安定冠動脈疾患および急性冠症候群の予防治療に対するインフルエンザワクチン接種の効果はどのくらい?(RCTのメタ解析; Am J Med. 2023)

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インフルエンザワクチン接種による心血管イベントの予防効果は?

インフルエンザは、冠動脈疾患患者に大きな負担を与える可能性があります。したがって、インフルエンザワクチン接種により、冠動脈疾患の発症リスクを低減できる可能性があります。

そこで今回は、急性冠症候群と安定冠動脈疾患患者におけるインフルエンザワクチン接種の有効性を評価したメタ解析の結果をご紹介します。

本試験では、Cochrane Controlled Register of Trials (CENTRAL)、Embase、MEDLINE、www.Clinicaltrials:gov、および世界保健機関国際臨床試験レジストリプラットフォーム(開始時から2021年9月まで)が検索されました。

試験結果から明らかになったことは?

4,187例の患者からなる5件のランダム化試験が含まれ、そのうち2件は急性冠症候群の患者を含み、3件は安定冠動脈疾患と急性冠症候群の患者を含むものでした。

インフルエンザワクチン接種による各アウトカム(相対リスク RR)への影響
全死亡RR 0.56
(95%信頼区間[CI] 0.38〜0.84
心血管死亡RR 0.54
(95%CI 0.37〜0.80
主要急性心血管イベントRR 0.66
(95%CI 0.49〜0.88
急性冠症候群RR 0.63
(95%CI 0.44〜0.89

インフルエンザワクチン接種は、全死亡(相対リスク[RR]0.56、95%信頼区間[CI] 0.38〜0.84)、心血管死亡(RR 0.54、95%CI 0.37〜0.80)、主要急性心血管イベント(RR 0.66、95%CI 0.49〜0.88)および急性冠症候群(RR 0.63、95%CI 0.44〜0.89)のリスクを著しく低減しました。

サブグループ解析では、急性冠症候群ではインフルエンザワクチン接種がこれらのアウトカムに引き続き有効でしたが、冠動脈疾患では統計的有意差を満たしませんでした。さらに、インフルエンザワクチン接種は、血行再建術(RR 0.89、95%CI 0.54〜1.45) 、脳卒中または一過性虚血発作(RR 0.85、95%CI 0.31〜2.32)、心不全入院(RR 0.91、95%CI 0.21〜4.00)リスクを低減しませんでした。

コメント

インフルエンザなどの感染症により、心血管イベントの発生リスクが増加することが報告されています。したがって、インフルエンザワクチンを接種することで、心血管イベントの発生リスクを低減できる可能性がありますが、充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、インフルエンザワクチンは、冠動脈疾患患者、特に急性冠症候群患者において、全死亡、心血管死亡、主要急性心血管イベント、急性冠症候群のリスクを低減する安価で有効な介入である可能性が示されました。

ただし、本メタ解析に組み入れられたのは5件のランダム化試験であり、そのうち2件は急性冠症候群の患者を含み、3件は安定冠動脈疾患と急性冠症候群の患者でした。したがって、出版バイアスなど、バイアスリスクが残存しています。今後の臨床試験の結果次第では、メタ解析の結果が修正される可能性があります。とはいえ、今のところ、冠動脈疾患患者においては、インフルエンザワクチンを接種した方が恩恵が得られるでしょう。

続報に期待。

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✅まとめ✅ インフルエンザワクチンは、冠動脈疾患患者、特に急性冠症候群患者において、全死亡、心血管死亡、主要急性心血管イベント、急性冠症候群のリスクを低減する安価で有効な介入である。

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