腹腔鏡下肥満手術後の術後悪心・嘔吐予防におけるオピオイド温存麻酔 vs. オピオイドなし麻酔(RCTのメタ解析; Anesth Analg. 2024)

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麻酔にはオピオイドを使用しない方が良いのか?

腹腔鏡下肥満手術(aparoscopic bariatric surgery, LBS)を受ける患者は、術後の悪心・嘔吐(postoperative nausea and vomiting, PONV)を起こしやすいことが報告されています。

オピオイドフリー麻酔(Opioid-free anesthesia, OFA)またはオピオイド温存麻酔(opioid-sparing anesthesia, OSA)のプロトコールが解決策として提案されています。しかし、肥満患者における麻酔維持のための2つの代替オピオイドプロトコール間の相違は依然として不明です。

そこで今回は、OFAとOSAがPONVに及ぼす影響を比較するために実施されたネットワークメタ解析の結果をご紹介します。

本解析では、Embase、PubMed、MEDLINE、Cochrane Libraryの各データベースを用いて系統的検索が行われ、OFAとOSAの戦略を比較したランダム化比較試験(RCT)が同定されました。

包含基準および除外基準に従ってスクリーニングが行われた後、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)システムを用いてエビデンスの信頼性が評価されました。このレビューの主な関心事は、PONVの減少におけるOFAとOSAの違いでした。

本解析における主要転帰は、24時間以内のPONV発生でした。副次的アウトカムは、術後疼痛強度、オピオイド消費量、オピオイド関連有害事象、入院期間などでした。

試験結果から明らかになったことは?

LBSにおけるOFA、OSA、および従来のオピオイドベースの麻酔(OBA)戦略を比較した1,776報の論文から、1,310人の患者を含む15件のRCTがネットワークメタ解析のために同定されました。このうち12件のRCT(80%)、922人(70%)がPONVの発生について適格とされました:OFAを受けた199例(22%)、OSAとOBAをそれぞれ受けた476例(52%)と247例(27%)が含まれていました。

相対リスク RR
(95%CI)
オピオイドフリー麻酔 vs. オピオイド温存麻酔
術後の悪心・嘔吐(PONV)RR 0.6
0.5〜0.9
確実性が中等度のエビデンス
術後疼痛コントロールまたはオピオイド消費量群間差なし
確実性が非常に低い~質が高いエビデンス
徐脈RR 2.6
1.2〜5.9
確実性が中等度のエビデンス

OFAはOSAと比較して、PONVを減少させる効果が高いことが示されました(相対リスク[RR] 0.6、95%信頼区間[CI] 0.5〜0.9、確実性が中等度のエビデンス)。

術後疼痛コントロールまたはオピオイド消費量については、OFA戦略とOSA戦略との間に差は認められませんでした(確実性が非常に低い~質が高いエビデンス)。

注目すべきは、OFAはOSAよりも徐脈のリスクが高いことと関連していることでした(RR 2.6、95%CI 1.2〜5.9、確実性が中等度のエビデンス)。

コメント

腹腔鏡下肥満手術(LBS)を受ける患者において、術後の悪心・嘔吐(PONV)の予防のために、オピオイドフリー麻酔(OFA)またはオピオイド温存麻酔(OSA)が有効である可能性が報告されています。しかし。どちらが優れているのかについては報告されていません。

さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果、オピオイドフリー麻酔はオピオイド温存麻酔よりも腹腔鏡下肥満手術(LBS)後早期の悪心・嘔吐発生を抑制するのに有効であるものの、徐脈のリスク上昇に関連する可能性が示されました。

術後疼痛コントロールまたはオピオイド消費量については群間差がないことから、術後悪心・嘔吐や徐脈リスクを踏まえつつ、どちらの麻酔方法の方が目の前の患者にとって優れるのか判断した方が良さそうです。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、オピオイドフリー麻酔はオピオイド温存麻酔よりも腹腔鏡下肥満手術後早期の悪心・嘔吐発生を抑制するのに有効であるが、徐脈のリスク上昇に関連する可能性が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:腹腔鏡下肥満手術(aparoscopic bariatric surgery, LBS)を受ける患者は、術後の悪心・嘔吐(postoperative nausea and vomiting, PONV)を起こしやすい。オピオイドフリー麻酔(Opioid-free anesthesia, OFA)またはオピオイド温存麻酔(opioid-sparing anesthesia, OSA)のプロトコールが解決策として提案されている。しかしながら、肥満患者における麻酔維持のための2つの代替オピオイドプロトコール間の相違は依然として不明である。OFAとOSAがPONVに及ぼす影響を比較するためにネットワークメタ解析を実施した。

方法Embase、PubMed、MEDLINE、Cochrane Libraryの各データベースを用いて系統的検索を行い、OFAとOSAの戦略を比較したランダム化比較試験(RCT)を同定した。包含基準および除外基準に従ってスクリーニングを行った後、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)システムを用いてエビデンスの信頼性を評価した。このレビューの主な関心事は、PONVの減少におけるOFAとOSAの違いであった。
主要転帰は、24時間以内のPONV発生とした。副次的アウトカムは、術後疼痛強度、オピオイド消費量、オピオイド関連有害事象、入院期間などであった。

結果:LBSにおけるOFA、OSA、および従来のオピオイドベースの麻酔(OBA)戦略を比較した1,776報の論文から、1,310人の患者を含む15件のRCTがネットワークメタ解析のために同定された。12件のRCT(80%)、922人(70%)がPONVの発生について適格とされた。これらの中には、OFAを受けた199例(22%)、OSAとOBAをそれぞれ受けた476例(52%)と247例(27%)が含まれていた。OFAはOSAと比較して、PONVを減少させる効果が高かった(相対リスク[RR] 0.6、95%信頼区間[CI] 0.5〜0.9、確実性が中等度のエビデンス)。術後疼痛コントロールまたはオピオイド消費量については、OFA戦略とOSA戦略との間に差は認められなかった(確実性が非常に低い~質が高いエビデンス)。注目すべきは、OFAはOSAよりも徐脈のリスクが高いことと関連していることである(RR 2.6、95%CI 1.2〜5.9、確実性が中等度のエビデンス)。

結論:OFAはOSAよりもLBS術後早期のPONV発生を抑制するのに有効であるが、徐脈のリスク上昇に関連する可能性がある。いずれのオピオイド代替戦略を受けた患者も、術後のオピオイド消費量の減少と疼痛強度の緩和において同様の効果を示した。

引用文献

Opioid-Sparing Anesthesia Versus Opioid-Free Anesthesia for the Prevention of Postoperative Nausea and Vomiting after Laparoscopic Bariatric Surgery: A Systematic Review and Network Meta-Analysis
Yichan Ao et al. PMID: 38578868 DOI: 10.1213/ANE.0000000000006942
Anesth Analg. 2024 Apr 5. doi: 10.1213/ANE.0000000000006942. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38578868/

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