Cardiovascular events and mortality in people with type 2 diabetes and multimorbidity: A real-world study of patients followed for up to 19 years
Briana Coles et al.
Circulation. 2020 Nov 3;142(18):1713-1724. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048739. Epub 2020 Aug 29.
PMID: 32865004
PMCID: PMC7594536
DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048739
Keywords: cardiovascular diseases; multimorbidity; primary healthcare; retrospective studies; risk factors; type 2 diabetes.
目的
2型糖尿病(T2DM)と診断された患者および多併存症患者における心血管疾患(CVD)イベント、全死亡、心血管疾患死亡のリスクを定量化する。
方法
このレトロスペクティブ研究では、英国のプライマリーケアおよびセカンダリーケアのデータを用いて、2000年から2018年の間に新たにT2DMと診断された成人120,409例を同定し、死亡または2018年12月31日まで追跡調査を行った。
患者はT2DM診断時の多幸症のレベルと種類によって分類され、各アウトカムについて調整ハザード比(aHR)が算出された。
結果
・合計で66,977例(55.6%)がT2DMのみ、37,894例(31.5%)が1つの併存疾患、11,357例(9.4%)が2つの併存疾患、3,186例(2.6%)が3つの併存疾患、995例(0.8%)が4つ以上の併存疾患を有していた。
・共存疾患はすべてのアウトカムのaHRの増加と関連していた。T2DMのみの患者と比較して、T2DMの診断後19年時点での4つ以上の併存疾患のaHRは、CVDイベントで2.57(95%CI 2.45〜2.69)、全死亡で1.73(1.68〜1.78)、心血管死亡で2.68(2.52〜2.85)であった。
・また、100,183例(83.2%)の患者はCVD併存疾患なし、16,874例(14.0%)の患者はCVD併存疾患が1つ、3,352例(2.8%)の患者は2つ以上の併存疾患を有していた。CVDの併存疾患がない患者と比較して、T2DM診断後19年目のCVD併存疾患が2つ以上ある患者のaHRは、CVDイベントで2.42(2.35〜2.49)、全死亡で1.44(1.42〜1.47)、心血管死亡で2.44(2.35〜2.54)であった。
結論
T2DM患者では、多併存疾患レベルの程度、特にCVD並存は、その後のCVDイベント、死亡率、心血管死亡率のリスクを増加させた。
コメント
2型糖尿病患者は、微小血管(神経症、網膜症、腎症)あるいは大血管(心筋梗塞、脳卒中、冠動脈疾患など)の様々な血管合併症を併発します。2型糖尿病のみの患者と比較して、心血管疾患など血管合併症を有する2型糖尿病患者において、死亡リスクが増加することが多数報告されています。
さて、英国のプライマリーケアおよびセカンダリーケアのデータを用いた本試験結果によれば、やはりCVDイベント、死亡率、心血管死亡リスクは、多併存疾患のレベルが上がるにつれて増加する相関関係がみられました。
2型糖尿病と診断されてから心血管死亡に至るまでの期間中央値は、4つ以上の合併症を有する患者では2.6年(IQR 1.1~4.7)であったのに対し、2型糖尿病のみの患者では7.3年(IQR 4.2~10.8)でした。
2型糖尿病と診断されてから1年後の1,000人・年当たりの心血管死は、4つ以上の合併症を有する患者では33.2(95%CI 30.0〜38.1)であったのに対し、2型糖尿病のみの患者では4.9(4.7〜5.2)でした。2型糖尿病と診断されてから19年後のこれらの割合は、それぞれ41.9(38.9〜45.1)および15.6(14.6〜16.7)であった。
2型糖尿病のみの患者との相対的な比較では、2型糖尿病の診断から19年後の心血管死亡率のaHRは以下の通りであった。4つ以上の併存疾患を有する患者では2.68(95%CI 2.52〜2.85)、3つの併存疾患では2.38(2.27〜2.49)、2つの併存疾患では1.94(1.86〜2.02)、1つの併存疾患では1.40(1.35〜1.44)でした。多併存疾患の影響は2型糖尿病の診断後1年目に最も顕著であり、2型糖尿病のみの患者と比較して、4つ以上の併存疾患を有する患者の心血管系死亡のaHRは6.91(6.08〜7.84)でした。
心血管イベントの既往を有する患者では、心血管イベントの再発リスクが高いことから、2次予防戦略が重要であり、本試験結果は、その根拠情報の1つになりそうです。ただし、あくまでも相関関係であるため、心血管イベントの2次予防を検証したランダム化比較試験を参照する必要があります。
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