英国の医療従事者に対するCOVID-19ワクチン接種率とBNT162b2 mRNAワクチンの有効性はどのくらいですか?(前向きコホート研究; SIREN研究; Lancet 2021)

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医療従事者におけるBNT162b2 mRNAワクチン(ファイザー・バイオンテッック社製)の有効性はどのくらいか?

WHOが2020年3月11日に「コロナウイルス感染症2019(COVID-19)」の発生をパンデミックと宣言して以来、全世界で200~400万人以上が死亡し、そのうち英国では12万人以上が死亡しています(WHO, 英国)。

BNT162b2 mRNAワクチン(ファイザー・バイオンテック社製)とChAdOx1 nCOV-19アデノウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ社製)は、それぞれ2020年12月2日と2020年12月30日に承認され、承認後7日以内に英国での使用を開始しました。英国政府は、予防接種合同委員会(Joint Committee on Vaccination and Immunisation: JCVI)の助言に基づき、COVID-19による入院、重篤な転帰、予防可能な死亡を迅速に減少させることを目的とした予防接種戦略を選択しました。

ワクチン接種は、まず重篤なCOVID-19リスクが高い人を対象としていました。そして有効性・安全性についての報告が増えています。一方、医療従事者における有効性に関する報告は充分ではありません。

そこで今回は、定期的に無症状検査を受けている英国の医療従事者コホートにおけるBNT162b2 mRNAワクチン(ファイザー・バイオンテック社製)の有効性の中間報告結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

英国の104施設、参加者23,324例が登録されました。年齢中央値は46.1歳(IQR 36.0〜54.1)で、19,692例(84%)が女性でした。解析期間開始時に8,203例(35%)が陽性コホートに、15,121例(65%)が陰性コホートに割り付けられました。

ワクチン接種率は2021年2月5日時点で89%、そのうち94%がBNT162b2ワクチン(ファイザー・バイオンテック社製)を接種していました。

2暦月の追跡期間中、それぞれのコホートにおける新規感染と発生密度は下表の通りでした。

ワクチン未接種コホートワクチン接種コホート
新規感染977件初回接種後21日以上経過:71件
2回目の接種後7日経過:9件
発生密度14件/1万人・日初回接種後21日以上経過:8件/1万人・日
2回目の接種後7日経過:4件/1万人・日

また、それぞれのコホートにおける典型的なCOVID-19症状を有する人と無症状の人の罹患率は下表の通りでした。

ワクチン未接種コホートワクチン接種コホート
典型的なCOVID-19症状を有する人543例(56%)29例(36%)
無症状の人140例(14%)15例(19%)

BNT162b2ワクチンの単回接種では、試験集団において、1回目の接種から21日後に70%(95%CI 55~85)、2回目の接種から7日後に85%(74~96)のワクチン効果が認められました。

コメント

COVID-19罹患について、一般人と比較して、医療従事者の方がリスクが高いことは想像に固くありません。mRNA COVID-19ワクチンの一つであるBNT162b2ワクチン(ファイザー・バイオンテック社製)は、一般人口集団(労働年齢成人、65歳以上の高齢者)における有効性の高さが報告されています。

さて、本試験結果によれば、中間解析ではあるものの、BNT162b2ワクチンにより、非接種者と比較して、新規感染及び発生密度を大きく減少させました。またワクチンの1回目接種でも70%、2回目で85%の効果が認められています。

この効果は、直接比較できませんが、これまでのワクチンよりも効果が高い可能性が示されており、パンデミック終息に期待が持てる結果です。続報に期待。

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✅まとめ✅ BNT162b2ワクチンが、労働年齢の成人における症候性および無症候性の感染を予防できることを示している。このコホートは、流行している優勢な変種がB1.1.7であった時に接種されており、この変種に対して有効性を示している。

根拠となった論文の抄録

背景:BNT162b2 mRNAワクチン(ファイザー・バイオンテック社製)とChAdOx1 nCOV-19アデノウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ社製)は、2020年12月から英国で急速に展開されている。我々は、両ワクチンのワクチンカバー率に関連する要因を明らかにし、定期的に無症状検査を受けている医療従事者のコホートにおいて、BNT162b2 mRNAワクチンのワクチン効果を記録することを目的とした。

