2型糖尿病と慢性腎臓病を有する集団における腎・心血管アウトカムに対する有効性・安全性で優れる薬剤はどれか?(RCTのSR&MA; Diabetes Res Clin Pract. 2023)

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2型糖尿病および慢性腎臓病を有する集団において腎・心血管アウトカムに優れる薬剤はどれか?

2型糖尿病は慢性腎臓病など多くの合併症を引き起こし、患者予後を悪化させます。多くの糖尿病治療薬が使用されていますが、患者予後に優れる薬剤の検証については充分に行われていません。

そこで今回は、ナトリウムグルコース共輸送体2阻害薬(SGLT-2I)、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬(DPP-4I)などの腎臓保護薬について、その有効性と安全性を比較評価すること、アルドステロン受容体作動薬(MRA)、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、ペントキシフィリン(PTF)、ピルフェニドン(PFD)が2型糖尿病(T2DM)および慢性腎臓病(CKD)の集団における心血管および腎臓の転帰に及ぼす影響を検討したネットワークメタ解析の結果をご紹介します。

本試験では、PubMed、Embase、Cochrane Libraryが創刊から2022年8月12日まで検索されました。PROSPEROに登録されているネットワークメタ解析のためのベイズモデル(CRD42022343601)が使用されました。

試験結果から明らかになったことは?

このネットワークメタ解析では、2,589件の引用が確認され、27件の適格な試験が含まれ、50,237例の患者が登録されました。以下に示すすべての結果は、エビデンスの質が中等度から高度でした。

腎アウトカム複合腎臓イベントeGFRの傾きを遅くする
SGLT-2阻害薬RR 0.69
(95%CI 0.61〜0.79
MD 1.34
(95%CI 1.06〜1.62
MR拮抗薬RR 0.77
(95%CI 0.68〜0.88
MD 1.31
(95%CI 0.89〜1.74
GLP-1受容体作動薬RR 0.78
(95%CI 0.62〜0.97
MD 0.75
(95%CI 0.46〜1.05
エンドセリン受容体拮抗薬RR 0.75
(95%CI 0.57〜0.99
MD 0.7
(95%CI 0.3〜1.1

腎アウトカムについては、複合腎臓イベントの減少(RR 0.69、95%CI 0.61〜0.79)、eGFRの傾きを遅くする(MD 1.34、95%CI 1.06〜1.62)という点でSGLT-2Iが最適でした。MRA(RR 0.77、95%CI 0.68〜0.88; MD 1.31、95%CI 0.89〜1.74)、GLP-1RA(RR 0.78、95%CI 0.62〜0.97; MD 0.75、95%CI 0.46〜1.05)、ERA(RR 0.75、95%CI 0.57〜0.99; MD 0.7、95%CI 0.3〜1.1)は同様でした。

心血管アウトカム心不全による入院
SGLT-2阻害薬RR 0.67
(95%CI 0.57〜0.78
GLP-1受容体作動薬RR 0.73
(95%CI 0.55〜0.97
MR拮抗薬RR 0.79
(95%CI 0.67〜0.92)

心血管アウトカムについては、SGLT-2Iは心不全の入院リスクを下げるのに最適な薬剤であり(RR 0.67、95%CI 0.57〜0.78)、GLP-1RA(RR 0.73、95%CI 0.55〜0.97) とMRA(RR 0.79、95%CI 0.67〜0.92) も優れていました。

SGLT-2I(RR0.8、95%CI 0.71〜0.89)とGLP-1RA(RR0.72、95%CI 0.6〜0.86)は、主要有害事象のリスクを低減する効果が同等でした。

MRAは、有害事象による薬剤中止の増加と関連する可能性がありました(RR 1.21、95%CI 1.05〜1.38)。高カリウム血症のアウトカムについては、MRA(RR 2.08、95%CI 1.86〜2.33)は高カリウム血症のリスクと関連していましたが、SGLT-2I(RR 0.78、95%CI 0.65〜0.93)は対照的でした。

コメント

2型糖尿病と慢性腎臓病を有する集団における腎・心血管アウトカムに優れる薬剤比較については充分に行われていません。

さて、ランダム化比較試験を対象としたシステマティンクレビュー、ネットワークメタ解析の結果、SGLT-2阻害薬は、T2DMおよびCKDにおける腎臓および心血管リスクを有意に低下させ、次点でGLP-1受容体作動薬およびMR拮抗薬が優れていることが明らかになりました。

SGLT-2阻害薬とMR拮抗薬の併用は、T2DMおよびCKDにおいて、腎臓と心血管の保護を最大化しつつ、高カリウム血症のリスクを低く抑える治療レジメンとして推奨できる可能性が示唆されました。

本論文は有料であり、結果の批判的吟味を充分に行えません。ネットワークメタ解析の結果評価に重要となる異質性や閉じた環の数などについて情報が不足していますが、これまでのランダム化比較試験の結果も踏まえるとSGLT2阻害薬が患者予後を改善できる可能性が高いと考えられます。慢性腎臓病に対してはMR拮抗薬による保護効果が優れている可能性がありますが、SGLT2阻害薬との併用効果についてはさらなる検証が求められます。

続報に期待。

chess pieces on table

✅まとめ✅ SGLT-2阻害薬は、T2DMおよびCKDにおける腎臓および心血管リスクを有意に低下させ、次点でGLP-1受容体作動薬およびMR拮抗薬が優れていた。SGLT-2阻害薬とMR拮抗薬の併用は、T2DMおよびCKDにおいて、腎臓と心血管の保護を最大化しつつ、高カリウム血症のリスクを低く抑える治療レジメンとして推奨できるかもしれない。

次のページに根拠となった試験情報を掲載しています。

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