急性冠症候群を有する患者と有さない患者におけるチカグレロル単剤療法への漸減 vs. 12ヵ月間の二重抗血小板療法(RCTのメタ解析; Sidney-4; Lancet. 2024)

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12ヵ月DAPTと短期DAPT後のチカグレロル単独療法、どちらが優れているのか?

急性冠症候群(ACS)患者における冠動脈ステント留置後12ヵ月間の二重抗血小板療法(DAPT)は標準治療です。しかし、DAPTによる大出血リスクの増加は患者転帰の増悪と関連していることから、DAPT期間を含めたリスクベネフィット評価が求められます。

そこで今回は、冠動脈薬剤溶出ステント留置後、DAPTからチカグレロル単剤療法への漸減と12ヵ月のDAPT継続を比較したエビデンスを要約することを目的に実施された個々の患者レベルのメタ解析の結果をご紹介します。

冠動脈薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者において、短期DAPT(2週間~3ヵ月間)後のチカグレロル単剤療法と12ヵ月間のDAPTの有効性と安全性の比較を評価するために、一元的にエンドポイントが判定されたランダム化比較試験のシステマティックレビューとIPD(individual patient data)レベルのメタ解析が行われました。

冠動脈血行再建術後のP2Y12阻害薬単剤療法とDAPTを比較したランダム化比較試験は、データベース開設から2024年5月20日まで、Ovid MEDLINE、Embase、2つのウェブサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org)で検索されました。

長期経口抗凝固薬の適応がある患者を含む試験は除外されました。バイアスのリスクは、改訂版Cochrane risk-of-biasツールにより評価されました。適格な試験の治験責任医師は、匿名化された電子データセットによりIPDを提供しました。

3つのランク付けされた主要評価項目は、心血管系または脳血管系の主要有害事象(MACCE;全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)であり、per-protocol集団において非劣性が検証され、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)3または5出血および全死亡はintention-to-treat集団において優越性が検証されました。すべてのアウトカムはKaplan-Meier推定値で報告されていました。

非劣性は0.025の片側αが採用され、予め規定された非劣性マージン1.15(ハザード比[HR]スケール)により検定された後、次いで0.05の両側αでランク付けされた優越性が検定されました。

試験結果から明らかになったことは?

合計8,361件の引用がスクリーニングされ、そのうち610件がタイトルと抄録のスクリーニングで適格とされました。このうち、チカグレロル単剤療法またはDAPTに患者をランダムに割り付けた6件の試験が同定されました。SAPTへの漸減は介入後中央値78日(IQR 31~92)、治療期間中央値は334日(329~365)でした。

チカグレロル単剤DAPTハザード比 HR
(95%CI)
MACCE
全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合
297人
(Kaplan-Meier推定 2.8%)
332人
(Kaplan-Meier推定 3.2%)
HR 0.91
0.78~1.07
非劣性p=0.0039
τ2<0.0001

23,256人のper-protocol集団のうち、MACCEはチカグレロル単剤で297人(Kaplan-Meier推定 2.8%)、DAPTで332人(Kaplan-Meier推定 3.2%)に発生しました(HR 0.91、95%CI 0.78~1.07、非劣性p=0.0039、τ2<0.0001)。

チカグレロル単剤DAPTハザード比 HR
(95%CI)
ARC3または5の出血Kaplan-Meier推定 0.9%2.1%HR 0.43
0.34~0.54
優越性p<0.0001
τ2=0.079

Intention-to-treat集団の患者24,407例において、BARC3または5の出血(Kaplan-Meier推定 0.9% vs. 2.1%、HR 0.43、95%CI 0.34~0.54、優越性p<0.0001、τ2=0.079)および全死亡(Kaplan-Meier推定 0.9% vs. 1.2%、0.76、0.59~0.98 、優越性p=0.034、τ2<0.0001)のリスクはチカグレロル単剤療法の方が低いことが示されました。

試験の逐次解析では、全集団およびACS集団において、MACCEについては非劣性、出血については優越性を示す強いエビデンスが示された(z曲線は、モニタリング境界または必要な情報サイズを超えたが、無益性の境界を超えたり、ヌルに近づいたりすることはなかった)。治療効果は、MACCE(交互作用p=0.041)および全死亡(交互作用p=0.050)では性差により異質であり、チカグレロル単剤療法が女性において有益である可能性を示し、出血(交互作用p=0.022)では臨床像により異質であり、チカグレロル単剤療法がACSにおいて有益である可能性を示した。

コメント

急性冠症候群(ACS)患者における冠動脈ステント留置後の二重抗血小板療法(DAPT)は標準治療ですが、その実施期間については一定の見解が得られていません。

さて、ランダム化比較試験を対象としたシステマティックレビューと個人データレベルのメタ解析の結果、12ヵ月のDAPTと比較して、チカグレロル単剤療法への漸減は、特にACS患者において、虚血リスクを増加させず、大出血のリスクを減少させるという強固なエビデンスが示されました。

