― 12,046人のリアルワールド研究(Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother. 2026)
- 臨床疑問
- 研究の背景
- 研究デザイン
- PECO
- 75,565人の新規心不全患者から12,046人がMRAを開始
- どのように比較したのか?
- 試験結果から明らかになったことは?
- 競合リスクはなぜ重要なのか?
- 主要結果をまとめると
- 試験結果から「エプレレノンの方が優れている」と受け取ってよいのか?
- 批判的吟味(研究の限界)
- この研究の強み
- 薬剤師としてどう読むか
- この論文で最も面白いのは「HR 1.29 → 0.99」かもしれない
- まとめ
- ✅まとめ✅ スウェーデンで実施されたレジストリベースのコホート研究の結果、スピロノラクトンと比較して、エプレレノンは全死因死亡率が低く、腎機能低下および軽度の高カリウム血症のリスクも低かったが、バイアスや交絡因子の残存が懸念される。
- 根拠となった試験の抄録
- 引用文献
臨床疑問
新規に心不全と診断されMRAを開始する成人患者において、エプレレノンはスピロノラクトンと比較して、死亡、心不全入院、腎機能低下、高カリウム血症のリスクに違いがあるか?
研究の背景
MRA(mineralocorticoid receptor antagonist:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)は心不全治療における重要な薬剤群ですが、代表的な2剤であるスピロノラクトンとエプレレノンは薬理学的プロファイルが異なります。問題は、その違いが実際の臨床アウトカムの違いにつながるのかということです。
具体的には「エプレレノンとスピロノラクトンで、心腎アウトカムや高K血症リスクに違いがあるのか?」という疑問が生じます。
一方、両薬剤についてそれぞれ心不全患者を対象としたRCTは存在しますが、今回の研究が問題にしているのは、両剤を同じ心不全集団で直接比較した場合の長期アウトカムです。
著者らはこの比較について依然として不確実性があるとして、リアルワールドデータによる新規使用者コホートを構築しました。
研究デザイン
研究デザインはregistry-based observational new-user cohort study(レジストリベースの観察コホート研究)です。
対象地域はスウェーデン・ストックホルム、対象期間は2005~2019年でした。対象となったのは初めて心不全と診断された成人です。その中から、心不全診断後6か月以内にスピロノラクトンあるいはエプレレノンのいずれかを開始した患者を抽出しました。
さらに本研究では、スウェーデンのリンクされたレジストリと個人レベルの検査結果を組み合わせています。
単に処方情報と診断コードだけを見るのではなく、eGFRやカリウムなどの検査値を評価できることは、本研究の大きな特徴です。
PECO
RCTではないため、厳密にはPICOよりPECOとして整理すると分かりやすいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P:対象 | ストックホルムで2005~2019年に初めて心不全と診断され、6か月以内にMRAを開始した成人 |
| E:曝露 | エプレレノン開始 |
| C:比較 | スピロノラクトン開始 |
| O:アウトカム | 全死亡、心不全入院、腎機能低下、高カリウム血症 |
| デザイン | レジストリベース・新規使用者・観察コホート |
75,565人の新規心不全患者から12,046人がMRAを開始
新規発症心不全として同定されたのは75,565人でした。そのうちMRAを開始したのは12,046人です。内訳はスピロノラクトン新規使用者11,039人、エプレレノン新規使用者1,007人でした。
割合を計算すると、MRA使用者の約92%がスピロノラクトン、約8%がエプレレノンです。つまり、かなり大きな群間サイズの違いがあります。
どのように比較したのか?
主要解析にはmultivariable Cox regression(多変量Cox回帰分析)が使用されました。さらに、propensity score matching(傾向スコアマッチング)を含む複数の感度分析も実施されています。
追跡については、薬剤を途中で変更・中止した場合にその時点で曝露を切り替えるのではなく、開始時の薬剤に基づくintention-to-treat principleで解析されました。ただし、これはRCTにおけるITTと同じ意味ではありません。
そもそもエプレレノンかスピロノラクトンかがランダムに割り付けられたわけではないためです。
試験結果から明らかになったことは?