方法:SIREN研究は、英国の公的資金で運営されている病院に勤務するスタッフ(18歳以上)を対象とした前向きコホート研究である。参加者は、追跡期間開始時に陽性コホート(抗体陽性または感染歴:過去に抗体検査またはPCR検査が陽性であったことで示される)と陰性コホート(抗体陰性で過去に検査が陽性でなかった)のいずれかに割り当てられた。ベースラインの危険因子は登録時に収集され、症状の状態は2週間ごとに収集され、ワクチン接種の状態はNational Immunisations Management Systemとの連携とアンケートにより収集された。参加者は2週間に1回、無症状のSARS-CoV-2 PCR検査と月に1回の抗体検査を受け、SIREN以外のすべての検査(症状のある検査を含む)を記録した。
本分析のためのデータカットオフは2021年2月5日。追跡期間は2020年12月7日~2021年2月5日
主要アウトカムは、ワクチン接種率分析ではワクチン接種を受けた参加者(ワクチン接種歴のバイナリ変数:2つのワクチン接種データソースのうち少なくとも1つで記録された少なくとも1回のワクチン接種で示される)、ワクチン効果分析ではPCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染であった。ワクチン接種率に関連する因子を特定するために,混合効果ロジスティック回帰分析を行った。ポアソン分布を用いたpiecewise exponential hazard mixed-effects model(shared frailty-type model)を用いてハザード比を算出し、ワクチン未接種者とワクチン接種者の感染までの期間を比較し、PCR陽性の全感染症(無症候性および症候性)に対するBNT162b2ワクチンの影響を推定した。この研究はISRCTNに登録されており、番号はISRCTN11041050で、進行中である。

結果:英国の104施設の参加者23,324例がこの分析のための組み入れ基準を満たし、登録された。年齢中央値は46.1歳(IQR 36.0〜54.1)で、19,692例(84%)が女性であった。
解析期間開始時に8,203例(35%)が陽性コホートに割り付けられ、15,121例(65%)が陰性コホートに割り付けられた。
総追跡期間は2暦月、1,106,905人・日(ワクチン接種者396,318例、非接種者710,587例)。
ワクチン接種率は2021年2月5日時点で89%、そのうち94%がBNT162b2ワクチン(ファイザー・バイオンテック社製)を接種していた。
普及率が有意に低かったのは、過去の感染、性別、年齢、民族、仕事の役割、Index of Multiple Deprivationスコアと関連していた。
追跡期間中、ワクチン未接種のコホートでは新規感染977件があり、発生密度は1万人・日あたり14件であった。ワクチン接種を受けたコホートでは、初回接種後21日以上経過してからの新規感染が71件(発生密度は1万人・日あたり8件)、2回目の接種後7日経過してからの新規感染が9件(発生密度は1万人・日あたり4件)であった。ワクチン未接種のコホートでは、PCR陽性検査日の1~14日前に543例(56%)が典型的なCOVID-19の症状を呈し、140例(14%)が無症状であったのに対し、ワクチン接種を受けたコホートでは、典型的なCOVID-19の症状を呈する者が29例(36%)、無症状者が15例(19%)であった。
BNT162b2ワクチンの単回接種では、試験集団において、1回目の接種から21日後に70%(95%CI 55~85)、2回目の接種から7日後に85%(74~96)のワクチン効果が認められた。

結果の解釈:今回の調査結果は、BNT162b2ワクチンが、労働年齢の成人における症候性および無症候性の感染を予防できることを示している。このコホートは、流行している優勢な変種がB1.1.7であった時に接種されており、この変種に対して有効性を示している。

資金提供:英国公衆衛生局(Public Health England)、英国保健社会福祉省(Department of Health and Social Care)、米国国立衛生研究所(National Institute for Health Research)。

引用文献

COVID-19 vaccine coverage in health-care workers in England and effectiveness of BNT162b2 mRNA vaccine against infection (SIREN): a prospective, multicentre, cohort study
Victoria Jane Hall et al. PMID: 33901423 PMCID: PMC8064668 DOI: 10.1016/S0140-6736(21)00790-X
Lancet. 2021 Apr 23;397(10286):1725-1735. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00790-X. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33901423/

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コメント

  1. […] […]

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