風邪症状がないのにシプロヘプタジン?
風邪の症状がない小児に対して、抗アレルギー薬であるシプロヘプタジンが処方されることがあります。シプロヘプタジンは上気道炎(いわゆる風邪、感冒)の他、蕁麻疹や湿疹に使われることもありますが、どうやら皮膚症状もない、風邪症状もない小児患者へ処方されることがあります。
医師に問い合わせても「そのままで」と言われた経験がある方もいるのではないでしょうか。
なぜ風邪や皮膚症状のない小児にシプロヘプタジンが処方されるのでしょうか?この疑問にお答えします。
シプロヘプタジンは片頭痛発作を予防する(適応外処方)
風邪や皮膚症状のない小児にシプロヘプタジン処方の理由、それは
「片頭痛発作の予防」
です。
シプロヘプタジンが片頭痛に効く理由は?
シプロヘプタジンは、抗ヒスタミン作用に加えて抗セロトニン作用を持つ抗アレルギー薬です。
片頭痛の発症において、一説には、何らかの原因によってセロトニンが過剰に放出されると、脳血管が一時的に収縮し反動で拡張することで三叉神経支配下の血管周囲に炎症が起こり、痛みとして伝播するのではないかと考えられています。
つまり、片頭痛発作の一因として、セロトニンの過剰な作用が原因である可能性があります。このセロトニンの過剰作用をシプロヘプタジンが抑えることで、脳血管の収縮を抑え、頭痛発作の頻度を減少させ、結果として片頭痛の予防効果をもたらすと考えられています。
根拠となった論文の抄録
背景:片頭痛は幼少期に再発性頭痛の原因の一つである。シプロヘプタジンは抗ヒスタミン剤としてよく知られているが、小児の片頭痛における本剤の効果を明らかにした研究はほとんどない。
目的:小児片頭痛の予防的治療におけるシプロヘプタジンの有効性を調べる。
方法:メダン(Medan, インドネシア)でランダム化プラセボ対照臨床試験を実施した。国際頭痛学会基準による片頭痛を有する小児 100例を対象とした。被験者を2群に分け、各群にシプロヘプタジン4mgまたはプラセボを12週間投与した。頭痛頻度は1ヵ月あたりの頭痛日数、持続時間は時間単位で測定し、機能障害は小児偏頭痛障害評価(Pediatric Migraine Disability Assessment:PedMID AS)で測定した。有効性は介入前、介入後1、2、3ヵ月後に測定した。
結果:11〜18歳(平均 15.5歳)までの年齢層の患者100例を対象に、頭痛に対してシプロヘプタジンまたはプラセボを投与した。ベースライン時と比較して、片頭痛のPedMIDASグレードでは両群で有意差が認められた(P<0.05)。頭痛の1ヵ月あたりの頻度および持続時間は,シプロヘプタジン投与群(P=0.009,95%CI 0.001~0.030,P=0.029,95%CI 0.690~27.510,RR 4.36)が,プラセボ投与群と比較して有意差が認められた(P>0.05)が、シプロヘプタジンの副作用は73%であった。
結論:シプロヘプタジンは小児片頭痛の代替予防治療として有効であると考えられる。しかし、小児科医はこの薬剤の重大な副作用を考慮すべきである。
シプロヘプタジンの承認内容(2021年1月時点)
効能又は効果
皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎,皮膚そう痒症,薬疹),じん麻疹,血管運動性浮腫,枯草熱,アレルギー性鼻炎,血管運動性鼻炎,感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽
用法及び用量
シプロヘプタジン塩酸塩として,通常成人1回4mgを1日1〜3回経口投与する。
なお,年齢,症状により適宜増減する。
(参考)Augsberger式による小児の 1 回投与量例:下記用量を 1 日 1 ~ 3 回経口投与する。
2 ~ 3 歳:3mL/回
4 ~ 6 歳:4mL/回
7 ~ 9 歳:5mL/回
10~12歳:6.5mL/回
風邪症状がない小児へのシプロヘプタジン処方は、片頭痛の適応外使用かもしれない
引用元
1)Effectiveness of cyproheptadine in the prevention of childhood migraine | Paediatrica Indonesiana. Paediatr Indones. 2009; 49: 286-91.
— 読み進める https://paediatricaindonesiana.org/index.php/paediatrica-indonesiana/article/view/585
2)ペリアクチン錠4mg/ペリアクチン散1%
— 読み進める https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4419005B1045_2_04/
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