維持期の血液透析患者における血清尿酸値の上昇と心血管疾患や全死亡のリスクはどのくらいですか?(SR&MA; NMCD 2020)

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Elevated serum uric acid and risk of cardiovascular or all-cause mortality in maintenance hemodialysis patients: a meta-analysis

Huifang Wang et al.

NMCD Published:November 25, 2020

DOI: https://doi.org/10.1016/j.numecd.2020.11.017

Keywords: serum uric acid, hemodialysis, cardiovascular mortality, all-cause mortality, meta-analysis

ハイライト

  1. 血液透析患者における心血管および全死亡率と血清尿酸(SUA)レベルの分析
  2. SUAレベルの上昇は、血液透析患者の心血管死亡リスクの低下と関連している
  3. SUAを1mg/dL増加させるごとに全死亡リスクは6%、心血管死亡リスクは9%低下した

背景と目的

血清尿酸(SUA)値と血液透析患者の死亡率との関連については、これまでの研究で一貫性のない結果が示されている。

我々は、維持透析患者における心血管疾患または全死亡の危険因子をSUA値の高さが構成しているかどうかを判断するために、このメタアナリシスを実施した。

方法

Pubmed、Embase、Cochrane libraryを用いて、維持透析患者におけるSUA上昇と心血管または全死亡リスクとの関連を調査した縦断的研究を2020年8月31日までに検索した。

ランダムエフェクトモデルを用いてプール調整ハザード比(HR)と対応する95%信頼区間(CI)を算出した。

結果

・このメタ解析には、血液透析患者全体のサンプル数264,571例の研究10件を含めた。

・ランダム効果モデルで潜在的な交絡因子を調整した後、SUAが最も高い患者では、SUAが最も低い患者と比較して、心血管死亡リスクの低下(HR=0.72、95%CI 0.59~0.87)と関連していた。

・さらに、SUAが1mg/dL増加するごとに、全死亡および心血管死亡の全リスクがそれぞれ6%および9%減少した(HR=0.94、95%CI 0.90~0.99;HR=0.91、95%CI 0.89~0.94)。

結論

SUA値の上昇は、維持透析患者における心血管死亡リスクの低下と強く独立して関連している。

SUA値の高さが血液透析患者における全死亡の独立した危険因子であるかどうかを判断するために、より計画的な研究、特にランダム化比較試験を実施すべきである。

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尿酸は死亡リスクの予測因子となるのか?

尿酸は痛風だけでなく、様々な疾患との関連性が報告されています。本ブログでも、いくつか論文を紹介しています(以下を参照)。

本研究の類似研究としては、日本人の腹膜透析患者を対象としたコホート研究において、血清尿酸値と死亡リスク増加との間に相関関係があることが示されています。

入院患者の脳卒中および死亡リスクを低下させるかもしれない
日本人の腹膜透析患者における尿酸と全死亡はU字関係にある
FEATHER試験(内的妥当性が低い試験):ステージ3のCKD患者における尿酸低下はeGFR低下を抑制できない
FREED試験:脳、心血管、腎イベント、総死亡はフェブキソスタット群で非フェブキソスタット群と比較してリスクが低い
CKD患者における尿酸値と死亡率はJ字型の相関があるかもしれない
2型糖尿病患者における尿酸値と死亡リスクはJ字型の相関があるかもしれない
CABGを予定している急性冠症候群あるいは心不全患者に対するアロプリノール使用は、非使用と比較して、術後ACS(NNT =11)および心血管死亡(NNT =24)の発生が低下

今回の研究から明らかになったことは?

さて、本試験結果によれば、研究10件を対象としたメタ解析で尿酸値の増加と心血管リスク低下が認められました。血清尿酸値が1mg/dL増加するごとに、全死亡および心血管死亡の全リスクがそれぞれ6%および9%減少するとのことです。ただし、本試験は、尿酸値の最も高いグループと最も低いグループを比較していますので、各リスク低下におけるカットオフ値は不明です。

これまでの研究結果と異なる部分もありますが、そもそも尿酸値とハードアウトカムとの関係性は明らかとなっていません。

尿酸値を下げたほうが良いか否かについては、対象患者を考慮し慎重に判断したほうが良いように思います。

✅まとめ✅ SUAを1mg/dL増加させるごとに全死亡リスクは6%、心血管死亡リスクは9%低下したがカットオフ値は不明

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