脳卒中患者での選択的セロトニン再取り込み阻害剤 SSRIにおける骨折リスクはどのくらい?(SR&MA; Stroke. 2021)

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脳卒中後うつ病におけるSSRI使用は骨折リスクになる?

脳卒中生存者は、うつ病と骨折のリスクが高いことが報告されています。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、観察研究において骨折リスクの増加と関連していることが報告されています。

最近、脳卒中生存者の骨折リスクに対するSSRIの効果を報告したランダム化比較試験(RCT)がいくつか発表されていますが、メタアナリシスの対象となっていません。

そこで今回は、脳卒中後のSSRI使用に関連した骨折リスク、および骨折因子となる転倒、発作、および脳卒中の再発リスクを検討したシステマティックレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

システマティックレビューにより683件の記録が得られ、そのうち6ヵ月間のRCTが4件、合計6,549例の参加者がメタ分析に含まれました(fluoxetineフルオキセチンの研究が3件、citalopramシタロプラムの研究が1件;いずれも日本では未承認)。

SSRIによる6ヵ月間の治療は、プラセボと比較して、骨折のリスクを2.36(95%CI 1.64〜3.39)増加させました。

https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/STROKEAHA.120.032973より引用

転倒、痙攣、脳卒中の再発リスクは統計的に有意に増加しませんでした。

今回のレビューでは、フルオキセチンとシタロプラムに関する研究のみが対象となったため、他のSSRIへの知見の一般化は不確かです。

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脳卒中後の後遺症として、半身不随やうつ病が知られています。抑うつ症状に対してはSSRIが用いられますが、脳卒中既往の患者では転倒リスクが高いことから、SSRI使用により、さらに転倒リスクが増加する可能性があります。

さて、試験結果によれば、SSRIによる6ヵ月間の治療は、プラセボと比較して、骨折のリスクを2.36(95%CI 1.64〜3.39)増加させました。メタ解析に組み入れられたのは、fluoxetine(フルオキセチン)の研究が3件、citalopram(シタロプラム)の研究が1件であり、いずれも日本未承認であることから、日本におけるSSRIと脳卒中後の骨折リスクについては不明です。

また、転倒、痙攣、脳卒中の再発リスクはSSRI使用と統計的有意差は認められていないことから、SSRIと骨折リスクとの間に未知の交絡因子が残存している可能性があります。

更なるエビデンス集積が待たれます。今後の試験結果に期待。

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✅まとめ✅ フルオキセチンとシタロプラムの利用可能なRCTに基づいて、SSRIを6ヵ月間使用すると、脳卒中生存者の骨折リスクが2倍になる。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:脳卒中生存者は、うつ病と骨折のリスクが高い。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、観察研究において骨折リスクの増加と関連している。最近、脳卒中生存者の骨折リスクに対するSSRIの効果を報告したランダム化比較試験(RCT)がいくつか発表されているが、メタアナリシスの対象とはなっていない。
我々は、脳卒中生存者におけるSSRIの使用に関連した骨折のリスク、および骨折の媒介因子となりうる転倒、発作、および脳卒中の再発のリスクを明らかにすることを目的とした。

方法:PROSPERO(CRD42020192632)に登録されたプロトコールに従い、脳卒中生存者におけるSSRIのRCTのシステマティックレビューおよびメタアナリシスを行った。Web of Science、EMBASE、PsycINFO、およびOvid Medline/PubMed書誌データベース、臨床試験登録、灰色文献の情報源を検索した。
出血性または虚血性脳卒中の成人生存者における骨折のリスクを報告したSSRI対プラセボまたは介入なしのRCTを対象とした。レビュアー2名が検索結果を独立して審査し、データを抽出した。Mantel-Haenszelランダム効果モデルを用いて、各結果についてメタ解析を行った。

結果:683件の記録が得られ、そのうち6ヵ月間のRCTが4件、合計6,549例の参加者がメタ分析に含まれた(fluoxetineフルオキセチンの研究が3件、citalopramシタロプラムの研究が1件)。
SSRIによる6ヵ月間の治療は、プラセボと比較して、骨折のリスクを2.36(95%CI 1.64〜3.39)増加させた。
転倒、痙攣、脳卒中の再発リスクは統計的に有意に増加しなかった。今回のレビューでは、フルオキセチンとシタロプラムに関する研究のみが対象となったため、他のSSRIへの知見の一般化は不確かである。

結論:フルオキセチンとシタロプラムの利用可能なRCTに基づいて、SSRIを6ヵ月間使用すると、脳卒中生存者の骨折リスクが2倍になる。
試験登録:URL: https://www.crd.york.ac.uk/prospero/; Unique identifier: crd42020192632。

キーワード:事故による転倒;骨;fluoxetine;serotonin uptake inhibitors;脳卒中

引用文献

Risk of Fractures in Stroke Patients Treated With a Selective Serotonin Reuptake Inhibitor: A Systematic Review and Meta-Analysis
Joshua S Jones et al. PMID: 34167325 DOI: 10.1161/STROKEAHA.120.032973
Stroke. 2021 Jun 25;STROKEAHA120032973. doi: 10.1161/STROKEAHA.120.032973. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34167325/

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