心不全患者におけるCOVID-19ワクチン接種後の心不全悪化および全死亡リスクはどのくらい?(デンマーク人口ベースコホート研究; Circ Heart Fail. 2023)

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SARS-CoV-2感染に対して脆弱な集団におけるワクチンの安全性・有効性は?

SARS-CoV-2感染に対して心不全高齢者や免疫不全者など脆弱な集団では感染リスクが増加します。しかし、このような患者集団におけるSARS-CoV-2 mRNAワクチンの安全性に関するエビデンスは限られています。

そこで今回は、心不全患者におけるmRNAワクチンに関連する全死亡、心不全悪化、静脈血栓塞栓症、心筋炎のリスクを調査したコホート研究の結果をご紹介します。

本試験では、デンマークの全国登録が用いられ、以下の2つのコホートが構築されました。
(1)2019年の40~95歳の全心不全有病者
(2)2021年の40~95歳の全心不全有病者

2種類のmRNAワクチン(BNT162B2またはmRNA-1273)のいずれかを接種された患者が対象となりました。2つのコホートの患者は、年齢、性別、心不全の罹病期間について正確な曝露マッチングを用いて1対1でマッチングされました。標準化絶対リスクを推定するために、転帰特異的Cox回帰分析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

全研究集団は101,786例で、年齢中央値は74歳(四分位範囲 66〜81)でした。

標準化リスクワクチン接種コホートワクチン未接種コホート90日リスク差
90日以内の全死因死亡2.23%
(95%CI 2.10%~2.36%
2.56%
(95%CI 2.43%~2.70%
-0.33%
(95%CI -0.52% ~ -0.15%

90日以内の全死因死亡の標準化リスクは、ワクチン接種コホートで2.23%(95%CI 2.10%~2.36%)、ワクチン未接種コホートで2.56%(95%CI 2.43%~2.70%)でした(90日リスク差 -0.33%、95%CI -0.52% ~ -0.15%)。

標準化リスク2021年ワクチン接種コホート2019年ワクチン未接種コホート90日リスク差
90日以内の心不全悪化1.10%
(95%CI -1.01% ~ 1.19%
1.08%
(95%CI 0.99%~1.17%
0.02%
(95%CI -0.11% ~ 0.15%

90日以内の心不全悪化の標準化リスクは、2021年(ワクチン接種)コホートで1.10%(95%CI -1.01% ~ 1.19%)、2019年(ワクチン未接種)コホートで1.08%(95%CI 0.99%~1.17%)でした(リスク差 0.02%、95%CI -0.11% ~ 0.15%)。

静脈血栓塞栓症や心筋炎に関しては有意差が認められませんでした。

コメント

心不全などを有する患者は感染ハイリスク集団とされ、感染リスクを低減させるためにワクチン接種が行われます。しかし、有効性・安全性についてエビデンスは限られています。

さて、デンマークのコホート研究の結果、mRNAワクチンの接種は、心不全の悪化、心筋炎、静脈血栓塞栓症、全死亡のリスク上昇とは関連しませんでした。

死亡リスクについては、ワクチン未接種者と比較して、ワクチン接種者でリスク低減が示唆されています。静脈血栓塞栓症や心筋炎などの安全性について、懸念は示されませんでした。

他の国や地域で同様の結果が示されるのかについては不明ですが、人種差でワクチンの有効性・安全性が大きく異なるような報告はないことから、本試験結果の外挿性は低くないと考えられます。

続報に期待。

vaccine text and a person wearing latex glove while holding a syringe on pink background

✅まとめ✅ デンマークのコホート研究の結果、mRNAワクチンの接種は、心不全の悪化、心筋炎、静脈血栓塞栓症、全死亡のリスク上昇とは関連しなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:心不全患者はSARS-CoV-2感染に対して脆弱である。しかし、この患者集団におけるSARS-CoV-2 mRNAワクチンの安全性に関するエビデンスは限られている。本研究の目的は、心不全患者におけるmRNAワクチンに関連する全死亡、心不全悪化、静脈血栓塞栓症、心筋炎のリスクを調査することである。

方法:デンマークの全国登録を用い、2つのコホートを構築した:(1)2019年の40~95歳の全心不全有病者、および(2)2021年の40~95歳の全心不全有病者で、2種類のmRNAワクチン(BNT162B2またはmRNA-1273)のいずれかを接種された患者。2つのコホートの患者は、年齢、性別、心不全の罹病期間について正確な曝露マッチングを用いて1対1でマッチングされた。標準化絶対リスクを推定するために、転帰特異的Cox回帰分析を行った。

結果:全研究集団は101,786例であった。年齢中央値は74歳(四分位範囲 66〜81)であった。90日以内の全死因死亡の標準化リスクは、ワクチン接種コホートで2.23%(95%CI 2.10%~2.36%)、ワクチン未接種コホートで2.56%(95%CI 2.43%~2.70%)であった(90日リスク差 -0.33%、95%CI -0.52% ~ -0.15%)。90日以内の心不全悪化の標準化リスクは、2021年(ワクチン接種)コホートで1.10%(95%CI -1.01% ~ 1.19%)、2019年(ワクチン未接種)コホートで1.08%(95%CI 0.99%~1.17%)であった(リスク差 0.02%、95%CI -0.11% ~ 0.15%)。静脈血栓塞栓症や心筋炎に関しては有意差は認められなかった。

結論:mRNAワクチンの接種は、心不全の悪化、心筋炎、静脈血栓塞栓症、全死亡のリスク上昇とは関連しなかった。

キーワード:心血管疾患、疫学、心不全

引用文献

Risk of Worsening Heart Failure and All-Cause Mortality Following COVID-19 Vaccination in Patients With Heart Failure: A Nationwide Real-World Safety Study
Caroline Sindet-Pedersen et al. PMID: 37503624 DOI: 10.1161/CIRCHEARTFAILURE.123.010617
Circ Heart Fail. 2023 Jul 28;e010617. doi: 10.1161/CIRCHEARTFAILURE.123.010617. Online ahead of print
— 読み進める www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCHEARTFAILURE.123.010617

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