2型糖尿病リスクを有する成人における最適な食事療法はどれですか?(RCT; Nat Med. 2023)

big family in kitchen and man feeding baby in feeding chair 食事
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新規の断続的断食+早期時間制限食アプローチの効果とは?

断続的断食(Intermittent fasting)は、ヒトの健康を改善するためのカロリー制限(calorie restriction, CR)に代わる同等の方法と考えられます。しかし、「断食」中の食事タイミングの適用を検討した試験はほとんどなく、これが試験結果の制限となる可能性があります。

そこで今回は、新規の断続的断食+早期時間制限食事(intermittent fasting plus early time-restricted eating, iTRE)アプローチの効果について、2型糖尿病の発症リスクが高い成人(N=209、58±10歳、34.8±4.7kg/m2)を対象に、カロリー制限(CR)や通常ケアと比較したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

試験参加者は、iTRE(08:00~12:00の間にエネルギー必要量を30%、その後、週3日の連続しない日に20時間絶食し、他の日は自由食)、CR(毎日エネルギー必要量の70%、時間指定なし)、標準ケア(体重減少冊子の活用)の3群(2:2:1)にランダムに割り付けられました。

この非盲検並行群3群間ランダム化比較試験では、iTRE群およびCR群の参加者に6ヵ月間栄養サポートが提供され、さらに12ヵ月間のフォローアップが行われました。

本試験の主要評価項目は、6ヵ月目の混合食負荷試験に対するグルコース曲線下面積の変化であり、iTREとCRの比較が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

新規の断続的断食+早期時間制限食事(iTRE)カロリー制限食(CR)
6ヵ月目の耐糖能-10.10 mg/dL/min
(95%CI -14.08 〜 -6.11
P=0.03
-3.57 mg/dL/min
(95%CI -7.72 〜 0.57)
18ヵ月目の耐糖能-4.71
(95%CI -9.75 〜 0.33)
-3.79
(95%CI -8.84 〜 1.26)

6ヵ月目の耐糖能は、カロリー制限食(CR)と比較して、新規の断続的断食+早期時間制限食事(iTRE)でより大きく改善しました(-10.10、95%信頼区間 -14.08 〜 -6.11 vs. -3.57、95%信頼区間 -7.72 〜 0.57mg/dL/min;P=0.03) が、18ヵ月目にはこれらの差は消失しました。

有害事象は一過性で、概して軽度でした。疲労の報告は、iTREとCRおよび標準治療の間で高く、便秘と頭痛の報告は、iTREで高かいことが示されました(vs. CR、vs. 標準ケア)。

コメント

16時間以上の断続的断食(Intermittent fasting)の効果については一貫した結果が示されておらず、この要因の一つにカロリー摂取量が考えられます。Xiao Tong Teongらが開発した新規の断続的断食+早期時間制限食事(intermittent fasting plus early time-restricted eating, iTRE)アプローチがありますが、この効果については明らかになっていませんでした。

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、2型糖尿病の発症リスクが高い成人において、長期空腹時の食事タイミングのアドバイスを取り入れることで、6ヵ月目の食後の糖代謝がより改善されました。しかし、この差は18ヵ月目に消失しました。

ダイエットプログラム全般に言えることですが、介入アプローチの実施率と継続率により結果に影響します。本試験においても6ヵ月間の栄養サポートが終了した後に、群間差が消失していることから、血糖コントロールや体重減少などに対して前向きに取り組む参加者の割合(アクティブ率)が変化した可能性が高いと考えられます。また、本試験では6ヵ月目の時点においてアクティブな参加者に対し、追加の12ヵ月フォローアップ期間中に体重維持プランに変更するかどうかを選択できるプロトコルとなっていました。iTRE群では、より多くの参加者が食事計画の変更を選択したため、結果の解釈に注意を要します。さらに耐糖能の群間差である5.6mg/dL/minが、臨床上どの程度意義があるのか疑念が残ります。

今後の検討結果に期待。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病の発症リスクが高い成人において、長期空腹時の食事タイミングのアドバイスを取り入れることで、6ヵ月目の食後の糖代謝がより改善されたが、この差は18ヵ月目に消失した。

根拠となった試験の抄録

背景:断続的断食(Intermittent fasting)は、ヒトの健康を改善するためのカロリー制限(calorie restriction, CR)に代わる同等の方法と思われる。しかし、「断食」中の食事タイミングの適用を検討した試験はほとんどなく、これが制限となる可能性がある。我々は、新規の断続的断食+早期時間制限食事(intermittent fasting plus early time-restricted eating, iTRE)アプローチを開発した。2型糖尿病の発症リスクが高い成人(N=209、58±10歳、34.8±4.7kg/m2)を、iTRE(08:00~12:00の間にエネルギー必要量を30%、その後、週3日の連続しない日に20時間絶食し、他の日は自由食)、CR(毎日エネルギー必要量の70%、時間指定なし)、標準ケア(体重減少冊子)の3群(2:2:1)にランダムに割り付けた。

方法:この非盲検並行群3群間ランダム化比較試験では、iTRE群およびCR群の参加者に6ヵ月間栄養サポートを提供し、さらに12ヵ月間のフォローアップを行った。主要評価項目は、6ヵ月目の混合食負荷試験に対するグルコース曲線下面積の変化で、iTREとCRの比較であった。

結果:6ヵ月目の耐糖能は、CRと比較してiTREでより大きく改善した(-10.10、95%信頼区間 -14.08 〜 -6.11 vs. -3.57、95%信頼区間 -7.72 〜 0.57mg/dL/min;P=0.03) が、18ヵ月目にはこれらの差は消失した。有害事象は一過性で、概して軽度であった。疲労の報告は、iTREとCRおよび標準治療の間で高く、便秘と頭痛の報告は、iTREで高かった(vs. CR、vs. 標準ケア)。

結論:2型糖尿病の発症リスクが高い成人において、長期空腹時の食事タイミングのアドバイスを取り入れることで、食後の糖代謝がより改善された。

ClinicalTrials.gov:NCT03689608

引用文献

Intermittent fasting plus early time-restricted eating versus calorie restriction and standard care in adults at risk of type 2 diabetes: a randomized controlled trial
Xiao Tong Teong et al. PMID: 37024596 DOI: 10.1038/s41591-023-02287-7
Nat Med. 2023 Apr;29(4):963-972. doi: 10.1038/s41591-023-02287-7. Epub 2023 Apr 6.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37024596/

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