CGRP関連薬は片頭痛予防に有効か?

01_中枢神経系
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― 6薬剤を検討したネットワークメタ解析(Cephalalgia. 2023)

臨床疑問

成人の片頭痛予防において、CGRP経路を標的とするモノクローナル抗体および経口ゲパントは、プラセボと比較して月間片頭痛日数やレスポンダー率を改善するのか?

また、各CGRP関連薬の効果を間接的に比較できるのか?

研究の背景

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)は、片頭痛の病態に関与する神経ペプチドです。CGRPまたはその受容体を標的とする片頭痛予防薬には、大きく分けて次の2種類があります。

モノクローナル抗体

  • エレヌマブ
  • エプチネズマブ
  • フレマネズマブ
  • ガルカネズマブ

低分子CGRP受容体拮抗薬(ゲパント)

  • アトゲパント
  • リメゲパント

これらの薬剤は、投与経路や投与間隔が異なります。

薬剤分類主な投与経路
アトゲパントゲパント経口
リメゲパントゲパント経口
エレヌマブモノクローナル抗体皮下注射
フレマネズマブモノクローナル抗体皮下注射
ガルカネズマブモノクローナル抗体皮下注射
エプチネズマブモノクローナル抗体静脈内投与

各薬剤についてプラセボ対照試験は行われていましたが、薬剤同士の直接比較試験はほとんどありませんでした。

本研究では、利用可能な第Ⅲ相ランダム化比較試験を系統的に収集し、ネットワークメタ解析によってCGRP関連薬の有効性を評価しました。

PICO

項目内容
P:患者ICHD-IIIまたはICHD-IIIβに基づいて反復性または慢性片頭痛と診断された18歳以上の患者
I:介入アトゲパント、リメゲパント、エレヌマブ、エプチネズマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ
C:比較プラセボおよびネットワークを介した各介入の間接比較
O:主要評価項目月間片頭痛日数、50%以上レスポンダー率
O:副次評価項目月間頭痛日数、急性期治療薬使用日数、75%・100%レスポンダー率

研究デザイン

本研究は、第Ⅲ相ランダム化比較試験に限定した系統的レビューおよびネットワークメタ解析です。

  • 検索データベース:MEDLINE via PubMed、EMBASE、Cochrane CENTRAL
  • 検索期間:各データベースの開始時点~2022年2月11日
  • 更新検索:2022年5月
  • 採用研究:19試験
  • 総参加者数:14,584人
    • 反復性片頭痛のみ:11試験
    • 慢性片頭痛のみ:4試験
    • 両者を含む:4試験
  • 対象研究:二重盲検、第Ⅲ相ランダム化比較試験
  • ガイドライン:PRISMA
  • 事前登録:PROSPERO CRD42022310579

同じ薬剤でも投与量ごとに別の介入として解析されました。

重要な点として、本研究では投与経路に応じて以下の3つのネットワークが別々に解析されています。

  • 経口薬
  • 皮下注射薬
  • 静脈内投与薬

したがって、すべての薬剤を一つのネットワーク内で相互に順位付けした解析ではありません。

試験結果から明らかになったことは?

月間片頭痛日数

薬剤・投与量プラセボとの差95%信頼区間結果の解釈
フレマネズマブ675 mg−2.36日−2.87 ~ −1.84有意に減少
ガルカネズマブ120 mg−2.28日−2.82 ~ −1.74有意に減少
フレマネズマブ225 mg−2.06日−2.57 ~ −1.54有意に減少
ガルカネズマブ240 mg−2.02日−2.63 ~ −1.41有意に減少
エレヌマブ140 mg−1.78日−2.41 ~ −1.14有意に減少
エレヌマブ70 mg−1.27日−1.81 ~ −0.74有意に減少
エプチネズマブ30 mg−1.25日−2.71 ~ 0.21有意差なし
アトゲパント120 mg−1.40日−2.22 ~ −0.58有意に減少
アトゲパント60 mg−1.35日−1.85 ~ −0.85有意に減少
リメゲパント75 mg−0.80日−1.56 ~ −0.04有意に減少

月間片頭痛日数は、エプチネズマブ30 mgを除くすべての評価対象で、プラセボより有意に減少しました。

ただし、この表の数値をそのまま横並びにして「最も効果の高い薬剤」を決めることはできません。投与経路ごとに別々のネットワークが構築されているうえ、対象患者や試験期間なども異なるためです。

50%以上レスポンダー率

投与経路プラセボとの比較
皮下注射薬すべての評価薬・用量で有意に高い
静脈内投与薬すべての評価用量で有意に高い
経口薬点推定値はプラセボより高かったが、統計学的有意差なし

