2型糖尿病患者の血糖コントロールに対する吸入コルチコステロイドの影響はどのくらいですか?(小規模RCT; Clin Med Res. 2009)

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吸入ステロイドによる血糖値への影響はどのくらいなのか?

2型糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息は、世界的に有病率が増加しています。2型糖尿病患者の多くは、喘息やCOPDを併発しているため、吸入コルチコステロイド(ICS)の使用が適応となります。

ICSは全身に作用することが明らかになっていますが、2型糖尿病患者の糖代謝に及ぼす影響はよくわかっていません。
吸入は傾向と比較して安全な治療法と考えられていますが、ICSの全身作用について、小児の骨形成成人の白内障発症などが懸念されています。また、いくつかの研究では、ICSが視床下部下垂体副腎軸の機能を抑制することが示唆されています。このような副作用は研究としては検出されていますが、臨床的に重要ではないと考えられています。

以前の報告では、高用量(2mg/日)のフルチカゾンプロピオン酸エステル吸入を使用した2型糖尿病と喘息を有する患者において、糖化ヘモグロビン(%HbA1c)の有意な増加(1.0%)と持続的な糖尿病罹患が示されています。しかし、低用量フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入(440μg、1日2回)が糖代謝を阻害するかどうかは不明です。

そこで今回は、2型糖尿病と喘息またはCOPDを有する成人を対象に低用量ICSの影響を検討した研究結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2型糖尿病と喘息またはCOPDを有する患者10例を対象にした前向きランダム化クロスオーバー試験の結果によれば、フルチカゾンあるいはモンテルカスト6週間投与によるHbA1c変化の平均値の差は0.25%と小さいですが、統計的には有意でした(P<0.025)。

HbA1c 0.25%程度の増加であれば気にするほどのことではないと考えられますが、本試験はあくまでも6週間投与による研究結果ですので、より長期間の投与による影響は不明です。さらに小規模な検討結果ですので、結果の一般化が困難であると考えられます。

現状では、やはり2型糖尿病患者でICSを使用する場合、血糖のモニタリング間隔をより短くした方が良いのかもしれません。

また喘息やCOPDの治療において、ICSの他、抗コリン薬(LAMA)やβ刺激薬(LABA)の吸入療法との併用も行われますが、本試験では検討されていません。

今後のエビデンス集積を待ちたいところです。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病と喘息またはCOPDを有する成人における6週間のプロピオン酸フルチカゾン吸入は、モンテルカストと比較して、HbA1c変化の平均差に有意差が認められたが、値は0.25と小さかった

根拠となった論文の抄録

目的:2型糖尿病で喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)を併発している成人において、吸入コルチコステロイド(ICS)療法が血糖コントロールに及ぼす影響を明らかにすること。

試験デザイン:吸入ステロイド薬と経口ロイコトリエン拮抗薬の前向きランダム化二重盲検二重ダミープラセボ対照クロスオーバー試験である。

試験設定:米国退役軍人省ヘルスケアシステムの外来患者。

対象者:2型糖尿病と喘息またはCOPDを有する成人。

方法:被験者(n=12)を、プロピオン酸フルチカゾン(440μg、1日2回)の吸入とプラセボの経口投与、またはプラセボの吸入とモンテルカスト(10mg/日)の経口投与のいずれかにランダム割り付けされた。
6週間後、被験者は最初に受けた治療法とは反対の治療法に切り替えて6週間過ごした。
主要評価項目は、ベースライン値に対する6週間後の糖化ヘモグロビンの割合(%HbA1c)の変化であった。

結果:患者10例が試験を完了した。フルチカゾンの6週間投与による被験者内の%HbA1c変化の平均値とモンテルカストの6週間投与による変化の平均値の差は小さかったが、統計的には有意であった(差の平均値=0.25、P<0.025)。
フルチカゾンとモンテルカストの6週間の投与は、いずれもベースラインと比較して%HbA1cの平均値に有意差はなかった(平均差=0.11および-0.14)。

結論:フルチカゾンとモンテルカスト投与による%HbA1cの変化、あるいはいずれかの治療法とベースラインとの間に臨床的に有意な差がなかったからといって、これらの疾患を併発している患者の喘息や糖尿病の治療法の変更を推奨するものではない。しかし、糖尿病患者がICSを開始する際には、特に高用量での血糖コントロールを注意深く観察することを提案する。

引用文献

The Effect of an Inhaled Corticosteroid on Glucose Control in Type 2 Diabetes
John L Faul et al. PMID: 19251584 PMCID: PMC2705276 DOI: 10.3121/cmr.2009.824
Clin Med Res. 2009 Jun;7(1-2):14-20. doi: 10.3121/cmr.2009.824. Epub 2009 Feb 26.
—続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19251584/

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