スタチン治療を受けている患者における心血管イベントの予測因子として炎症とコレステロールどちらが良い?(大規模RCT3件の統合; Lancet. 2023)

bonfire near body of water 05_内分泌代謝系
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根拠となった試験の抄録

背景:炎症と高脂血症は共にアテローム血栓症に寄与している。しかし、スタチンによる集中治療を受けると、将来の心血管イベントリスクに対する炎症と高脂血症の相対的な寄与が変化する可能性があり、これは心血管治療薬の補助的な選択に影響を与える。我々は、スタチン治療を受けている患者において、主要な有害心血管イベント、心血管死、全死亡のリスクの決定因子としての高感度C反応性タンパク質(CRP)と低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の相対的重要性を評価することを目的としている。

方法:PROMINENT試験(NCT03071692)、REDUCE-IT試験(NCT01492361)、STRENGTH試験(NCT02104817)の参加者で、最新のスタチン投与を受けている動脈硬化性疾患患者またはそのリスクが高い患者の共同解析を実施した。ベースラインの高感度CRP(残存炎症リスクのバイオマーカー)およびベースラインのLDL-C(残存コレステロールリスクのバイオマーカー)の増加の四分位を、将来の主要有害心血管イベント、心血管死、および全死亡の予測因子として評価した。年齢、性別、BMI、喫煙状況、血圧、心血管疾患の既往、無作為化治療グループの割り当てで調整した解析において、高感度CRPとLDL-Cの四分位で心血管イベントと死亡のハザード比(HR)を算出した。

所見:PROMINENT試験(n=9,988)、REDUCE-IT試験(n=8,179)、STRENGTH試験(n=13,078)から31,245例の患者が解析に含まれた。ベースラインの高感度CRPとLDL-Cの観察範囲、および各バイオマーカーとその後の心血管イベント発生率との関係は、3件の試験でほぼ同様であった。残存炎症性リスクは、主要有害心血管イベント(高感度CRP最高四分位と高感度CRP最低四分位、調整HR 1.31、95%CI 1.20〜1.43; p<0.0001)、心血管死亡率(2.68、2.22〜3.23; p<0.0001)および全死亡(2.42、 2.12〜2.77; p<0.0001)の発生と有意に関連していた。一方、残存コレステロールリスクの関係は、主要有害心血管イベント(LDL-C最高四分位とLDL-C最低四分位、調整HR 1.07、95%CI 0.98〜1.17、p=0.11)では中立、心血管死(1.27、1.07〜1.50; p=0.0086)と全死亡(1.16、1.03〜1.32; p=0.025)では低かった。

解釈:現代のスタチン投与を受けている患者において、高感度CRPで評価した炎症は、LDL-Cで評価したコレステロールよりも、将来の心血管イベントおよび死亡のリスクに対する強い予測因子であった。これらのデータは、スタチン治療以外の補助的な治療法の選択に影響を与え、動脈硬化リスクをさらに低下させるためには、積極的な脂質低下療法と炎症抑制療法の併用が必要である可能性を示唆している。

資金提供:興和研究所、アマリン、アストラゼネカ

引用文献

Inflammation and cholesterol as predictors of cardiovascular events among patients receiving statin therapy: a collaborative analysis of three randomised trials
Paul M Ridker et al. PMID: 36893777 DOI: 10.1016/S0140-6736(23)00215-5
Lancet. 2023 Apr 15;401(10384):1293-1301. doi: 10.1016/S0140-6736(23)00215-5. Epub 2023 Mar 6.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36893777/

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