これまでは16歳以上の青年・成人におけるデータしかなかった
2021年5月21日時点において、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)のパンデミックは、全世界であらゆる年齢層に1億6500万人以上の感染と340万人以上の死亡をもたらしています(WHOが公表しているデータ)。
健康な成人を対象に、ファイザー・バイオンテック社製のmRNA COVID-19ワクチンであるBNT162b2(30μg)を2回投与したところ、SARS-CoV-2に対して高い中和力と強固な抗原特異的CD4+およびCD8+ T細胞反応が得られました。
16歳以上の被験者を対象に実施中の第1、2、3相ランダム化比較試験の第2〜3相において、BNT162b2は、一過性の軽度から中等度の注射部位の痛み、疲労、頭痛などを特徴とする良好な安全性プロファイルを有し、投与2回目の7日後からCovid-19の予防に95%の効果が認められました(PMID: 33301246)。これらの知見に基づき、BNT162b2は、2020年12月11日に、16歳以上の人のCOVID-19予防を目的として、米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用承認を取得しました(FDA NEWS RELEASE)。2021年5月10日には、本報告書で発表されたデータに基づいて、緊急使用許可が12歳以上の人にも拡大されました(FDA NEWS RELEASE)。SARS-CoV-2に対する他のワクチンも緊急使用が許可されていますが、現在16歳未満への使用が許可されているのはBNT162b2だけです。
今回は、FDAが緊急使用許可を承認する上で根拠となった試験結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
全体として、12~15歳の青年2,260例のうち、1,131例がBNT162b2、1,129例がプラセボを接種されました。他の年齢層でも見られたように、BNT162b2の安全性と副作用のプロファイルは良好で、主に一過性の軽度から中等度の反応性(主に注射部位の痛み 79~86%、疲労感 60~66%、頭痛 55~65%)が見られ、ワクチン関連の重篤な有害事象はなく、全体的に重篤な有害事象は少ないことが明らかとなりました。
主な副作用 | 発生率 |
注射部位の痛み | 79~86% |
疲労感 | 60~66% |
頭痛 | 55~65% |
12~15歳の参加者において、16~25歳に対する投与2回目以降のSARS-CoV-2 50%中和力価の幾何平均比は1.76(95%信頼区間[CI] 1.47~2.10)であり、両辺 95%信頼区間の下限が0.67を超えるという非劣性基準を満たしており、12~15歳のコホートでより大きな効果が得られました。
SARS-CoV-2感染の既往が認められない参加者において、投与2日後に発症したCOVID-19症例は、BNT162b2接種群では認められず、プラセボ接種群では16症例でした。
観察されたワクチンの有効性は100%(95%CI 75.3~100)でした。
コメント
ファイザー・バイオンテック社製のmRNA COVID-19ワクチン(コミナティ)は、成人に対する有効性(SARS-CoV-2感染の予防、COVID-19発症の抑制)の高さが示されています。ただし、本ワクチンの使用は16歳以上で承認されていますので、15歳未満における有効性・安全性のデータはありませんでした。SARS-CoV-2は多様に変異することが明らかとなっており、12〜15歳の青年における感染拡大も報告されています。そのため、ワクチンを接種できる年齢層を広げる必要があります。
さて、本試験結果によれば、SARS-CoV-2感染の既往が認められない参加者において、ワクチン接種2日後に発症したCOVID-19症例は認められませんでした。一方、プラセボ接種群では16例の発症が認められました。単一の試験における有効率は100%ですが、実際は75.3~100%の間になると考えられます。
2021年5月28日、欧州においても12〜15歳へのmRNA COVID-19ワクチン(コミナティ)使用が承認されました(EMA News)。この承認の根拠となった情報は、本試験とは異なるよう。
続報を追っていきたいと思います。
✅まとめ✅ 12~15歳の青年を対象としたBNT162b2ワクチンは、良好な安全性プロファイルを有し、若年成人よりも大きな免疫反応が得られ、COVID-19発症を100%(95%CI 75.3~100)予防した
根拠となった試験の抄録
背景:2021年4月ごろまで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンは、16歳未満の人への緊急使用が認められていなかった。この集団を保護し、対面での学習や社会化を促進し、集団免疫に貢献するためには、安全で効果的なワクチンが必要である。
方法:現在進行中の多国間プラセボ対照観察者盲検試験において、参加者を1対1の割合でランダムに割り付け、BNT162b2(30μg)またはプラセボを21日間隔で2回注射した。
12~15歳の参加者におけるBNT162b2に対する免疫反応が、16~25歳の参加者における免疫反応と比較して非劣性であることを免疫原性の目的とした。
12~15歳のコホートにおける安全性(反応原性および有害事象)および確認されたコロナウイルス感染症2019(Covid-19;発症時期は投与2日目以降)に対する有効性を評価した。
結果:全体として、12~15歳の青年2,260例のうち、1,131例がBNT162b2、1,129例がプラセボを接種された。
他の年齢層でも見られたように、BNT162b2の安全性と副作用のプロファイルは良好で、主に一過性の軽度から中等度の反応性(主に注射部位の痛み 79~86%、疲労感 60~66%、頭痛 55~65%)が見られ、ワクチン関連の重篤な有害事象はなく、全体的に重篤な有害事象も少なかった。
12~15歳の参加者の16~25歳の参加者に対する投与2回目以降のSARS-CoV-2 50%中和力価の幾何平均比は1.76(95%信頼区間[CI] 1.47~2.10)であり、両辺 95%信頼区間の下限が0.67を超えるという非劣性基準を満たしており、12~15歳のコホートでより大きな効果が得られた。
SARS-CoV-2感染の既往が認められない参加者において、投与2日後に発症したCovid-19症例は、BNT162b2接種群では認められず、プラセボ接種群では16症例であった。観察されたワクチンの有効性は100%(95%CI 75.3~100)であった。
結論:12~15歳の青年を対象としたBNT162b2ワクチンは、良好な安全性プロファイルを有し、若年成人よりも大きな免疫反応が得られ、Covid-19に対して高い有効性を示した(資金提供:BioNTech社、Pfizer社。C4591001、ClinicalTrials.gov番号:NCT04368728)。
引用文献
Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents
Robert W Frenck Jr et al. PMID: 34043894 DOI: 10.1056/NEJMoa2107456
N Engl J Med. 2021 May 27. doi: 10.1056/NEJMoa2107456. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34043894/
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