オピオイド鎮痛薬使用の年齢に関連した重篤な転倒事故リスクはどのくらい?(コホート研究; POPPY II試験; JAMA Intern Med. 2024)

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オピオイド鎮痛薬による転倒リスクはどのくらいなのか?

オピオイド鎮痛薬は、主に脊髄後角の浅層部に作用して鎮痛作用を示すと考えられています。この鎮痛作用は他の鎮痛薬よりも強力であることから、癌性疼痛や難治性腰痛などに使用されています。オピオイドの三大副作用として、便秘、悪心嘔吐、眠気があげられます。特に眠気については耐性が得られないかつ症状が強い場合には転倒リスクとなります。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用は、なかでも高齢者における転倒リスクの増加と関連する可能性があります。

そこで今回は、オピオイドを処方された成人における重篤な転倒イベントの年齢関連リスクを、オピオイド曝露、投与開始からの期間、および1日用量別に定量化することを目的に実施されたコホート研究の結果をご紹介します。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州で実施されたこの集団ベースのコホート研究では、社会人口統計学的特性、臨床的特性、医薬品の使用、医療サービスの利用、死亡率に関する情報を含む、全国的な医薬品の請求と国および州のデータセットをリンクさせたデータが用いられました(POPPY II研究)。2005年1月1日〜2018年12月31日の間に、処方オピオイド治療を開始した成人(18歳以上)が対象となりました。データは2023年2月〜6月まで分析されました。オピオイド曝露の時間依存期間は調剤記録から評価されました。

主要アウトカムは、救急部、入院、死亡の記録から特定した重篤な転倒イベントであり、負の二項モデルを用いて、時間依存性のオピオイド曝露(全体、投与開始からの時間別、投与量別)、年齢、および転倒イベントのリスクとの関連が評価されました。モデルは、他の転倒リスク増加薬、虚弱リスク、および過去の重篤な転倒事象を含む既知の転倒リスク因子で調整されました。

試験結果から明らかになったことは?

コホートは処方オピオイド治療を開始した3,212,369人で構成されました(女性1,702,332人[53%];開始時の年齢中央値 49[IQR 32〜65]歳)。

調整偶発症発生率比(95%CI)
85歳以上の重篤な転倒イベント
vs. 18~44歳
調整偶発症発生率比 6.35(6.20〜6.51

全体として、5,210件の致死的転倒を含む506,573件の重篤な転倒事象が同定され、オピオイドへの曝露中、重篤な転倒イベントのリスクはすべての年齢群で上昇しました;18~44歳の群と比較して、このリスクは85歳以上で最も高いことが示されました(調整偶発症発生率比 6.35;95%CI 6.20〜6.51)。

すべての年齢群において、オピオイド投与開始後最初の28日間は重篤な転倒リスクが増加する時期であり、このリスクは年齢とともに増加しました。18~84歳では、1日のオピオイド投与量が多いことと重篤な転倒イベントとの間に関連が確認されました。

コメント

オピオイド使用による転倒リスクは既知の副作用ですが、使用量ごと、年齢ごとのリスク評価は充分に行われていません。

さて、オーストラリアのニューサウスウェールズ州で実施された集団ベースのコホート研究の結果、処方オピオイドはすべての年齢の成人において重篤な転倒イベントのリスク増加と関連しており、85歳以上の高齢者が最もリスクが高いことが示唆されました。

オピオイド投与開始後最初の28日間は重篤な転倒リスクがすべての年齢群において増加する時期であり、このリスクは年齢とともに増加していました。また、1日のオピオイド投与量が多いことと重篤な転倒イベントとの間に相関が認められました。

投与量については、疼痛強度による異なることから別途、対応策の立案が求められますが、モニタリング強度と期間については、使用開始後の28日間が重篤な転倒イベントの好発期間であることから、特にこの期間は患者への注意喚起とともに、医療従事者側も特にモニタリングすることが求められる期間であると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ コホート研究の結果、処方オピオイドはすべての年齢の成人において重篤な転倒イベントのリスク増加と関連しており、85歳以上の高齢者が最もリスクが高いことが示唆された。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:オピオイド鎮痛薬は、特に高齢者における転倒リスクの増加と関連する可能性がある。

目的:オピオイドを処方された成人における重篤な転倒イベントの年齢関連リスクを、オピオイド曝露、投与開始からの期間、および1日用量別に定量化すること。

試験デザイン、設定、参加者:オーストラリアのニューサウスウェールズ州で実施されたこの集団ベースのコホート研究では、社会人口統計学的特性、臨床的特性、医薬品の使用、医療サービスの利用、死亡率に関する情報を含む、全国的な医薬品の請求と国および州のデータセットをリンクさせたデータが用いられた(POPPY II研究)。2005年1月1日から2018年12月31日までの間に、処方オピオイド治療を開始した成人(18歳以上)を対象とした。データは2023年2月から6月まで分析された。

曝露:オピオイド曝露の時間依存期間を調剤記録から評価した。

主要アウトカムと評価基準:救急部、入院、死亡の記録から特定した重篤な転倒イベント。負の二項モデルを用いて、時間依存性のオピオイド曝露(全体、投与開始からの時間別、投与量別)、年齢、および転倒イベントのリスクとの関連を評価した。モデルは、他の転倒リスク増加薬、虚弱リスク、および過去の重篤な転倒事象を含む既知の転倒リスク因子で調整した。

結果:コホートは処方オピオイド治療を開始した3,212,369人で構成された(女性1,702,332人[53%];開始時の年齢中央値 49[IQR 32〜65]歳)。全体として、5,210件の致死的転倒を含む506,573件の重篤な転倒事象が同定された。オピオイドへの曝露中、重篤な転倒イベントのリスクはすべての年齢群で上昇した;18~44歳の群と比較して、このリスクは85歳以上で最も高かった(調整偶発症発生率比 6.35;95%CI 6.20〜6.51)。すべての年齢群において、オピオイド投与開始後最初の28日間は重篤な転倒リスクが増加する時期であり、このリスクは年齢とともに増加した。18~84歳では、1日のオピオイド投与量が多いことと重篤な転倒イベントとの間に関連が確認された。

結論と関連性:このコホート研究の結果から、処方オピオイドはすべての年齢の成人において重篤な転倒イベントのリスク増加と関連しており、85歳以上の高齢者が最もリスクが高いことが示唆された。このようなリスクは、オピオイドを処方する際、特に既存の危険因子を有する患者や高用量のオピオイドを処方する場合に考慮すべきである。的を絞った転倒予防の取り組みは、オピオイド投与開始後1ヵ月以内に行うのが最も効果的であろう。

引用文献

Age-Related Risk of Serious Fall Events and Opioid Analgesic Use
Ria E Hopkins et al. PMID: 38373005 PMCID: PMC10877504 (available on 2025-02-19) DOI: 10.1001/jamainternmed.2023.8154
JAMA Intern Med. 2024 Feb 19:e238154. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.8154. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38373005/

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