プライマリーケアにおける禁酒を維持するための治療介入は何が良さそうですか?(SR&NWM; BMJ 2020)

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Treatment interventions to maintain abstinence from alcohol in primary care: systematic review and network meta-analysis

Hung-Yuan Cheng et al.

BMJ. 2020 Nov 25;371:m3934. doi: 10.1136/bmj.m3934.

PMID: 33239318

PMCID: PMC7687021

DOI: 10.1136/bmj.m3934

Systematic review registration: PROSPERO CRD42016049779.

目的

最近解毒されたアルコール依存症患者を対象に、プライマリケアで実施するための最も効果的な介入を決定すること。

試験デザイン

システマティックレビューおよびネットワークメタアナリシス。

データソース

Medline、Embase、PsycINFO、Cochrane CENTRAL、ClinicalTrials.gov、および世界保健機関(WHO)の国際臨床試験登録プラットフォーム。

研究の選択

プライマリケアで使用できる2つ以上の介入を比較したランダム化比較試験。

対象は、標準化された臨床ツールでアルコール依存症と診断され、4週間以内に解毒状態になった患者とした。

データ抽出

注目すべきアウトカムは、介入開始から少なくとも12週間後の継続的な禁酒(有効性)と全原因による脱落(受容性の代理として)であった。

結果

・64試験(43の介入)が組み入れられた。

・プラセボ群における禁酒の確率の中央値は25%であった。

・プラセボと比較して、禁欲の確率の増加と中程度の確実性のエビデンスに関連した介入はアカンプロサートのみであった(オッズ比1.86、95%信頼区間1.49~2.33、絶対確率38%に対応)。

・全原因による脱落を報告した62件の試験のうち、プラセボと比較して脱落数が減少し(確率50%)、中程度の確実性のエビデンスが得られた介入は、アカンプロサート(0.73、0.62~0.86;42%)、ナルトレキソン(0.70、0.50~0.98;41%)、およびアカンプロサート-ナルトレキソン(0.30、0.13~0.67;17%)であった。

・アカンプロサートは、12ヵ月までの有効性と受容性のエビデンスの中等度の信頼性に関連した唯一の介入であった。

・エビデンスの信頼性が低いため、他の介入が禁欲を維持し、脱落を減らすのに役立つかどうかは不明である。

結論

アカンプロサート以外の禁酒のためにプライマリケアの設定で実施できる介入の有益性についてのエビデンスは不足している。

プライマリーケアにおけるアルコール依存症の治療を改善するための複合介入(薬物介入または薬物と心理社会的介入の組み合わせ)を用いた戦略と同様に、質の高いランダム化比較試験からのより多くのエビデンスが必要である。

コメント

アルコール依存症における治療目標とは?

アルコール依存症、アルコール使用障害における断酒は、治療の第一目標です。そのために心理社会的介入が基本であることが診療ガイドラインで示されています。また患者に合わせて薬物介入を併用するよう記載されています。また近年、日本で承認されたナルメフェン(セリンクロ®️)は飲酒量低減薬に分類されるアルコール依存症治療薬ですが、前述の通り治療目標は断酒とその継続ですので、減酒は第2選択以降となります。

アルコール依存症の治療効果の検証における問題点は?

アルコール依存は精神疾患にも分類されるように、身体のみの症状ではありません。精神的・身体的に治療を行っていくことが肝要です。さて、疼痛や精神疾患において、プラセボ効果の高さが報告されています。つまり、アルコール依存症患者においても、プラセボ効果の高さが問題となり、しばしば薬物介入の効果が認められています。したがって、薬物介入の効果をより正確に把握するためには、既存薬との比較に加えて、プラセボを対照として設定することが大切です。

今回の試験で明らかになったことは?

今回のネットワークメタ解析によれば、プラセボ群における禁酒確率は25%(中央値)だったようです。またプラセボと比較して、禁欲確率の増加および確実性が中等度のエビデンスはアカンプロサートのみとのこと(オッズ比1.86、95%信頼区間1.49~2.33、絶対確率38%)。

この点は診療ガイドラインと相違ありません。やはり、禁酒における治療薬の第一選択はアカンプロサートでしょう。もちろん副作用とコストを考慮する必要もありますが、薬物治療において有効性の高いアカンプロサートを使用しない理由はないように思います。

✅まとめ✅ アカンプロサートは、治療開始12ヵ月後までの有効性と受容性のエビデンスにおいて、中等度の信頼性に関連した唯一の介入であった

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