尋常性ざ瘡に対して適応外使用されてきたスピロノラクトンの効果は?
カリウム保持性利尿薬であるスピロノラクトンは、高血圧症などに広く使用されていますが、抗アンドロゲン作用を有していることから、長年にわたり尋常性ざ瘡に対して適応外処方されてきました。しかし、エビデンスは不充分です。
そこで今回は、イングランドとウェールズの成人女性における尋常性ざ瘡に対するスピロノラクトン経口投与の有効性を検証した二重盲検ランダム化比較試験(Spironolactone for women with acne vulgaris, SAFA)の結果をご紹介します。本試験は、実用的、多施設、第3相、二重盲検、ランダム化比較試験でした。
試験参加者は18歳以上の女性で、少なくとも6ヵ月間、顔の尋常性ざ瘡があり、抗生物質の内服が必要と判断された人でした。試験参加者は、6週目まで50mg/日のスピロノラクトンまたはマッチしたプラセボにランダムに割り付けられ、24週目まで100mg/日のスピロノラクトン(またはマッチするプラセボ)に増量されました。参加者は外用薬の使用を継続することができました。
本試験の主要アウトカムは、12週目における尋常性ざ瘡特有のQOL(Acne-QoL)症状サブスケールスコア(範囲0~30、高スコアはQoLの改善を反映)でした。副次的アウトカムは、24週目のAcne-QoL(参加者の自己評価による改善度)、治療の成功に関する治験責任医師によるグローバル評価(IGA)、および有害反応でした。
試験結果から明らかになったことは?
2019年6月5日から2021年8月31日まで、1,267例の女性が適格性を評価され、410例が介入群(n=201)または対照群(n=209)にランダムに割り当てられ、342例が主要解析に含まれました(介入群n=176、対照群n=166)。ベースラインの平均年齢は29.2歳(標準偏差7.2)、389例中28例(7%)が白人以外の民族で、尋常性ざ瘡は軽度46%、中度40%、重度13%でした。
Acne-QoL症状スコアの平均値(標準偏差) | スピロノラクトン群 | プラセボ群 |
ベースライン | 13.2(4.9) | 12.9(4.5) |
12週目 | 19.2(6.1) | 17.8(5.6) |
スピロノラトンの有利差 | 1.27 (95%CI 0.07〜2.46) ベースライン変数を調整 | – |
24週目 | 21.2(5.9) | 17.4(5.8) |
スピロノラトンの有利差 | 3.45 (95%CI 2.16~4.75) ベースライン変数を調整 | – |
ベースライン時のAcne-QoL症状スコアの平均値はスピロノラクトン群で13.2(標準偏差4.9)、12週目では19.2(6.1)、プラセボ群では12.9(4.5)、17.8(5.6)(スピロノラトンの有利差 1.27、95%信頼区間 0.07〜2.46、 ベースライン変数を調整)でした。
24週目のスコアは、スピロノラクトンが21.2(5.9)、プラセボが17.4(5.8)でした(差3.45、95%信頼区間 2.16~4.75、調整後)。
スピロノラクトン群 | プラセボ群 | オッズ比 (95%CI) | |
12週目 | 72% | 68% | 1.16 (0.70~1.91) 有意差なし |
24週目 | 82% | 63% | 2.72 (1.50~4.93) 有意差あり |
スピロノラクトン群では、プラセボ群よりも多くの参加者が尋常性ざ瘡の改善を報告しました。12週目では有意差はありませんでしたが(72% vs. 68%、オッズ比 1.16、95%信頼区間 0.70~1.91)、24週目で有意差が認められました(82% vs. 63%、2.72、1.50~4.93)。
12週目の治療成功(IGA分類)は、スピロノラクトン投与168例中31例(19%)、プラセボ投与160例中9例(6%)でした(5.18、2.18〜12.28)。
副作用はスピロノラクトン投与群でやや多く、頭痛が多かったものの(20% vs. 12%、p=0.02)、重篤な副作用は報告されませんでした。
コメント
スピロノラクトンは、尋常性ざ瘡における抗生物質の使用量を減らせる可能性があります(PMID: 35947396)。カリウム保持性利尿薬であるスピロノラクトンは、高血圧症などに広く使用されていますが、抗アンドロゲン作用を有することが知られています。この作用から長年にわたり尋常性ざ瘡に対して適応外処方されてきました。しかし、システマティックレビューでは、ランダム化比較試験によるエビデンスが乏しいことが強調されており、現在までに行われた最大の試験でも参加者はわずか34例でした(PMID: 28155090、PMID: 32166709)。このため尋常性ざ瘡に対するスピロノラクトンの効果検証が求められていました。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、スピロノラクトンはプラセボと比較して尋常性ざ瘡特有のQOL(Acne-QoL)症状サブスケールスコアを改善し、12週目よりも24週目の方がより大きな差を示しました。スピロノラクトンは、尋常性ざ瘡を有する女性にとって、経口抗生物質の代替薬として有用であることが示されました。
これまで適応外使用されてきましたが、二重盲検ランダム化比較試験で効果検証されました。これまでの使用実績、本試験結果をもって尋常性ざ瘡におけるスピロノラクトンの使用が妥当であることが示されたことになりますが、診療ガイドライン掲載や公知申請までなされるのかについては不明です。
続報に期待。
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