出血ハイリスク患者におけるPCI後のDAPT vs. アスピリンフリー戦略(RCTの事後解析; STOPDAPT-3試験; Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother. 2024)

black magnifying glass 02_循環器系
Photo by Pixabay on Pexels.com
この記事は約7分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

プラスグレルベースDAPTとプラスグレル単独療法どちらが出血イベントが少ないのか?

高出血リスク(High bleeding risk, HBR)と急性冠症候群(acute coronary syndrome, ACS)のサブタイプは経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention, PCI)後の出血と心血管イベントリスクを決定する上で重要です。PCI後は、血栓塞栓症リスク低減のために一定期間の二重抗血小板療法(dual antiplatelet therapy, DAPT)、その後に単独抗血小板療法(single antiplatelet therapy, SAPT)が実施されますが、出血リスクの高い患者集団におけるSAPTの有用性についてはエビデンスが限られています。

そこで今回は、STOPDAPT-3に登録された4,476例のACS患者において、PCI後のアスピリンフリー投与(プラスグレル)とDAPT戦略(プラスグレル+アスピリン)における出血イベント、心血管イベントの発生割合について検証したRCTの事後解析の結果をご紹介します。

本解析では、HBR/非HBR、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)/非ST上昇型ACS(NSTE-ACS)に基づいて事前に規定されたサブグループ解析が行われました。二次エンドポイントは1ヵ月後の心血管死、心筋梗塞、明確なステント血栓症、虚血性脳卒中の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

出血エンドポイントアスピリンフリー群DAPT群ハザード比 HR
(095%CI)
高出血リスク(HBR)集団7.27%7.91%HR 0.91(0.65〜1.28
非HBR集団3.40%3.65%HR 0.93(0.62〜1.39
交互作用P=0.94 vs. HBR
STEMI6.58%6.56%HR 1.00(0.74〜1.35
NSTE-ACS2.94%3.64%HR 0.80(0.49〜1.32
交互作用P=0.45 vs. STEMI

サブグループにかかわらず、出血エンドポイントではDAPTと比較したアスピリンフリーの効果は有意ではありませんでした(HBR[N=1803]:7.27% vs. 7.91%、HR 0.91、95%CI 0.65〜1.28;非HBR[N=2,673]:3.40% vs. 3.65%、HR 0.93、95%CI 0.62〜1.39、交互作用P=0.94、STEMI[N=2,553]:6.58% vs. 6.56%、HR 1.00、95%CI 0.74〜1.35、NSTE-ACS[N=1,923]:2.94% vs. 3.64%、HR 0.80、95%CI 0.49〜1.32、交互作用P=0.45)。

心血管エンドポイントアスピリンフリー群DAPT群ハザード比 HR
(095%CI)
高出血リスク(HBR)集団7.87%5.75%HR 1.39(0.97〜1.99
非HBR集団2.56%2.67%HR 0.96(0.60〜1.53
交互作用P=0.22 vs. HBR
STEMI6.07%5.46%HR 1.11(0.81〜1.54
NSTE-ACS3.03%1.71%HR 1.78(0.97〜3.27
交互作用P=0.18 vs. HBR

心血管エンドポイントについても差がありませんでした(HBR 7.87% vs. 5.75%、HR 1.39、95%CI 0.97〜1.99;非HBR 2.56% vs. 2.67%、HR 0.96、95%CI 0.60〜1.53;交互作用P=0.22;STEMI 6.07% vs. 5.46%、HR 1.11、95%CI 0.81〜1.54;NSTE-ACS 3.03% vs. 1.71%、HR 1.78、95%CI 0.97〜3.27;交互作用P=0.18)。

コメント

出血リスクの高いACS患者集団、ACSサブタイプにおける単独抗血小板療法(SAPT)の有用性については充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験の事後解析の結果、PCIを受けたACS患者において、DAPT戦略と比較したアスピリンフリー戦略は、出血ハイリスク集団やACSサブタイプにかかわらず大出血イベントを減少させることはできませんでした。一方、心血管エンドポイント(1ヵ月後の心血管死、心筋梗塞、明確なステント血栓症、虚血性脳卒中の複)については、統計学的な有意差はないものの、イベントリスクが増加傾向でした。

あくまでも事後解析の結果であることから結論づけることは困難ですが、出血リスクの高いACS患者集団におけるアスピリンフリーSAPT(プラスグレル)の有用性はなく、リスクの方が上回りそうです。

続報に期待。

black male burning smoke with lighter

✅まとめ✅ ランダム化比較試験の事後解析の結果、PCIを受けたACS患者において、DAPT戦略と比較したアスピリンフリー戦略は、出血ハイリスク集団やACSサブタイプにかかわらず大出血イベントを減少させることはできなかった。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:高出血リスク(HBR)と急性冠症候群(ACS)のサブタイプは経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の出血と心血管イベントリスクを決定する上で重要である。

方法:STOPDAPT-3に登録された4,476例のACS患者において、PCI後のアスピリンフリー投与と二重抗血小板療法(DAPT)戦略がランダムに比較され、HBR/非HBR、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)/非ST上昇型ACS(NSTE-ACS)に基づいて事前に規定されたサブグループ解析が行われた。二次エンドポイントは1ヵ月後の心血管死、心筋梗塞、明確なステント血栓症、虚血性脳卒中の複合であった。

結果:サブグループにかかわらず、出血エンドポイントではDAPTと比較したアスピリンフリーの効果は有意ではなかった(HBR[N=1803]:7.27% vs. 7.91%、HR 0.91、95%CI 0.65〜1.28;非HBR[N=2,673]:3.40% vs. 3.65%、HR 0.93、95%CI 0.62〜1.39、交互作用P=0.94、STEMI[N=2,553]:6.58% vs. 6.56%、HR 1.00、95%CI 0.74〜1.35、NSTE-ACS[N=1,923]:2.94% vs. 3.64%、HR 0.80、95%CI 0.49〜1.32、交互作用P=0.45)、心血管エンドポイントについては(HBR 7.87% vs. 5.75%、HR 1.39、95%CI 0.97〜1.99;非HBR 2.56% vs. 2.67%、HR 0.96、95%CI 0.60〜1.53;交互作用P=0.22;STEMI 6.07% vs. 5.46%、HR 1.11、95%CI 0.81〜1.54;NSTE-ACS 3.03% vs. 1.71%、HR 1.78、95%CI 0.97〜3.27;交互作用P=0.18)。

結論:PCIを受けたACS患者において、DAPT戦略と比較したアスピリンフリー戦略は、HBRやACSのサブタイプにかかわらず大出血イベントを減少させることはできなかった。心血管イベントに対するアスピリンフリー戦略のDAPT戦略に対する過剰リスクは、HBR患者とNSTE-ACS患者で認められた。

キーワード:急性冠症候群、抗血小板療法、高出血リスク、非ST上昇型急性冠症候群、ST上昇型心筋梗塞

引用文献

Aspirin-free strategy for percutaneous coronary intervention in acute coronary syndrome based on the subtypes of acute coronary syndrome and high bleeding risk: the STOPDAPT-3 trial
Yuki Obayashi et al. PMID: 38285607 DOI: 10.1093/ehjcvp/pvae009
Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother. 2024 Jan 29:pvae009. doi: 10.1093/ehjcvp/pvae009. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38285607/

コメント

タイトルとURLをコピーしました