アルコール依存症患者におけるセリンクロ®️の有効性・安全性はどのくらいですか?(RCTのSR&MA; PloS Med. 2015)

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Risks and Benefits of Nalmefene in the Treatment of Adult Alcohol Dependence: A Systematic Literature Review and Meta-Analysis of Published and Unpublished Double-Blind Randomized Controlled Trials.

Palpacuer C, et al.

PLoS Med. 2015.

PMID: 26694529

【試験背景】

ナルメフェンはアルコール依存症治療における最近の選択肢の1つである。しかし、本薬剤の承認については議論の余地があった。

統合されたデータ(PROSPERO 2014:CRD42014014853として登録)の体系的レビューとメタ分析を実施し、この適応症におけるナルメフェンとプラセボまたは有効な比較薬の有害性/ベネフィットを比較した。

【方法】

3人のレビュアーが、Medline、Cochrane Library、Embase、ClinicalTrials.gov、Current Controlled Trials、書誌、および製薬会社、European Medicines Agency(EMA)、およびUS Food and Drug Administration(FDA)のデータを検索した。

以下4つの報告内容に応じて、対照薬に関係なく、成人のアルコール依存症を治療するためにナルメフェンを評価した二重盲検ランダム化臨床試験が含まれた。

(1)健康転帰(死亡率、事故/負傷、生活の質、体性合併症)

(2)アルコール消費転帰

(3)生物学的転帰

(4)6ヶ月および/または1年での治療安全性転帰

—-

3人のレビュアーが、同定された試験のタイトルと要約を独自にスクリーニングし、関連する試験は全文で評価された。

レビュアーは、バイアスリスクを評価するためのCochrane Collaborationツールを使用して、解析に含まれた試験の方法論の質について個々が独立して評価した。

I2インデックスまたはコクランのQ検定に基づいて、固定またはランダム効果モデルを使用して、95%CIとともにリスク比(risk ratios, RRs)、平均差(mean differences, MDs)、または標準化平均差(standardized mean differences, SMDs)を推定した。

感度分析では、フォローアップ出来なかった参加者のアウトカムが、ベースライン観測繰越(baseline observation carried forward, BOCF)を使用して含まれた。

バイナリ測定では、フォローアップに失敗した患者は失敗と同等とみなされた(つまり、評価されていない患者は両方のグループで応答しなかったと記録された)。

【結果】

合計2,567人、5つのプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)が主要な分析に含まれた。

これらの研究では、ナルメフェンのEMA承認によって定義された特定の集団、すなわち、1日あたり60g以上のアルコールを摂取する(男性の場合)または1日あたり40gを超える(女性の場合)アルコール依存症の成人では実施されなかった。

ナルメフェンと他の薬剤を比較したRCTはなかった。

治療開始後6ヶ月での死亡率(RR = 0.39、95%CI 0.08〜2.01)および1年での死亡率、(RR = 0.98、95%CI 0.04〜23.95)および6ヶ月での生活の質(SF-36物理成分要約スコア) :MD = 0.85、95%CI -0.32〜2.01; SF-36精神成分サマリースコア:MD = 1.01、95%CI -1.33〜3.34)はグループ間で差はなかった。

その他の健康上のアウトカムは報告されていなかった。

月間の過度アルコール摂取回数については、治療開始後6ヶ月(MD = -1.65、95%CI -2.41〜 -0.89])および1年(MD = -1.60、95%CI – 2.85〜 -0.35)で減少が認められた。

総アルコール消費量についても、治療開始後6ヶ月(SMD = -0.20、95%CI -0.30〜 -0.10])に減少が認められた。

治療開始後6ヶ月(RR = 3.65、95%CI 2.02; 6.63)および1年(RR = 7.01、95%CI 1.72〜28.63)の両方において、プラセボ群に比べて、ナルメフェン群で安全上の理由による撤回を含む試験同意の撤回数が多いため、減損バイアスを除外できなかった。

感度分析では、ナルメフェンとプラセボの間でアルコール消費アウトカムに違いは示されなかったが、これらのアウトカムの重みは、離脱を管理するBOCFアプローチが使用されたため、過大評価されるべきではない。

【結論】

アルコール依存症の治療に対するナルメフェンの価値は確立されていない。本レビューによるとナルメフェンのアルコール消費量を減らす効果は限られている。

【コメント】

アブストのみ。

ちなみに各アルコール類のg数を知りたい場合、下記の換算式を用いると算出できます。

お酒の量(ml)× [アルコール度数(%)÷100] × 0.8
例)ビール中びん1本:500 × [5 ÷ 100] × 0.8 = 20 g

さて本研究では、EMAが定義している重度アルコール依存症の場合、男性は60 g/day(女性は40 g/day)、つまりアルコール度数5%のビール 1500 mL/day。個人的には、ビール1500 mLであれば普通に飲みそうな気がする。

正直なぜアルコール摂取量60 g以上の患者を除外したのか疑問です。そういうグループにこそ効果を発揮して欲しい薬でしょう。

研究結果について、月間の過度のアルコール摂取回数、およびアルコール消費量の低下が認められましたが、感度分析ではアルコール消費量の低下は認められなかった。

嫌酒薬ではなく減酒薬であることから、現段階では少し残念な結果である。しかし月間の過度のアルコール摂取回数を減らせる確率は高そう。

選択肢の1つとしては良いのかもしれない。長期使用による有害事象が気になるところ。

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