― COX選択性に基づく新しい分類の提案(Can J Cardiol. 2021)
- 臨床疑問
- 研究の背景
- 論文の種類
- なぜ従来分類では問題なのか?
- COX選択性と副作用
- 著者らが提案する新分類
- なぜこの新しい分類が重要なのか?
- 実臨床へのインパクト
- この提案から何が言えるか?
- 批判的吟味(研究の限界)
- 医療従事者への臨床的示唆
- まとめ
- ✅まとめ✅ NSAIDsの新分類として、従来型NSAIDを含むすべての非アスピリン系NSAIDを、COX-1およびCOX-2に対する選択性に基づいて、COX-1阻害薬、非選択性NSAID、またはCOX-2阻害薬に分類することが推奨された。さらに、COX-2阻害薬を、新規COX-2阻害薬(コキシブ)と旧型COX-2阻害薬に細分類することも推奨された。
- 根拠となった試験の抄録
- 引用文献
臨床疑問
NSAIDsは「従来型NSAIDs」と「COX-2阻害薬(コキシブ)」という従来の分類で十分なのだろうか?それとも、各NSAIDsのCOX-1/COX-2選択性に基づいて再分類した方が、臨床判断に役立つのだろうか?
研究の背景
非アスピリンNSAIDsは、疼痛・発熱・炎症の治療に世界中で広く使用されている薬剤です。
これまでNSAIDsは
- Traditional NSAIDs(従来型NSAIDs)
- COX-2 inhibitors(COX-2阻害薬:コキシブ)
という2分類が一般的でした。
しかし近年、この分類には問題点があることが指摘されています。実際には「従来型NSAIDs」であっても、COX-1を強く阻害する薬、COX-2寄りの阻害薬、両者をほぼ同程度阻害する薬が存在し、薬剤ごとに薬理作用が大きく異なります。
さらに、心血管イベントのリスクはCOX-2選択性と相関することが数多くの研究から明らかになってきました。
そこで本論文では、NSAIDsをCOX選択性に基づき再分類すべきと提案しています。
論文の種類
本論文はViewpoint(提言・総説)であり、RCTや観察研究ではありません。
既存の薬理学、メタ解析、診療ガイドラインを踏まえた専門家による提言です。
なぜ従来分類では問題なのか?
従来は、従来型NSAIDsとCOX-2選択的阻害(コキシブ系)という分類でした。しかし実際には、「従来型NSAIDs」の中にもナプロキセン、イブプロフェン、ジクロフェナクなど薬理学的に全く異なる薬剤が混在しています。
特にジクロフェナクは”従来型NSAIDs”でありながらCOX-2選択性が非常に高いことが問題となっています。
COX選択性と副作用
COX-1阻害とその影響
主に胃粘膜保護低下、消化管出血、血小板凝集抑制に関与します。
COX-2阻害とその影響
主に鎮痛、抗炎症、解熱作用を担います。一方で、COX-2選択性が高くなるほど血栓形成、心筋梗塞、脳卒中リスクが高くなる可能性があります。
著者らが提案する新分類