結果① 全死亡:エプレレノンで低かった
まず最も重要な結果が全死亡です。スピロノラクトンと比較したエプレレノンのハザード比(HR)は、HR 0.78(95% CI 0.62–0.98)でした。
つまりエプレレノン使用は、全死亡のハザードが相対的に22%低いことと関連していました。ここで重要なのは「22%死亡を減らした」ではなく、「22%低い死亡ハザードと関連していた」と表現することです。観察研究であるためです。
結果② 腎機能低下もエプレレノンで少なかった
腎アウトカムについても、エプレレノンを支持する関連が認められました。
具体的には、eGFR 50%超の低下について、HR 0.69(95% CI 0.54–0.88)、持続的eGFR<30 mL/min/1.73 m²についてはHR 0.69(95% CI 0.49–0.95)、複合腎アウトカムはHR 0.71(95% CI 0.56–0.90)でした。
つまり、いずれの腎アウトカムでもエプレレノン使用者の方が低いハザードを示しています。
| アウトカム | ハザード比 HR (エプレレノン vs スピロノラクトン) | 95% CI |
|---|---|---|
| 全死亡 | 0.78 | 0.62–0.98 |
| eGFR >50%低下 | 0.69 | 0.54–0.88 |
| 持続的eGFR <30 | 0.69 | 0.49–0.95 |
| 複合腎アウトカム | 0.71 | 0.56–0.90 |
かなり一貫した方向性です。
結果③ 高カリウム血症もエプレレノンで少なかった
MRAを使用するときに薬剤師として特に気になるのがhyperkalaemia(高カリウム血症)です。今回、K ≥5.5 mmol/Lと定義された高カリウム血症について、HR 0.76(95% CI 0.60–0.96)でした。
つまりエプレレノンはスピロノラクトンと比較して、K ≥5.5 mmol/Lとなるハザードが24%低いことと関連しました。
個人レベルの検査データを持つレジストリだからこそ評価できた、興味深い結果です。
ただし、これの結果も「エプレレノンなら高K血症を起こしにくい」という意味ではありません。あくまで相対的に低い発生ハザードとの関連です。
ここまでの結果では「エプレレノンの方が良い」ように見える
ここまでをまとめると、スピロノラクトンと比較して、エプレレノン新規使用者において、死亡リスク ↓、腎機能低下リスク ↓、高K血症リスク ↓であるため「心不全ではエプレレノンを選んだ方がよいのでは?」と考えるでしょう。しかし、ここで次に非常に興味深い結果が出てきます。心不全入院です。
結果④ 心不全入院はむしろエプレレノンで多い?
通常の原因別ハザード解析では、エプレレノンの心不全入院はHR 1.29(95% CI 1.11–1.51)でした。つまり一見すると「エプレレノンでは心不全入院のハザードが29%高い」という結果になります。
これは先ほどまでの結果と逆方向です。
ところが、ここには重要な問題があります。死亡という競合イベント(competing event)です。
「死亡」をどう扱うかで心不全入院の結果が変わった
患者が死亡すると、その後に心不全で入院することはできません。つまり、死亡と心不全入院には競合関係があります。特に今回、エプレレノン群では全死亡が少ないという関連が観察されています。
すると、エプレレノン群ではより多くの患者が生存し続けるため「心不全で入院する機会そのものが長く残る」可能性があります。
そこで研究者らは、死亡をcompeting risk(競合リスク)として扱った解析も行いました。すると心不全入院のHR 0.99(95% CI 0.87–1.12)まで減弱しました。これは非常に重要な結果です。
| 心不全入院の解析 | HR | 95% CI |
|---|---|---|
| 未調整の心不全入院 | 1.29 | 1.11–1.51 |
| 死亡を競合リスクとして考慮した後の心不全入院 | 0.99 | 0.87–1.12 |
つまり、「エプレレノンでは心不全入院が29%増える」と単純に結論するのは適切ではありません。
競合リスクはなぜ重要なのか?
例えば極端な仮想例を考えてみます。治療Aでは100人中50人が早期死亡し、生存した50人のうち5人が心不全入院。治療Bではほとんど死亡せず、100人全員が長く生存し、そのうち10人が心不全入院したとします。
単純に入院数だけ見れば、治療A:5人、治療B:10人なので、一見するとBの方が悪そうな結果です。しかし、治療Aでは多くの患者が入院する前に死亡しているだけかもしれません。
今回の研究でも、エプレレノンとスピロノラクトンの死亡率が異なるため、心不全入院を評価するときには死亡という競合イベントを無視できません。
今回、HR 1.29 → 0.99まで推定値が変化したことは、まさにその重要性を示しています。
主要結果をまとめると
スピロノラクトンを比較対象としたエプレレノンの関連は、
| Outcome | HR (95% CI) | 観察された関連 |
|---|---|---|
| 全死亡 | 0.78 (0.62–0.98) | 低い |
| eGFR >50%低下 | 0.69 (0.54–0.88) | 低い |
| 持続的eGFR <30 | 0.69 (0.49–0.95) | 低い |
| 複合腎アウトカム | 0.71 (0.56–0.90) | 低い |
| K ≥5.5 mmol/L | 0.76 (0.60–0.96) | 低い |
| HF入院:cause-specific | 1.29 (1.11–1.51) | 高い |
| HF入院:死亡を競合リスクとして考慮 | 0.99 (0.87–1.12) | 明確な差なし |
感度分析には傾向スコアマッチングも含まれ、著者らは結果がおおむね堅牢だったと報告しています。
試験結果から「エプレレノンの方が優れている」と受け取ってよいのか?
