2型糖尿病発症リスクのある集団における2型糖尿病および合併症の予防または遅延を目的としたピオグリタゾン投与の効果はどのくらいですか?(SR&MA; CDSR 2020)

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Pioglitazone for prevention or delay of type 2 diabetes mellitus and its associated complications in people at risk for the development of type 2 diabetes mellitus

Emil Ørskov Ipsen et al.

Cochrane Database Syst Rev. 2020 Nov 19;11:CD013516. doi: 10.1002/14651858.CD013516.pub2.

PMID: 33210751

DOI: 10.1002/14651858.CD013516.pub2

Trial registration: ClinicalTrials.gov NCT00220961 NCT00352287 NCT00708175 NCT00276497 NCT00994682 NCT00015626 NCT00306826 NCT00470262 NCT00633282 NCT00722631 NCT01006018.

背景

糖尿病予備軍という用語は、2型糖尿病(T2DM)を発症するリスクが高い集団を説明するために使用されている。

T2DMの発症率の増加が予測されていることから、本疾患とその合併症の予防または遅延が最も重要である。

現在のところ、ピオグリタゾンがT2DM発症リスクの高い患者の治療に有効であるかどうかは不明である。

目的

T2DM発症リスクのある集団におけるT2DMおよびそれに伴う合併症の予防または遅延に対するピオグリタゾンの効果を評価すること。

検索方法

  1. CENTRAL、MEDLINE、中国語データベース、ICTRP検索ポータル、ClinicalTrials.govを検索した。
  2. 言語制限は適用しなかった。
  3. さらに、含まれるすべての研究とレビューの参考文献リストを調査した。
  4. すべての研究の著者に連絡を取るようにした。
  5. データベースの最終検索日は2019年11月(中国語データベースは2020年3月)とした。

研究の選定基準

24週間以上の試験期間を有するランダム化比較試験(RCT)で、ピオグリタゾンの単剤療法または二重療法の一部としてのピオグリタゾンと他の糖質低下薬、行動変容介入、プラセボ、または無介入を比較し、併存疾患のない中等度高血糖症と診断された参加者を対象とした。

データ収集と分析

2人のレビュー執筆者が独立して抄録をスクリーニングし、フルテキストの論文と記録を読み、バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。

ランダム効果モデルを用いてメタアナリシスを行い、二分法アウトカムについてはリスク比(RR)を、連続アウトカムについては平均差(MD)を算出し、効果推定値については95%信頼区間(CI)を算出した。

我々はGRADEを用いてエビデンスの確実性を評価した。

主な結果

・ランダム化された参加者数 4,186例の研究 27件が含まれていた。個々の研究の規模は43~605例で、期間は6~36ヵ月間であった。

・我々は、すべての「バイアスのリスク」領域においてバイアスのリスクが低いと判断した研究はないと判断した。ほとんどの研究では、空腹時血糖値または耐糖能異常(IGT)、またはその両方によりT2DMのリスクが高い集団を特定していた。

・我々の主なアウトカム指標は、全死亡率、T2DMの発症率、重篤な有害事象(SAE)、心血管系死亡率、非致死的心筋梗塞または脳卒中(NMI/S)、健康関連QOL(Quality of Life)、社会経済的影響であった。

・以下の比較試験では、ほとんどの場合、主要なアウトカムセットの一部しか報告されていない。

ピオグリタゾン vs. メトホルミン

・3件の研究がピオグリタゾンとメトホルミンを比較した。これらの研究では、全死亡率、心血管死亡率、NMI/S、QoL、社会経済的影響は報告されていなかった。

・T2DMの発症率は、ピオグリタゾン群では168例中9例、メトホルミン群では163例中9例であった(RR 0.98、95%CI 0.40~2.38;P = 0.96;3件の研究、331例;低確証性のエビデンス)。

・2件の研究(参加者 201例;低確証性のエビデンス)ではSAEは報告されなかった。

ピオグリタゾン vs. アカルボース

・1件の研究ではピオグリタゾンとアカルボースが比較された。

・T2DMの発症率は、ピオグリタゾン群では50例中1例、アカルボース群では46例中2例であった(非常に低確証性のエビデンス)。

ピオグリタゾン vs. レバグリニド

・1件の研究ではピオグリタゾンとレパグリニドを比較した。T2DMの発症率はピオグリタゾン群で48例中2例、レパグリニド群で48例中1例であった(低確証性のエビデンス)。

・SAEを経験した参加者はいなかった(低確証のエビデンス)。

ピオグリタゾン vs. 食事・運動のコンサルテーション

・1件の研究では、ピオグリタゾンと個人に合わせた食事と運動のコンサルテーションが比較された。

・全死亡率、心血管死亡率、NMI/S、QoL、社会経済的影響は報告されていない。

・T2DMの発症率は、ピオグリタゾン群では48例中2例、食事と運動のコンサルテーション群では48例中5例であった(低確証性のエビデンス)。

・SAEを経験した参加者はいなかった(低確証性のエビデンス)。

ピオグリタゾン vs. プラセボ

・6件の研究でピオグリタゾンとプラセボが比較された。

・QoLや社会経済的効果について報告した研究はなかった。

・全死亡率はピオグリタゾン群で577例中5例、プラセボ群で579例中2例であった(Petoオッズ比2.38、95%CI 0.54~10.50;P=0.25;4件の試験、1,156例;非常に低確証性のエビデンス)。

