医療従事者におけるファイザー社製BNT162b2ワクチン接種はコロナ後遺症を予防できますか?(コホート研究; JAMA. 2022)

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ワクチン接種によりコロナ後遺症を予防できるのか?

COVID-19の生存者は、長期にわたる症状を呈することがあります(PMID: 34643720)。入院を含むCOVID後の状態(long COVID、コロナ後遺症とも呼ばれる:PMID: 35216672)の発症には、いくつかの要因が関連しています(PMID: 35429399)。

米国の高齢退役軍人の研究では、ワクチン接種後にコロナ後遺症が15%減少することが示されていますが、試験参加者に女性の数が少ないことと、最適とは言い難い接種スケジュールなど研究の限界がありました(PMID: 35614233)。

そこで今回は、2020年3月から2022年4月まで、イタリアの9つの医療施設に勤務する個人を対象に実施された観察型コホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2,560例のうち739例(29%)がCOVID-19(89例は無症状)を有し、そのうち229例(31.0%、95%CI 27.7%~34.5%)がコロナ後遺症を有していました。

コロナ後遺症の有病率
第1波48.1%
(95%CI 39.9%~56.2%)
第2波35.9%
(95%CI 30.5%~41.6%)
第3波16.5%
(95%CI 12.4%~21.4% )

コロナ後遺症の有病率はパンデミックの波によって異なり、第1波では48.1%(95%CI 39.9%~56.2%)、第2波では35.9%(95%CI 30.5%~41.6%)、第3波では16.5%(95%CI 12.4%~21.4% )と変化していました。

コロナ後遺症の有病率
ワクチン未接種41.8%
(95%CI 37.0%~46.7%
1回接種30.0%
(95%CI 6.7%~65.2%)
2回接種17.4%
(95%CI 7.8%~31.4%)
3回接種16.0%
(95%CI 11.8%~21.0%)

ワクチンの接種回数は、コロナ後遺症の有病率の低下と関連していました。ワクチン未接種では41.8%(95%CI 37.0%~46.7%)、1回接種では30.0%(95%CI 6.7%~65.2%)、2回接種では17.4%(95%CI 7.8%~31.4%)、3回接種では16.0%(95%CI 11.8%~21.0%)。

高齢、高体格指数、アレルギー、閉塞性肺疾患は、コロナ後遺症と関連していました。アレルギーや合併症のない第1波のワクチン未接種の女性を基準群として、男性(オッズ比[OR] 0.65、95%CI 0.44~0.98、P=0.04)、ワクチン2回接種(OR 0.25、95%CI 0.07~0.87、P=0.03)およびワクチン3回接種(OR 0.16、95%CI 0.03~0.84、P=0.03)は、コロナ後遺症の有病率がより低いことと関連していました。

高齢(OR 1.23、95%CI 1.01~1.49、P=0.04)、アレルギー(OR 1.50、95%CI 1.06~2.11、P=0.02)、および合併症の増加(OR 1.32、95%CI 1.04~1.68、P=0.03)は、コロナ後遺症のより高い罹患率と関連していました。

感染波との統計的に有意な関連は認められませんでした。ワクチン接種者(265例)では、2回目のワクチン接種から感染までの時間は、コロナ後遺症とは関連が認められませんでした(OR 0.66、95%CI 0.34~1.29)。

コメント

新型コロナ感染症は、体内からウイルスが排出された後も症状が持続することがあります。入院を含むCOVID後の状態(long COVID、コロナ後遺症とも呼ばれる)について、いくつか報告がなされていますが、ワクチン接種後の軽症~中等症のCOVID-19患者におけるコロナ後遺症の発症リスクについては情報が限られています。

さて、本試験結果によれば、入院を必要としないSARS-CoV-2感染症の医療従事者を対象に、ワクチン接種していない集団と比較して、ワクチン2回または3回接種がコロナ後遺症の有病率の低下と関連していました。また、ワクチン未接種と比較して、ワクチンの接種回数が増えるに伴い、コロナ後遺症の発症リスクが低下していました。ワクチン接種による新型コロナウイルス感染症の発症は、ワクチンの接種回数が増えるごとに発症抑制効果が低下することが報告されていますが、コロナ後遺症の発症抑制効果は持続しているようでした。

本データのみで結論付けられませんが、ワクチン接種は新型コロナウイルス感染症や重症化の抑制だけでなく、コロナ後遺症の発症抑制効果が期待できるようです。

続報に期待。

person getting vaccinated

☑まとめ☑ 入院を必要としないSARS-CoV-2感染症の医療従事者を対象に実施したこの縦断的観察研究では、ワクチン接種なしと比較して、ワクチン2回または3回接種がコロナ後遺症の有病率の低下と関連していた。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19の生存者は、長期にわたる症状を呈することがある(PMID: 34643720)。入院を含むCOVID後の状態(long COVID、コロナ後遺症とも呼ばれる:PMID: 35216672)の発症には、いくつかの要因が関連している(PMID: 35429399)。米国の高齢退役軍人の研究では、ワクチン接種後にコロナ後遺症が15%減少することが示されているが、女性の数が少ないことと、最適とは言い難い接種スケジュールなど研究の限界があった(PMID: 35614233)。