この研究だけからは、そこまで言えません。ここが今回の論文の最重要ポイントです。著者ら自身も結論をThese observational findings warrant confirmation in randomized comparisons(これらの観察研究の結果は、無作為化比較試験による検証が必要である。)としています。
つまり、エプレレノン使用者で死亡・腎機能低下・高K血症が少ないという関連が観察されたところまでは事実です。しかし、エプレレノンを選択したことが、その差を引き起こしたことは証明されていません。
批判的吟味(研究の限界)
① 最大の限界:RCTではない
今回の研究は、観察的コホート研究です。患者はエプレレノンとスピロノラクトンへランダムに割り付けられていません。医師が「この患者にはエプレレノン」、「この患者にはスピロノラクトン」と実臨床で判断した結果を比較しています。
したがって、両薬剤を選択された患者背景が異なる可能性があります。
② 適応による交絡/チャネリングバイアス
これは今回かなり重要です。薬剤選択には年齢、心不全の重症度、LVEF、心筋梗塞歴、腎機能、血清K値、血圧、併存疾患、他の心不全治療薬、医師の処方習慣などが影響する可能性があります。
研究者らは多変量Cox回帰や傾向スコアマッチングを用いて調整しています。しかし、測定されていない交絡因子まで調整することはできません。
したがって残存交絡は残ります。
③ 11,039人 vs 1,007人と群サイズが大きく異なる
MRA使用者12,046人のうち、スピロノラクトン新規使用者11,039人、エプレレノン新規使用者1,007人です。エプレレノン使用者は全体の1割未満です。
これは単なる統計学的な問題だけでなく、エプレレノンが選択された患者には何らかの特徴があった可能性を考えさせます。
傾向スコアマッチングはその差を軽減する方法ですが、観察されていない因子までは均衡化できません。
④ 「ITT principle」でもRCTにはならない
抄録には「追跡調査は、意図した治療(ITT)の原則に基づいて解析された」とあります。しかし、この言葉には注意が必要です。
今回の意味は、基本的には開始時のMRAによって追跡を継続する解析戦略です。RCTにおけるITTの強みは、ランダム化によって得られた群間比較可能性を維持することにあります。
今回はそもそも薬剤選択がランダム化されていません。したがって「ITTだからRCTと同程度に交絡が制御されている」という意味ではありません。
⑤ 心不全入院は競合リスクの扱いで結論が変わる
これは限界であると同時に、この研究の面白いところです。原因別ハザードでは、HR 1.29でした。ところが死亡を競合リスクとして扱うと、HR 0.99です。したがって「エプレレノンは心不全入院を増やした」という単純な解釈は避けるべきです。
むしろこの結果は、死亡率の異なる2群で非致死的アウトカムを比較する際に競合リスクを考慮する重要性を示しています。
⑥ 絶対リスクが抄録から分からない
今回の抄録では主にHRが報告されています。例えば、全死亡 HR 0.78ですが、100人あたり何人死亡したのか、1000人年あたり何件だったのか、絶対リスク差はどのくらいか、NNTに相当する差はどの程度か、これらについては抄録から判断できません。
したがって、22%という相対差だけから臨床的重要性の大きさを判断することはできません。
⑦ 心不全の表現型について抄録だけでは十分分からない
抄録ではadults with a first HF diagnosis(初めて心不全と診断された成人)とされています。しかし提示された抄録だけからは、心不全の駆出率別分類(HFrEF、HFmrEF、HFpEF)、左室駆出率(LVEF)、NYHA分類などの詳細な分布を確認できません。MRAのエビデンスや適応を考えるうえで、心不全表現型は非常に重要です。
したがって「すべての心不全患者でエプレレノンがスピロノラクトンより良い」と一般化することはできません。
⑧ 2005~2019年という治療時代
対象期間は2005~2019年です。現在の心不全診療では、SGLT2阻害薬などの普及によって背景治療が大きく変化しています。
したがって、2026年現在のGDMT下でまったく同じ関連が再現されるかは別問題です。
⑨ スウェーデン・ストックホルムのリアルワールドデータ
スウェーデンの高品質なリンクされたレジストリと検査データを利用できることは大きな強みですが、その一方で、日本の患者集団・処方慣行・医療制度への外的妥当性には注意が必要です。
特にエプレレノンとスピロノラクトンの使い分けは国や時代によって異なるため、薬剤選択に伴うchanneling bias*の構造も日本と同じとは限りません。
*チャネリング・バイアス:患者の状態や重症度により特定の薬を処方あるいは選択する際、比較する群間で患者の背景やリスクに偏りが生じる現象。もともと病状が重い患者や高齢者に、比較的新しい薬や特定の薬が選ばれやすい傾向がある場合に発生することが報告されている。適応による交絡(Confounding by indication)とも呼称される。