・T2DMの発症率は、ピオグリタゾン群で700例中80例、プラセボ群で695例中131例であった(RR 0.40、95%CI 0.17~0.95;P=0.04;6件の試験、1,395例;低確証性のエビデンス)。

・ピオグリタゾン群では93例中3例のSAEがあったのに対し、プラセボ群では94例中1例であった(RR 3.00、95%CI 0.32~28.22;P = 0.34;2件の研究、187例;非常に低確証性のエビデンス)。しかし、この比較のための最大の研究では、重篤な有害事象と非重篤な有害事象を区別していなかった。

・この研究では、ピオグリタゾン群で303例中121例(39.9%)、プラセボ群で299例中151例(50.5%)の参加者が有害事象を経験したと報告された(P = 0.03)。

・ある研究では、ピオグリタゾン群で181例中2例、プラセボ群で186例中0例の心血管死亡が観察された(RR 5.14、95%CI 0.25~106.28;P = 0.29;非常に低確実性のエビデンス)。

・ある研究では、ピオグリタゾン群では303例中2人例にNMIが認められたのに対し、プラセボ群では299例中1例にNMIが認められた(RR 1.97:95%CI 0.18~21.65;P = 0.58;非常に低確度のエビデンス)。

ピオグリタゾン vs. 無介入

・21件の研究がピオグリタゾンと無介入を比較した。

・心血管死亡率、NMI/S、QoL、社会経済的影響について報告した研究はなかった。

・全死亡率はピオグリタゾン群で441例中1例、無介入群で425例中12例であった(RR 0.85、95%CI 0.38~1.91;P = 0.70;3件の試験、866例;非常に低確証性のエビデンス)。

・T2DMの発症率は、ピオグリタゾン群では1,034例中60例、無介入群では1,019例中197例であった(RR 0.31、95%CI 0.23~0.40;P<0.001;16件の試験、2,053例;中等度の確証性のエビデンス)。

・ピオグリタゾン群では610例中16例のSAEが、無介入群では601例中21例のSAEが報告された(RR 0.71、95%CI 0.38~1.32;P = 0.28;7件の研究、1,211例;低確証性のエビデンス)。

・我々は、ピオグリタゾンとプラセボおよび他の血糖低下薬を比較した2件の進行中の研究を同定した。これらの研究は2,694例が参加しており、将来的に本レビューを更新する際のエビデンスとなる可能性がある。

著者らの結論

ピオグリタゾンは、T2DMのリスクが高い患者において、プラセボと比較して(低確証性のエビデンス)、無介入と比較して(中程度の確証性のエビデンス)、T2DMの発症を減少させたり、遅らせたりした。

ピオグリタゾンの効果が一旦中止されると持続するかどうかは不明である。

ピオグリタゾンとメトホルミンを比較しても、リスクの高い集団におけるT2DM発症に関しては有利でも不利でもなかった(低確証性のエビデンス)。

全死亡、SAE、微小血管合併症、大血管合併症のデータと報告は一般的にまばらであった。

どの研究もQoLや社会経済的影響について報告していない。

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2型糖尿病の発症抑制・遅延が重要?

糖尿病患者数は年々増加しており、2019年には4億6,300万人に上ることが報告されています。糖尿病罹患を抑制するためには、糖尿病予備軍から2型糖尿病への進展を抑える必要があります。

これまで2型糖尿病の発症抑制・発症遅延について、日本ではαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)であるボグリボースの使用が承認されています。他のαGIについては糖尿病の食後高血糖改善のみの承認です。

インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンは、その作用機序から、糖尿病予備軍への使用による2型糖尿病発症の抑制あるいは遅延効果が期待されています。

今回の研究結果から明らかになったことは?

2型糖尿病(T2DM)の発症率は、ピオグリタゾン群で、プラセボ群と比較してRR 0.40(95%CI 0.17~0.95;P=0.04;6件の試験、1,395例;低確証性のエビデンス)でした。

無介入群との比較では、ピオグリタゾン群でRR 0.31(95%CI 0.23~0.40;P<0.001;16件の試験、2,053例;中等度の確証性のエビデンス)でした。

ただし、重篤な有害事象については区間推定値が大きく、リスクが増加しないとは言い切れません。また研究によっては、心血管死亡や非致死的心筋梗塞のリスク増加が示されています。一方で、メトホルミンとの比較では、有効性・安全性に大きな差がないと考えられます。

※日本では適応がないため、糖尿病予備軍へのメトホルミン、ピオグリタゾン、ボグリボース以外のαGI使用は推奨できません(2020年12月時点)。

✅まとめ✅ ピオグリタゾンは、T2DMハイリスク患者において、プラセボ(低確証性のエビデンス)あるいは無介入(中程度の確証性のエビデンス)と比較して、T2DM発症を減少させたり、遅らせたりした

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