経口薬でも50%以上レスポンダー率はプラセボより高い方向でしたが、統計学的有意差には達しませんでした。

アトゲパント120 mgではOR 3.41と比較的大きな点推定値でしたが、95%信頼区間は1.00~11.68と非常に広く、精度の低い推定でした。著者らは、経口薬の対象者数が少ないことが影響した可能性を指摘しています。

この結果から「経口薬は50%以上レスポンダーを増やさない」または「注射薬より無効」と結論することはできません。

その他の評価項目

評価項目結果
月間頭痛日数データのあるすべての薬剤でプラセボより有意に減少
リメゲパントの月間頭痛日数データなし
急性期治療薬使用日数データのあるすべての薬剤で有意に減少
エプチネズマブの急性期治療薬使用日数データなし
75%レスポンダー率多くの薬剤・用量でプラセボより有意に高い
100%レスポンダー率データのある複数の薬剤でプラセボより高いが、一部は有意差なし

安全性について

本論文は主に有効性を評価したネットワークメタ解析です。安全性の評価は、同じ研究プロジェクトの別論文として報告されています。

したがって、本論文の結果だけから各薬剤の忍容性や安全性を比較し、「最も安全な薬剤」を決めることはできません。

試験結果をどう解釈するか?

本研究から比較的確実にいえるのは、CGRP関連薬が多くの有効性評価項目において、プラセボより良好な結果を示したということです。

一方、薬剤間の優劣については慎重な解釈が必要です。

本研究のネットワーク図には、投与経路ごとに分かれた3つのネットワークが存在しました。したがって、例えば皮下注射のガルカネズマブと経口のリメゲパントを、同じ解析内で直接または間接比較したわけではありません。

「プラセボとの差が大きい」という理由だけで、異なるネットワークに属する薬剤の優越性を断定することはできません。

批判的吟味:研究の限界

1.薬剤同士の直接比較試験がない

採用された試験は、基本的に各CGRP関連薬とプラセボを比較した試験です。

薬剤同士のhead-to-head試験がないため、薬剤間の比較はプラセボを介した間接的な推定に依存します。間接比較では、各試験の患者背景や実施条件が十分に似ているという推移性の仮定が必要です。

2.投与経路をまたぐ比較ができない

本研究では、経口、皮下、静脈内の3つの独立したネットワークが構築されました。

ネットワークが接続されていない以上、すべての薬剤を一つの順位に並べることはできません。異なる投与経路の効果量を単純に横並びにするのは不適切です。

3.反復性片頭痛と慢性片頭痛が混在している

19試験の内訳は、反復性片頭痛11試験、慢性片頭痛4試験、両方を含む試験4件でした。

慢性片頭痛患者はベースラインの片頭痛日数が多いため、同じ相対的な改善でも絶対減少日数が大きくなる可能性があります。患者集団の違いが、薬剤間の見かけ上の効果差に影響し得ます。

4.試験期間と評価項目が統一されていない

ランダム化期間には3カ月と6カ月の試験があり、主要評価項目も月間片頭痛日数と月間頭痛日数などで異なりました。

この臨床的・方法論的異質性により、試験間の交換可能性が低下する可能性があります。

5.経口薬のデータが少ない

経口薬、とりわけ一部の用量では利用可能な試験や参加者数が限られていました。

50%以上レスポンダー率が有意でなかったのは、効果が存在しないからではなく、信頼区間が広く検出力が不足していた可能性があります。

「有意差なし」を「無効」や「注射薬より劣る」と読み替えるべきではありません。

6.公表済み英語論文のみが対象

本研究は英語で公表されたデータに限定され、未公表試験、他言語論文、事後解析、オープンラベル追跡研究は含まれていません。

出版バイアスや言語バイアスを完全には排除できません。

7.白人および反復性片頭痛患者が多い

採用試験では白人が過剰に代表され、反復性片頭痛試験が多く含まれていました。

人種・民族構成が異なる日本の患者や、難治性の慢性片頭痛患者へ同じ効果量を適用できるとは限りません。

8.試験参加者の背景が薬剤ごとに異なる

フレマネズマブおよびガルカネズマブの試験では、他薬剤の試験より参加者の年齢が高く、片頭痛罹病期間も長い傾向がありました。

こうした試験間差が、薬剤の効果差として現れた可能性があります。メタ回帰では年齢に有意な影響が認められており、未調整の効果量比較には注意が必要です。

9.長期的な有効性を評価できない

対象となったのは主に3~6カ月の第Ⅲ相試験です。

長期的な効果の持続、治療中止後の経過、実臨床での継続率については判断できません。

10.安全性や費用を含む総合評価ではない

本論文は有効性を中心とした解析です。治療選択では、以下も重要です。

  • 有害事象
  • 投与経路
  • 投与頻度
  • 患者の希望
  • 妊娠希望
  • アドヒアランス
  • 薬剤費・保険適用
  • 既治療薬への反応