個人レベルのメタ解析が実施されており、エビデンスの質はより高いと考えられます。これまでの臨床試験の結果とも相違ないことから、より堅牢な解析結果であるといえます。

患者背景により異なりますが、特に出血リスクの高いACS患者においては、短期間DAPT後にチカグレロル単独療法へ切り替えた方が良いのかもしれません。ただし、クロピドグレルなど他のP2Y12阻害薬でも同様の結果が得られるのかについては不明です。どのような患者で、高コストとなるチカグレロルを優先した方が良いのか、更なる検証が求められます。

なお、本試験で採用されているτ2(tau、タウ)は、異質性の評価に用いられる4つの統計量のうちの1つです。I2統計量が汎用されていますが、サンプルサイズに影響を受けることが知られています。τ2はサンプルサイズの影響を受けにくいことから、研究間のサンプルサイズの異なりが大きい場合により適していると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたシステマティックレビューと個人データレベルのメタ解析の結果、12ヵ月のDAPTと比較して、チカグレロル単剤療法への漸減は、特にACS患者において、虚血リスクを増加させず、大出血のリスクを減少させるという強固なエビデンスが示された。

根拠となった試験の抄録

背景:急性冠症候群(ACS)患者における冠動脈ステント留置後12ヵ月間の二重抗血小板療法(DAPT)は標準治療である。この個々の患者レベルのメタ解析の目的は、冠動脈薬剤溶出ステント留置後、DAPTからチカグレロル単剤療法への漸減と12ヵ月のDAPT継続を比較したエビデンスを要約することである。

方法:冠動脈薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者において、短期DAPT(2週間~3ヵ月間)後のチカグレロル単剤療法と12ヵ月間のDAPTの有効性と安全性の比較を評価するために、一元的にエンドポイントが判定されたランダム化比較試験のシステマティックレビューとIPD(individual patient data)レベルのメタ解析を行った。冠動脈血行再建術後のP2Y12阻害薬単剤療法とDAPTを比較したランダム化比較試験は、データベース開設から2024年5月20日まで、Ovid MEDLINE、Embase、2つのウェブサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org)で検索した。長期経口抗凝固薬の適応がある患者を含む試験は除外した。バイアスのリスクは、改訂版Cochrane risk-of-biasツールを用いて評価した。適格な試験の治験責任医師は、匿名化された電子データセットによりIPDを提供した。
3つのランク付けされた主要評価項目は、心血管系または脳血管系の主要有害事象(MACCE;全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)であり、per-protocol集団において非劣性が検証され、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)3または5出血および全死亡はintention-to-treat集団において優越性が検証された。すべてのアウトカムはKaplan-Meier推定値で報告されている。
非劣性は0.025の片側αを用い、予め規定された非劣性マージン1.15(ハザード比[HR]スケール)を用いて検定され、次いで0.05の両側αでランク付けされた優越性が検定された。
本試験はPROSPERO(CRD42024506083)に登録されている。

結果:合計8,361件の引用がスクリーニングされ、そのうち610件がタイトルと抄録のスクリーニングで適格とされた。このうち、チカグレロル単剤療法またはDAPTに患者をランダムに割り付けた6件の試験が同定された。SAPTへの漸減は介入後中央値78日(IQR 31~92)、治療期間中央値は334日(329~365)であった。23,256人のper-protocol集団のうち、MACCEはチカグレロル単剤で297人(Kaplan-Meier推定 2.8%)、DAPTで332人(Kaplan-Meier推定 3.2%)に発生した(HR 0.91、95%CI 0.78~1.07、非劣性p=0.0039、τ2<0.0001)。Intention-to-treat集団の患者24,407例において、BARC3または5の出血(Kaplan-Meier推定 0.9% vs. 2.1%、HR 0.43、95%CI 0.34~0.54、優越性p<0.0001、τ2=0.079)および全死亡(Kaplan-Meier推定 0.9% vs. 1.2%、0.76、0.59~0.98 、優越性p=0.034、τ2<0.0001)のリスクはチカグレロル単剤療法の方が低かった。試験の逐次解析では、全集団およびACS集団において、MACCEについては非劣性、出血については優越性を示す強いエビデンスが示された(z曲線は、モニタリング境界または必要な情報サイズを超えたが、無益性の境界を超えたり、ヌルに近づいたりすることはなかった)。治療効果は、MACCE(交互作用p=0.041)および全死亡(交互作用p=0.050)では性差により異質であり、チカグレロル単剤療法が女性において有益である可能性を示し、出血(交互作用p=0.022)では臨床像により異質であり、チカグレロル単剤療法がACSにおいて有益である可能性を示した。

解釈:われわれの研究では、12ヵ月のDAPTと比較して、チカグレロル単剤療法への漸減は、特にACS患者において、虚血リスクを増加させず、大出血のリスクを減少させるという強固なエビデンスを見いだした。また、チカグレロル単剤療法は、特に女性において死亡率の改善にもつながる可能性があり、さらなる検討が必要である。

資金提供:Cardiocentro Ticino Institute、Ente Ospedaliero Cantonale

引用文献

De-escalation to ticagrelor monotherapy versus 12 months of dual antiplatelet therapy in patients with and without acute coronary syndromes: a systematic review and individual patient-level meta-analysis of randomised trials
Marco Valgimigli et al. PMID: 39226909 DOI: 10.1016/S0140-6736(24)01616-7
Lancet. 2024 Sep 7;404(10456):937-948. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01616-7. Epub 2024 Aug 31.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39226909/

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