研究方法:この研究は、Humanitas Research Hospitalの機関審査委員会によって承認された。各参加者は書面によるインフォームドコンセントを提供した。2020年3月から2022年4月まで、イタリアの9つの医療施設に勤務する個人を対象に観察型コホート研究を実施した(PMID: 33956667PMID: 35393790)。SARS-CoV-2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は、病院職員については毎週(COVID病棟)または2週間(その他の病棟)、あるいは症状が出た場合や患者にさらされた場合(濃厚接触の場合)に行っている。すべての医療従事者に3回のワクチン(BNT162b2)接種を義務付け、2021年1月~2月に1回目と2回目を、2021年11月~12月にブースター接種を行った。
2022年2月から4月にかけて、各参加者は、人口統計、併存疾患、感染時のSARS-CoV-2関連症状のリストとその期間(別冊の調査)、ワクチン接種状況などの調査を実施した。コロナ後遺症とは、少なくとも1つのSARS-CoV-2関連症状を報告し、その期間が4週間以上であることと定義した。重症化に関連するバイアスを避けるため、入院患者は、感染日が調査前28日以内の者と同様に除外した。コロナ後遺症の有病率の過大評価を避けるため、急性感染群には無症候性感染者を含めた(定義上、コロナ後遺症を有し得ない)。分析は、2020年3月から2022年3月の間に、人口統計学的データが完全で、SARS-CoV-2の陽性結果が記録されている1週間または2週間ごとに検査を受けた医療従事者に限定した。
感染日により、我々のデータおよびイタリアで懸念される変種の循環のピークに対応する3群に分けた(第1波:2020年2~9月[野生型変異株]、第2波:2020年10~2021年7月[アルファ変異株]、第3波:2021年8~2022年3月[デルタおよびオミクロン変異株])。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、コロナ後遺症と、参加者の性別、年齢、SARS-CoV-2感染、流行期、感染14日前のワクチン接種状況などの特性との関係を評価した。ワクチン接種者については、2回目のワクチン接種からの経過時間を評価した。
95%CI算出にはClopper-Pearson法を用い、連続変数にはMann-Whitney U検定またはt検定、カテゴリー変数にはχ2検定を用いてP値を算出した。有意水準はP <0.05(両側)とした。解析はPython(バージョン3.8.3)で行った。

結果:2,560例のうち739例(29%)がCOVID-19(89例は無症状)を有し、そのうち229例(31.0%、95%CI 27.7%~34.5%)がコロナ後遺症を有していた。コロナ後遺症の有病率はパンデミックの波によって異なり、第1波では48.1%(95%CI 39.9%~56.2%)、第2波では35.9%(95%CI 30.5%~41.6%)、第3波では16.5%(95%CI 12.4%~21.4% )と変化している。ワクチンの接種回数は、コロナ後遺症の有病率の低下と関連していた。ワクチン未接種では41.8%(95%CI 37.0%~46.7%)、1回接種では30.0%(95%CI 6.7%~65.2%)、2回接種では17.4%(95%CI 7.8%~31.4%)、3回接種では16.0%(95%CI 11.8%~21.0%)。高齢、高体格指数、アレルギー、閉塞性肺疾患は、コロナ後遺症と関連していた。
アレルギーや合併症のない第1波のワクチン未接種の女性を基準群として、男性(オッズ比[OR] 0.65、95%CI 0.44~0.98、P=0.04)、ワクチン2回接種(OR 0.25、95%CI 0.07~0.87、P=0.03)およびワクチン3回接種(OR 0.16、95%CI 0.03~0.84、P=0.03)は、コロナ後遺症の有病率がより低かった。高齢(OR 1.23、95%CI 1.01~1.49、P=0.04)、アレルギー(OR 1.50、95%CI 1.06~2.11、P=0.02)、および合併症の増加(OR 1.32、95%CI 1.04~1.68、P=0.03)は、コロナ後遺症のより高い罹患率と関連があった。感染波との統計的に有意な関連は認められなかった。ワクチン接種者(265例)では、2回目のワクチン接種から感染までの時間は、コロナ後遺症とは関連がなかった(OR 0.66、95%CI 0.34~1.29)。

考察:入院を必要としないSARS-CoV-2感染症の医療従事者を対象に実施したこの縦断的観察研究では、ワクチン接種なしと比較して、ワクチン2回または3回接種がコロナ後遺症の有病率の低下と関連していた。研究の限界として、症状および期間が自己報告であり、因果関係を推論することはできない。

引用文献

Association Between BNT162b2 Vaccination and Long COVID After Infections Not Requiring Hospitalization in Health Care Workers
Elena Azzolini et al. PMID: 35796131 PMCID: PMC9250078 (available on 2023-01-01) DOI: 10.1001/jama.2022.11691
JAMA. 2022 Jul 1;e2211691. doi: 10.1001/jama.2022.11691. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35796131/

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