本研究だけから「最も優れたCGRP関連薬」を選ぶことはできません。

11.検索は2022年5月までである

本研究は2023年に公表されましたが、文献検索は2022年5月で終了しています。その後に発表された直接比較試験や新たな第Ⅲ相試験は含まれていません。

したがって、現在のすべてのエビデンスを反映した比較ではありません。

実臨床への応用

本研究は、CGRP関連薬という治療クラス全体について、片頭痛予防効果を支持しています。

ただし、薬剤選択を単純な効果量の順位だけで行うことはできません。臨床では以下を考慮する必要があります。

検討項目臨床上の意味
反復性・慢性片頭痛対象患者に近い試験結果を優先する
経口・皮下・静脈内患者の希望や通院負担が異なる
投与頻度毎日、隔日、毎月、3カ月ごとなどの違いがある
既治療歴予防薬未使用者と難治例では効果が異なる可能性
安全性本論文とは別に評価する必要がある
費用・アクセス国や保険制度によって大きく異なる

まとめ

19件の第Ⅲ相ランダム化比較試験、合計14,584人を統合したネットワークメタ解析では、次の結果が得られました。

  • エプチネズマブ30 mgを除き、すべての介入で月間片頭痛日数がプラセボより有意に減少
  • 50%以上レスポンダー率はすべての薬剤でプラセボより高い方向
  • 皮下注射薬と静脈内投与薬では50%以上レスポンダー率が有意
  • 経口薬の50%以上レスポンダー率は統計学的有意差なし
  • データのある薬剤では、月間頭痛日数と急性期治療薬使用日数も減少

CGRP関連薬は、治療クラス全体として片頭痛予防に有効であることが支持されました。

一方、直接比較試験がなく、投与経路ごとにネットワークが分かれ、反復性・慢性片頭痛の患者集団も混在しています。そのため、本研究から各薬剤の厳密な優劣や「最も有効な薬剤」を決めることはできません。

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

woman taking her medicine

✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたシステマティックレビュー・メタ解析の結果、カルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的とする薬剤は、プラセボと比較して片頭痛の予防に効果的であることが結果から示された。

根拠となった試験の抄録

背景: カルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的としたいくつかの新規治療法が片頭痛治療薬として開発されている。我々は、ネットワークメタアナリシスを用いて、アトゲパント、リメゲパント、エレヌマブ、エプティネズマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブなどのこれらの薬剤の片頭痛予防効果を評価した。

方法: PubMed経由のMEDLINE、EMBASE、Cochrane Centralなどのデータベースを系統的にレビューし、対象となるすべての第3相ランダム化比較試験を含めた。

結果: 19件の研究(参加者数n = 14,584人)が対象となった。研究には、発作性片頭痛(n = 11)と慢性片頭痛(n = 4)、またはその両方(n = 4)が含まれていた。エプチンズマブ30mgを除くすべての介入は、プラセボと比較して月平均片頭痛日数を有意に減少させた。すべての薬剤はプラセボよりも50%以上の奏効率が高く、皮下投与または静脈内投与の場合、結果は統計的に有意であったが、経口投与の場合は有意ではなかった。すべての薬剤は月平均頭痛日数を有意に減少させたが、リメゲパントについてはこの結果に関するデータはなく、また、月平均急性期治療薬日数も有意に減少させたが、エプチンズマブについてはデータがない。

結論: カルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的とする薬剤は、プラセボと比較して片頭痛の予防に効果的であることが結果から示されました。単一研究の限界、発作性片頭痛と慢性片頭痛などの異なる集団、および直接比較試験の欠如を考慮すると、すべての新規治療法は月平均の片頭痛および頭痛日数を減少させ、プラセボよりも高い50%、75%、および100%の奏効率を示しました。

試験登録: PROSPERO登録 CRD42022310579

キーワード: CGRP;ゲパント;メタアナリシス;片頭痛;予防;ランダム化比較試験

引用文献

Evaluating the efficacy of CGRP mAbs and gepants for the preventive treatment of migraine: A systematic review and network meta-analysis of phase 3 randomised controlled trials
Faraidoon Haghdoost et al. PMID: 36855951 DOI: 10.1177/03331024231159366
Cephalalgia. 2023 Apr;43(4):3331024231159366. doi: 10.1177/03331024231159366.
― 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36855951/

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