この研究の強み
限界だけでなく、観察研究としてかなり面白い強みもあります。まず、新規使用者デザインです。既存使用者を混在させず、MRA開始時点から比較することで、prevalent-user bias(一般的なユーザーバイアス)を抑える設計になっています。
次に連続的な個人レベルの実験データを利用できることです。これによって単なる診断コードだけではなく、eGFR 50%以上の低下、持続的なeGFR<30%、K ≥5.5 mmol/Lといった、薬剤師・臨床医にとって意味のある客観的アウトカムを評価できています。
さらに、多変量調整に加えて、傾向スコアマッチングを含む複数の感度分析を行い、結果のを検討しています。そして死亡とHF入院の関係について競合リスクを検討した点も重要です。
個人的に最も重要であると考えられるのは、著者らがimmortal time bias(不死時間バイアス)を明示的に認識し、それを回避するための設計を取り入れている点です。
そもそも不死時間バイアスが問題になるのがいつか?を考察することが重要であると考えます。
今回の研究では「初回心不全診断後6か月以内にスピロノラクトンまたはエプレレノンを開始した患者」を対象としています。もし心不全診断日をtime zero(追跡開始日)としてしまうと、MRAを開始するまでの期間、患者は当然ながら生存していなければなりません。例えば、心不全診断から4か月後にエプレレノン開始した場合、エプレレノン群に分類されるためには最初の4か月を必ず生存している必要があります。この4か月をエプレレノン曝露期間として死亡解析に含めれば、死亡できない「不死時間」が生じ、死亡率が人工的に低く見える可能性があります。
今回の研究において、著者らは6か月の登録期間(enrolment window)を初回HF診断日から設定したうえで、index date(基準日) = first MRA dispensing date(最初のMRA調剤日)としています。つまり、追跡開始をHF診断日ではなく、実際にスピロノラクトンまたはエプレレノンを開始した日に置いています。さらに、除外基準として「「登録後6か月以内の死亡は、不死の時間バイアスを回避するための除外基準とされた」と、著者自身が不死時間バイアスを避ける目的を明記しています。加えて、追跡期間が0以下の患者も除外しています。
さらに本研究では、実薬対照、新規使用者デザインです。過去12か月以内にMRA処方があった患者を除外し、初回MRA調剤日から追跡しています。
ただし、不死時間を対処したことと交絡を対処したことは別問題です。実際、ベースラインを見ると、エプレレノン群はスピロノラクトン群よりかなり若く、年齢中央値は70歳 vs 77歳、男性割合も78% vs 56%で、未調整時点では大きな群間差があります。例えば年齢の標準化平均差(SMD)は0.524、性別は0.499でした。多変量Cox回帰や傾向スコアマッチングを行っても、エプレレノンを選択された患者とスピロノラクトンを選択された患者の測定不能な違いまでは除去できません。
薬剤師としてどう読むか
この研究から「エプレレノンの方が安全で予後も良いので、スピロノラクトンから変更すべき」とまでは言えません。一方で、死亡、腎機能低下、高カリウム血症という複数のアウトカムが一貫してエプレレノンを支持する方向だったことは、無視できない仮説生成的所見です。
特に薬剤師として興味深いのは、K ≥5.5 mmol/L:HR 0.76(95% CI 0.60–0.96)でしょう。
MRA開始・継続時には、血清K、eGFR、腎機能の経時変化、RAS阻害薬などの併用薬を確認します。
今回の結果は、薬剤選択そのものがこうした安全性アウトカムに影響する可能性を示唆しています。
ただし、「エプレレノンなら腎機能・Kモニタリングを緩めてよい」ことを意味するデータではありません。
この論文で最も面白いのは「HR 1.29 → 0.99」かもしれない
個人的にこの研究をEBM教材として読むなら、全死亡HR 0.78以上に面白いのが、競合リスクの調整前後の心不全入院ハザードの変化です。
死亡率が異なる治療群で「入院だけ」を単純比較すると、直感に反する結果が生じ得るという好例になっています。
心不全研究では、死亡と心不全入院がしばしば複合アウトカムとして評価される理由を考えるうえでも興味深い結果です。
まとめ
Wärnbergらは、スウェーデンのストックホルムで2005~2019年に新規心不全と診断された75,565人から、診断後6か月以内にMRAを開始した12,046人を対象として、エプレレノンとスピロノラクトンの長期アウトカムを比較しました。スピロノラクトン11,039人に対し、エプレレノンは1,007人でした。
