自然環境で過ごす人は薬剤の使用頻度の低さと関連しているのか?
自然環境への曝露は人間の健康に有益であると考えられていますが、その証拠には一貫性がありません。
そこで今回は、フィンランドでの都市環境における緑と青の空間への曝露が精神的・身体的健康と関連しているかどうかを検証した横断研究の結果をご紹介します。
本試験は、2015〜2016年にフィンランドのヘルシンキ、エスポー、ヴァンターでヘルシンキ首都圏環境健康調査を実施しました(n=7,321)。回答者の自宅周辺半径1km以内の住宅用緑地・青地の量(Urban Atlas 2012に基づく)、自宅からの緑地・青地の眺め、緑地訪問と、自己申告による向精神薬(抗不安薬、催眠薬、抗うつ薬)、降圧薬、喘息の使用との横断的関連性をロジック回帰モデルで検討しました。
健康行動の指標、交通関連の屋外大気汚染や騒音、社会経済的地位(SES)を共変数として用い、最後の共変数は潜在的な効果修飾因子としても使用されました。
試験結果から明らかになったことは?
住宅地の緑地・青地の量や自宅からの緑地・青地の眺望は、薬剤(使用)と関連しませんでした。
緑地への訪問頻度 | 3~4回/週 | 5回/週以上 |
向精神薬 | OR 0.67 (95%CI 0.55~0.82) | OR 0.78 (0.63~0.96) |
降圧薬 | OR 0.64 (0.52~0.78) | OR 0.59 (0.48~0.74) |
ぜん息 | OR 0.74 (0.58~ 0.94) | OR 0.76 (0.59~0.99) |
一方、緑地への訪問頻度は、向精神薬(3~4回/週:OR 0.67、95%CI 0.55~0.82; 5回/週以上:OR 0.78、0.63~0.96)、降圧薬(3~4回/週:OR 0.64、0.52~0.78; 5回/週以上:OR 0.59、0.48~0.74)、ぜん息(3~4回/週:OR 0.74、0.58~ 0.94; 5回/週以上:OR 0.76、0.59~0.99)の使用オッズの低下との関係が示されました。
観察された関連性は、肥満度によって減衰しましたが、SES指標との一貫した交互作用は観察されませんでした。
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緑地への曝露については、主に横断研究のレビューで、緑地への曝露と精神的幸福との関連が示唆されていますが、心血管系の健康に関する証拠はより限られています(PMID: 28843736)。
さて、本試験結果によれば、フィンランドの都市環境における向精神薬、降圧薬、喘息薬の使用頻度の低さは、緑地面積や青地面積、自宅からの緑や青の眺めの多さではなく、頻繁に緑地を訪れることと関連していました。ただし、本試験は横断研究の結果であり、より質の高い前向き研究での検証が求められます。また、薬剤の使用頻度については自己申告に基づいていること、フィンランドの都市環境以外の地域での検証、患者アウトカムに対する影響など、確認が必要な点がいくつか挙げられます。
とはいえ、緑地を訪れることで薬剤の使用頻度が低くなる可能性が示されたことは、大変興味深いです。
続報に期待。
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