2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害剤使用による高カリウム血症リスクはどのくらい?(RCTのメタ解析; Circulation. 2022)

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2型糖尿病患者における高カリウム血症に対するSGLT2阻害剤の影響とは?

高カリウム血症は、不整脈や死亡のリスクを高め、慢性腎臓病や収縮期心不全の患者の臨床転帰を改善するレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用を制限する要因となっています。

ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者や慢性腎臓病患者の心腎イベントのリスクを低減することが報告されています。しかし、高カリウム血症に対する効果については、系統的に評価されていません。

そこで今回は、心血管リスクが高い2型糖尿病患者または慢性腎臓病患者で、血清カリウム値がルーチンに測定されたSGLT2阻害薬のランダム化二重盲検プラセボ対照臨床転帰試験の参加者個人データを用いてメタ解析を実施した試験結果をご紹介します。本試験の主要アウトカムは、中央検査室判定による血清カリウム6.0mmol/L以上と定義される重篤な高カリウム血症までの時間であり、その他のアウトカムには治験責任医師報告の高カリウム血症イベントおよび低カリウム血症(血清カリウム3.5mmol/L以下)が含まれました。

試験結果から明らかになったことは?

4種類のSGLT2阻害剤を評価した参加者 49,875例からなる6件の試験結果が含まれました。このうち、1,754例が重篤な高カリウム血症を発症し、さらに1,119例の医師が報告した高カリウム血症イベントが記録されました。

ハザード比
(95%CI)
重篤な高カリウム血症リスクハザード比 0.84
(95%CI 0.76〜0.93
異質性P=0.71
高カリウム血症リスクハザード比 0.80
(95%CI 0.68〜0.93
異質性P=0.21
低カリウム血症リスクハザード比 1.04
(95%CI 0.94〜1.15
異質性P=0.42

SGLT2阻害剤は、重篤な高カリウム血症のリスクを減少させ(ハザード比 0.84、95%CI 0.76〜0.93)、この効果は研究間で一貫していました(異質性P=0.71)。

治験責任医師が報告した高カリウム血症の発生率もSGLT2阻害剤で低いことが示されました(ハザード比 0.80、95%CI 0.68〜0.93、異質性P=0.21)。重篤な高カリウム血症の減少は、ベースラインの腎機能、心不全の既往、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤、利尿剤、ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤の使用などのさまざまなサブグループにわたって観察されました。

また、SGLT2阻害剤は低カリウム血症のリスクを増加させませんでした(ハザード比 1.04、95%CI 0.94〜1.15、異質性P=0.42)。

コメント

カリウム血症リスクは、糖尿病、特に腎障害のある患者、またはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)またはカリウム保持性利尿薬による治療を受けている患者で増加します。一方、他の利尿薬は低カリウム血症のリスクを高める可能性があります。SGLT2阻害薬は、近位尿細管のSGLT2を阻害することで、 近位尿細管におけるNa+と糖(グルコース)の再吸収を抑制します。このため、ヘンレ系蹄(ヘンレループ)以降のポンプや交換系における電解質の移動に影響を与えると考えられていますが、詳細は明らかとなっていません。

さて、本試験結果によれば、SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者や慢性腎臓病患者において、低カリウム血症のリスクを増加させることなく、重篤な高カリウム血症リスクを減少させました。あくまでも参考情報ではありますが、重篤な高カリウム血症の減少について、様々な要因についてサブグループ解析が実施されており、結果は一貫していました。

尿中のNa+を増加させることで、尿中へのカリウム排泄が抑制される機序も考えられますが、実臨床における結果としては、カリウムに対してニュートラルに作用するようです。

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✅まとめ✅ SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者や慢性腎臓病患者において、低カリウム血症のリスクを増加させることなく、重篤な高カリウム血症リスクを減少させた。

根拠となった試験の抄録

背景:高カリウム血症は、不整脈や死亡のリスクを高め、慢性腎臓病や収縮期心不全の患者の臨床転帰を改善するレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用を制限している。ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者や慢性腎臓病患者の心腎イベントのリスクを低減する。しかし、高カリウム血症に対する効果は、系統的に評価されていない。

方法:心血管リスクが高い2型糖尿病患者または慢性腎臓病患者で、血清カリウム値がルーチンに測定されたSGLT2阻害薬のランダム化二重盲検プラセボ対照臨床転帰試験の参加者個人データを用いてメタ解析を実施した。
主要アウトカムは、中央検査室判定による血清カリウム6.0mmol/L以上と定義される重篤な高カリウム血症までの時間で、その他のアウトカムには治験責任医師報告の高カリウム血症イベントおよび低カリウム血症(血清カリウム3.5mmol/L以下)を含む。
Cox回帰分析により各試験の治療効果を推定し、ハザード比および対応する95%CIをランダム効果モデルでプールして、全体および主要サブグループ間の治療効果を求めた。

結果:4種類のSGLT2阻害剤を評価した参加者 49,875例からなる6件の試験結果が含まれた。このうち、1,754例が重篤な高カリウム血症を発症し、さらに1,119例の医師が報告した高カリウム血症イベントが記録された。SGLT2阻害剤は、重篤な高カリウム血症のリスクを減少させ(ハザード比 0.84、95%CI 0.76〜0.93)、この効果は研究間で一貫していた(異質性P=0.71)。治験責任医師が報告した高カリウム血症の発生率もSGLT2阻害剤で低かった(ハザード比 0.80、95%CI 0.68〜0.93、異質性P=0.21)。重篤な高カリウム血症の減少は、ベースラインの腎機能、心不全の既往、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤、利尿剤、ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤の使用などのさまざまなサブグループにわたって観察された。SGLT2阻害剤は低カリウム血症のリスクを増加させなかった(ハザード比 1.04、95%CI 0.94〜1.15、異質性P=0.42)。

結論:SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者や慢性腎臓病患者において、低カリウム血症のリスクを増加させることなく、重篤な高カリウム血症のリスクを減少させる。

キーワード:慢性、糖尿病、心不全、高カリウム血症、カリウム、腎不全、ナトリウム-グルコース輸送体2阻害薬、2型糖尿病

引用文献

Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors and Risk of Hyperkalemia in People With Type 2 Diabetes: A Meta-Analysis of Individual Participant Data From Randomized, Controlled Trials
Brendon L Neuen e al. PMID: 35394821 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057736
Circulation. 2022 May 10;145(19):1460-1470. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057736. Epub 2022 Apr 8.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35394821/

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