尋常性ざ瘡に対する薬理学的治療で優れている方法はどれか?(RCTのネットワークメタ解析; Ann Fam Med. 2023)

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尋常性ざ瘡に最も有効な治療法とは?

尋常性ざ瘡(にきび)は極めて一般的な皮膚疾患であり、世界的な有病率は9.4%と推定されています。しかし、治療薬の比較に関するエビデンスは限られています。

そこで今回は、にきびに対する一般的な薬理学的治療法の包括的な比較を行うことを目的に実施されたネットワークメタ解析の結果をご紹介します。

本解析では、年齢、性別を問わず、治療期間が2週間を超える尋常性ざ瘡患者における薬理学的治療の有効性を比較したランダム化比較試験が対象であり、PubMedおよびEmbaseデータベースは、開始時から2022年2月まで検索されました。

事前に規定された主要エンドポイントは、総病変、炎症性病変、非炎症性病変の平均減少率でした。治療の順位はP値により決定されました。

試験結果から明らかになったことは?

221件の試験と37の介入を記述した210の論文が解析に組み入れられました。総病変数の減少率に関する主要解析では、65,601例の患者が登録されました。すべての試験において、平均年齢は20.4歳、治療期間の中央値は12週間でした。総病変数、炎症性病変数、非炎症性病変数の中央値はそれぞれ72、27、44でした。

平均差 MD
経口イソトレチノイン
(日本未承認)
MD 48.41
P=1.00
抗生物質、レチノイド、過酸化ベンゾイル(BPO)を含む局所3剤併用療法MD 38.15
P=0.95
経口抗生物質、局所レチノイド、BPOを含む3剤併用療法MD 34.83
P=0.90

最も有効な治療法は経口イソトレチノイン(平均差[MD] 48.41;P=1.00)であり、次いで局所抗生物質、局所レチノイド、過酸化ベンゾイル(BPO)を含む3剤併用療法(MD 38.15;P=0.95)、経口抗生物質、局所レチノイド、BPOを含む3剤併用療法(MD 34.83;P=0.90)でした。

単剤療法では、炎症性病変に対する抗生物質の内服または外用、レチノイドの外用は同程度の有効性を示しましたが、非炎症性病変に対する抗生物質の内服または外用の効果は低いことが示されました。

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尋常性ざ瘡(にきび)は極めて一般的な皮膚疾患であり、これは日本と米国であっても同様です。にきびの好発時期は思春期であり、これはアンドロゲン分泌の急激な増加により皮脂産生が刺激されることによる角化細胞の過剰増殖に起因しているとされています。また、妊娠あるいは月経周期に伴って生じるホルモン分泌の変化や毛包を閉塞する化粧品などの他、発汗も要因としてあげられます。

にきびは一般的な皮膚疾患であるにも関わらず、その治療における治療薬間の比較に関するエビデンスは限られています。

さて、ネットワークメタ解析の結果、尋常性ざそう(にきび)に対する最も有効な治療法はイソトレチノインの内服であり、次いでレチノイド外用薬、過酸化ベンゾイル、抗生物質を含む3剤併用療法であることが示されました。元論文は有料であることから、異質性や閉じた環の数など、批判的吟味を行う上で必要となる情報が不足しています。結果の解釈は慎重に行う必要があります。

上記の前提を踏まえつつではありますが、今回の解析結果によれば、効果が高い治療薬はイソトレチノインです。しかし、本剤は日本で承認されていません。この理由として、尋常性ざ瘡(ニキビ)に対する日本と海外(特に米国)との認識の違いがあります。日本の場合、保険適用となるのは「ほぼ治療薬のみ」です。予防目的は保険適用外、自費となります。ニキビは身体的に不調をきたす疾患ではないことから「治療目的」というよりは「美容目的」と解されることが多く、特にイソトレチノイン(商品名:アキュテイン, ACCUTANE)のような催奇形性等の重篤な副作用の可能性が報告されている治療薬は、保険適用されにくくなっています。
※米国食品医薬品局(FDA)は、イソトレチノインが胎児への催奇形性のおそれを有していることから、インターネットや個人輸入により入手することのないよう、注意喚起を行っています(厚生労働省リンク)。

国の認識が変わらない限り、イソトレチノインが保険申請承認される可能性は低く、自由診療の範囲内で実施されることとなります。今後のエビデンスの集積により、この認識が変更となると良いかもしれないですね。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ネットワークメタ解析の結果、尋常性ざそう(にきび)に対する最も有効な治療法はイソトレチノインの内服であり、次いでレチノイド外用薬、過酸化ベンゾイル、抗生物質を含む3剤併用療法である。

根拠となった試験の抄録

目的:尋常性ざ瘡(にきび)は極めて一般的な皮膚疾患であり、世界的な有病率は9.4%と推定されている。われわれは、にきびに対する一般的な薬理学的治療法の包括的な比較を行うことを目的としている。

方法:年齢、性別を問わず、治療期間が2週間を超える尋常性ざ瘡患者における薬理学的治療の有効性を比較したランダム化比較試験を対象とした。PubMedおよびEmbaseデータベースは、開始時から2022年2月まで検索した。
事前に規定した主要エンドポイントは、総病変、炎症性病変、非炎症性病変の平均減少率とした。治療の順位はP値により決定した。

結果:221件の試験と37の介入を記述した210の論文が解析に組み入れられた。総病変数の減少率に関する主要解析では、65,601例の患者が登録された。すべての試験において、平均年齢は20.4歳であった。治療期間の中央値は12週間であった。総病変数、炎症性病変数、非炎症性病変数の中央値はそれぞれ72、27、44であった。最も有効な治療法は経口イソトレチノイン(平均差[MD] 48.41;P=1.00)であり、次いで局所抗生物質、局所レチノイド、過酸化ベンゾイル(BPO)を含む3剤併用療法(MD 38.15;P=0.95)、経口抗生物質、局所レチノイド、BPOを含む3剤併用療法(MD 34.83;P=0.90)であった。単剤療法では、炎症性病変に対する抗生物質の内服または外用、レチノイドの外用は同程度の有効性を示したが、非炎症性病変に対する抗生物質の内服または外用の効果は低かった。

結論:にきびに対する最も有効な治療法はイソトレチノインの内服であり、次いでレチノイド外用薬、過酸化ベンゾイル、抗生物質を含む3剤併用療法である。実用的なデータベースとして、各治療法の詳細な比較を示す。

キーワード:尋常性ざ瘡、抗菌薬、薬物療法、ネットワークメタ解析、レチノイド

引用文献

Comparative Efficacy of Pharmacological Treatments for Acne Vulgaris: A Network Meta-Analysis of 221 Randomized Controlled Trials
Chung-Yen Huang et al. PMID: 37487721 PMCID: PMC10365865 DOI: 10.1370/afm.2995
Ann Fam Med. 2023 Jul-Aug;21(4):358-369. doi: 10.1370/afm.2995.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37487721/

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