を有していることから、薬物相互作用により併用薬剤の排泄を遅延させる可能性があります。しかし、この相互作用による患者予後については充分に検討されていません。
そこで今回は、アピキサバンまたはリバーロキサバンを投与されている患者において、アミオダロンによる治療中の出血関連入院リスクについて、これらの抗凝固薬の排泄を阻害しない抗不整脈薬であるフレカイニドまたはソタロールと比較検討したレトロスペクティブ・コホート研究の結果をご紹介します。
本コホートは65歳以上の米国メディケア受給者でした。心房細動を有する患者が2012年1月1日から2018年11月30日の間に抗凝固薬の使用を開始し、その後、試験用抗不整脈薬による治療を開始した症例が解析されました。
本試験では、出血に関連する入院(主要アウトカム)、および最近(過去30日)の出血の証拠の有無にかかわらず虚血性脳卒中、全身性塞栓症、死亡のイベントまでの時間(副次アウトカム)が、傾向スコア重複加重で調整されました。
試験結果から明らかになったことは?
抗凝固薬および抗不整脈薬の使用を開始した患者は91,590例(平均年齢76.3歳、女性52.5%)で、アミオダロンが54,977例、フレカイニドまたはソタロールが36,613例でした。
率差[RD] | ハザード比[HR] | |
出血関連入院 | RD 17.5イベント/1,000人・年 (95%CI 12.0~23.0イベント) | HR 1.44 (95%CI 1.27~1.63) |
虚血性脳卒中または全身性塞栓症 | RD -2.1イベント/1,000人・年 (95%CI -4.7~0.4イベント) | HR 0.80 (95%CI 0.62~1.03) |
最近の出血の証拠を伴う死亡 | RD 9.1イベント/1,000人・年 (95%CI 5.8~12.3イベント) | HR 1.66 (95%CI 1.35~2.03) |
他の死亡 | RD 5.6イベント/1,000人・年 (95%CI 0.5~10.6イベント) | HR 1.15 (95%CI 1.00~1.31) |
出血関連入院のリスクは、アミオダロンの使用により増加した(率差[RD] 17.5イベント/1,000人・年、95%CI 12.0~23.0イベント、ハザード比[HR] 1.44、CI 1.27~1.63)。虚血性脳卒中または全身性塞栓症の発生率は増加しなかった(RD -2.1イベント/1,000人・年、CI -4.7~0.4イベント、HR 0.80、CI 0.62~1.03)。最近の出血の証拠を伴う死亡(RD 9.1イベント/1,000人・年、CI 5.8~12.3イベント、HR 1.66、CI 1.35~2.03)は、他の死亡(RD 5.6イベント/1,000人・年、CI 0.5~10.6イベント、HR 1.15、CI 1.00~1.31)に対して大きいことが示された(HR比較:P=0.003)。
出血関連入院の発生率 | |
リバーロキサバン | RD 28.0イベント/1,000人・年 (95%CI 18.4~37.6イベント) |
アピキサバン | RD 9.1イベント/1,000人・年 (95%CI 2.8~15.3イベント) |
リバーロキサバン(RD 28.0イベント/1,000人・年、CI 18.4~37.6イベント)の出血関連入院の発生率の増加は、アピキサバン(RD 9.1イベント/1,000人・年、CI 2.8~15.3イベント)よりも大きいことが示されました(p = 0.001)。
コメント
アミオダロンが有するP糖蛋白やCYP3A4阻害作用による薬物相互作用の影響については充分に検討されていません。
さて、レトロスペクティブコホート研究において、アピキサバンまたはリバーロキサバン使用中にアミオダロン治療を受けた65歳以上の心房細動患者は、フレカイニドまたはソタロールで治療を受けた患者よりも出血関連入院の発生率が高いことと関連していました。
基礎研究による作用機序と、アウトカム発生リスクが一致していることから、アピキサバンまたはリバーロキサバン使用中にアミオダロン治療を行うことで、これらの抗凝固薬の排泄が遅延し、出血リスクが増加する可能性が示されたことになります。
本試験は米国のメディケア受給者を対象としていることから、他の国や地域で同様の結果が示されるのかについては不明です。また、あくまでも仮説生成的な結果が示されたに過ぎません。
続報に期待。
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