エプレレノン使用はスピロノラクトンと比較して、全死亡:HR 0.78(95% CI 0.62–0.98)、eGFR >50%低下:HR 0.69(0.54–0.88)、持続的eGFR <30:HR 0.69(0.49–0.95)、複合腎アウトカム:HR 0.71(0.56–0.90)、K ≥5.5 mmol/L:HR 0.76(0.60–0.96)と、いずれも低いハザードと関連していました。
一方、HF入院は原因別ハザードではHR 1.29(1.11–1.51)と高かったものの、死亡を競合リスクとして扱うとHR 0.99(0.87–1.12)まで減弱しました。
したがって、この研究を一文でまとめるなら「新規心不全患者を対象としたスウェーデンの大規模観察コホートでは、エプレレノン使用はスピロノラクトン使用と比較して、全死亡、腎機能低下、K≥5.5 mmol/Lの高カリウム血症が少ないことと関連した。ただし薬剤選択はランダム化されておらず、残余交絡やチャネリングバイアスを排除できないため、エプレレノンの因果的優越性を示す結果ではなく、直接比較RCTによる確認が必要である」という評価が、今回の抄録に最も忠実でしょう。
そして、この研究では「関連」を「リスク減少」に読み替えないこと、そしてHF入院について1.29だけでなく死亡を競合リスクとした0.99まで見ることが、批判的吟味の核心になります。
症例数が大きく異なるため、本試験結果を鵜呑みにすることはできません。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ スウェーデンで実施されたレジストリベースのコホート研究の結果、スピロノラクトンと比較して、エプレレノンは全死因死亡率が低く、腎機能低下および軽度の高カリウム血症のリスクも低かったが、バイアスや交絡因子の残存が懸念される。
根拠となった試験の抄録
目的: エプレレノンとスピロノラクトンは薬理学的特性が異なるが、それが心不全(HF)の臨床転帰に意味のある違いをもたらすかどうかは不明である。本研究では、レジストリに基づく新規使用者コホートにおいて、連続的な臨床検査データを用いて両薬剤を比較した。
方法と結果: この観察コホート研究では、ストックホルム郡で初めてHFと診断された成人(2005~2019年)のうち、6か月以内にスピロノラクトンまたはエプレレノンを処方された患者を、個人レベルの検査結果を含むスウェーデンの登録簿から特定した。追跡調査は、intention-to-treat原則に基づいて分析した。アウトカムには、全死因死亡、HF入院、腎機能低下、高カリウム血症が含まれた。主な分析には、多変量Cox回帰を使用した。傾向スコアマッチングを含むいくつかの感度分析を実施した。新規発症HF患者75,565人のうち、12,046人がミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を開始した(スピロノラクトン11,039人、エプレレノン1,007人)。エプレレノンは、全死因死亡率の低下(ハザード比0.78、95%信頼区間0.62-0.98)、推定糸球体濾過量(eGFR)の50%以上の低下リスクの低下(0.69、0.54-0.88)、eGFRが30 mL/min/1.73 m2未満で持続するリスクの低下(0.69、0.49-0.95)、複合腎アウトカム(0.71、0.56-0.90)、および5.5 mmol/L以上の高カリウム血症(0.76、0.60-0.96)と関連していた。HF入院の原因別ハザードはエプレレノンの方が高かった(1.29、1.11-1.51)が、死亡を競合リスクとして扱うと0.99(0.87-1.12)に低下した。感度分析においても、結果は一貫していた。
結論: スピロノラクトンと比較して、エプレレノンは全死因死亡率が低く、腎機能低下および軽度の高カリウム血症のリスクも低かった。これらの観察結果は、無作為化比較試験による確認が必要である。
キーワード: うっ血性心不全;入院;高カリウム血症;腎臓;ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬;死亡率
引用文献
Eplerenone vs. spironolactone in heart failure: long-term cardiorenal and mortality outcomes in a registry-based cohort
Karl Wärnberg et al. PMID: 42720118 DOI: 10.1093/ehjcvp/pvag064
Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother. 2026 Sep 10:pvag064. doi: 10.1093/ehjcvp/pvag064.Online ahead of print.
― 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42720118/


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