① COX-1阻害薬
COX-1選択性が高い薬剤
例:フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン(Fenoprofen)、オキサプラジン(Oxaprozin)、トルメチン(Tolmetin)
② 非選択的NSAIDs
COX-1・COX-2を比較的均等に阻害
例:ナプロキセン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク(Ketorolac)、ナブメトン、スリンダク、ピロキシカム(販売中止)
③ COX-2阻害薬
新型COX-2阻害薬(コキシブ系)
例:セレコキシブ、エトリコキシブ(Etoricoxib)、ロフェコキシブ(Rofecoxib)、バルデコキシブ(Valdecoxib)、ルミラコキシブ(Lumiracoxib)
旧世代COX-2阻害薬
例:ジクロフェナク、メロキシカム、エトドラク、ニメスリド(Nimesulide)、メフェナム酸、サルサレート(Salsalate)
本論文では、COX-2阻害薬について、上記の新たな分類を提案しています。論文中のFigure 1では、これまでの研究報告を基に各NSAIDsをCOX-1選択性からCOX-2選択性まで連続的に配置することで、「従来型NSAIDs」という分類では薬理学的な違いを十分表現できないことを主張しています。
なぜこの新しい分類が重要なのか?
ジクロフェナクは「従来型NSAIDs」ではない?
薬理学的には、ジクロフェナクはセレコキシブに近いCOX-2選択性を示します。そのため、心血管イベントリスクもコキシブに近いことがランダム化比較試験(RCT)や観察研究、メタ解析で示されています。
ナプロキセンは比較的安全
一方、ナプロキセンや低用量イブプロフェンはCOX-2選択性が低く、比較的心血管リスクが小さいとされています。
ESC・AHAガイドラインも支持
本論文では、欧州心臓病学会(ESC)および米国心臓協会(AHA)の見解も引用しています。心血管疾患患者では、まずナプロキセン、低用量イブプロフェンを選択し、ジクロフェナクやコキシブは後順位とすることが推奨されています。
実臨床へのインパクト
近年では「NSAIDs」という一括りで議論することは適切ではありません。例えば、DOAC服用患者ではGI出血だけでなく、心血管リスクも考慮する必要があります。
その際、薬剤ごとのCOX選択性を理解しておくことは極めて重要になります。
この提案から何が言えるか?
著者らは、今後の研究でも従来型NSAIDsという曖昧な分類をやめ、個々のNSAIDsあるいはCOX選択性に基づく分類で解析すべきと提言しています。
これにより、心血管安全性、消化管安全性、ガイドライン作成の質が向上すると期待されています。
批判的吟味(研究の限界)
① 新たな臨床データを示した研究ではない
本論文はViewpointであり、新規の患者データを解析したものではなく、既存の薬理学的知見やメタ解析、ガイドラインを統合して再分類を提案したものです。したがって、新分類そのものの有効性を直接検証した研究ではありません。
② COX選択性だけで安全性は決まらない
NSAIDsの安全性には、用量、投与期間、腎機能、年齢、消化管リスク、心血管リスクなど多くの因子が関与します。
COX選択性のみで薬剤選択を決めることはできません。
③ COX選択性は連続的な概念
薬剤は明確に3群へ分かれるわけではなく、COX-1からCOX-2まで連続的なスペクトラムを形成しています。
分類境界は臨床上の便宜的なものであり、絶対的なものではありません。
④ 薬剤個別評価の重要性
著者ら自身も、今後はカテゴリーだけでなく、個々のNSAIDsごとの効果・安全性を評価すべきであると述べています。
医療従事者への臨床的示唆
NSAIDsを「従来型」と「COX-2阻害薬」の二分法で捉えるだけでは、薬剤ごとのリスクを充分に評価できません。
例えば、ジクロフェナクは従来型NSAIDsに分類されますが、COX-2選択性や心血管リスクはに近い特徴を有します。一方、ナプロキセンや低用量イブプロフェンは比較的心血管リスクが低いとされており、患者の背景に応じた薬剤選択が重要です。
今後は「NSAIDs」という大きな括りではなく、薬剤ごとのCOX選択性や安全性プロファイルを理解したうえで処方提案や服薬指導を行うことが、より個別化された薬物療法につながると考えられます。
まとめ
- 本論文は、NSAIDsを「従来型NSAIDs」と「COX-2阻害薬」に二分する従来の分類を見直すべきと提言したViewpointである。
- 従来型NSAIDsの中にもCOX-2選択性が高い薬剤(例:ジクロフェナク)が存在し、心血管リスクにも差がある。
- 著者らは、COX-1阻害薬、非選択的NSAIDs、COX-2阻害薬(新規/旧世代)への再分類を提案している。
- ESCやAHAも、心血管リスクの高い患者ではナプロキセンや低用量イブプロフェンを優先する方針を示している。
- 今後は「NSAIDs」という一括りではなく、薬剤ごとのCOX選択性と安全性を踏まえた個別評価が重要である。
個人的には、ジクロフェナクのCOX-2阻害作用優位が意外でした。NSAIDsの歴史は古く、実臨床での使用経験が豊富ですが、その機序や有効性・安全性の評価はまだまだ充分とは言えないのかもしれません。
続報に期待。

✅まとめ✅ NSAIDsの新分類として、従来型NSAIDを含むすべての非アスピリン系NSAIDを、COX-1およびCOX-2に対する選択性に基づいて、COX-1阻害薬、非選択性NSAID、またはCOX-2阻害薬に分類することが推奨された。さらに、COX-2阻害薬を、新規COX-2阻害薬(コキシブ)と旧型COX-2阻害薬に細分類することも推奨された。
根拠となった試験の抄録
非アスピリン系非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、痛み、発熱、炎症の治療によく用いられます。従来、NSAIDは従来のNSAIDと新しいシクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬(コキシブ)に分類されてきました。しかし、従来のNSAIDもCOX-1およびCOX-2酵素アイソフォームを様々な程度で阻害します。従来のNSAIDというクラス内におけるCOX-1およびCOX-2選択性の多様性は臨床的に重要であり、選択的COX-2阻害に伴う心血管リスクに関するエビデンスが蓄積されています。したがって、従来のNSAIDの相対的なCOX-2選択性は心血管リスクプロファイルと相関しており、ナプロキセンや低用量イブプロフェンなどの非選択的NSAIDの方がリスクが低く、ジクロフェナクなどのCOX-2選択性の高い薬剤の方がリスクが高いと言えます。臨床的に関連性の高い用語を確立するため、従来型NSAIDを含むすべての非アスピリン系NSAIDを、COX-1およびCOX-2に対する選択性に基づいて、COX-1阻害薬、非選択性NSAID、またはCOX-2阻害薬に分類することを推奨します。さらに、COX-2阻害薬を、新規COX-2阻害薬(コキシブ)と旧型COX-2阻害薬に細分類することを推奨します。最後に、提案された各カテゴリーに含まれる個々のNSAIDの効果を検証することを推奨します。これらの推奨事項に従うことで、今後の研究の整合性が高まり、COX特異的な心血管系有害作用の解釈が進展し、NSAIDを処方する臨床医へのより良い指針が提供されるでしょう。
引用文献
Recategorization of Non-Aspirin Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs According to Clinical Relevance: Abandoning the Traditional NSAID Terminology
Kasper Bonnesen et al. PMID: 34182020 DOI: 10.1016/j.cjca.2021.06.014
Can J Cardiol. 2021 Nov;37(11):1705-1707. doi: 10.1016/j.cjca.2021.06.014. Epub 2021 Jun 25.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34182020/

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