非代償性心不全の入院患者におけるサクビトリル/バルサルタンの有効性はどのくらい?(RCT2件のプール解析; J Am Coll Cardiol. 2024)

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左室駆出率によりサクビトリル/バルサルタンの有用性は異なるのか?

左室駆出率(EF)の異なる心不全(HF)入院患者におけるサクビトリル/バルサルタンの有効性と安全性についてはこれまでに報告されていません。

そこで今回は、EF40%以下の心不全患者(PIONEER-HF[Comparison of Sacubitril/Valsartan Versus Enalapril on Effect of NT-proBNP in Patients Stabilized From an Acute Heart Failure Episode]試験)および40%超の心不全患者(PARAGLIDE-HF[Prospective comparison of ARNI with ARB Given following stabiLization In DEcompensated HFpEF]試験)におけるサクビトリル/バルサルタンのランダム化比較試験のデータをプールし、最近の心不全増悪(WHF)における治療効果を検討した研究結果をご紹介します。

PIONEER-HF試験とPARAGLIDE-HF試験は、サクビトリル/バルサルタンと対照療法(それぞれエナラプリルまたはバルサルタン)の二重盲検ランダム化比較試験でした。PIONEER-HF試験では全参加者が、PARAGLIDE-HF試験では69.5%の参加者が、安定化後のHFによる入院中に登録されました。PARAGLIDE-HF試験の残りの参加者はWHFイベント後30日以内に登録されました。

両試験の主要エンドポイントはN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のベースラインから4週目と8週目までの時間平均比例変化でした。判定された臨床的エンドポイントは、試験で調整した上で追跡終了時まで解析されました。

試験結果から明らかになったことは?

プール解析には1,347例(PIONEER-HFから881例、PARAGLIDE-HFから466例)が含まれました。ベースラインの特徴は、年齢中央値66歳、女性36%、黒人31%、de novo HF34%、EF中央値30%でした。

サクビトリル/バルサルタン vs. 対照療法
NT-proBNPの減少n=1,130
変化率=0.76(95%CI 0.69〜0.83
P<0.0001
心血管疾患による死亡または心不全による入院HR 0.70(95%CI 0.54〜0.91
P=0.0077
症候性低血圧リスク比 1.35(95%CI 1.05〜1.72

NT-proBNPの減少はサクビトリル/バルサルタンの方が対照療法より24%大きいことが示されました(n=1,130、変化率=0.76、95%CI 0.69〜0.83、P<0.0001)。また、心血管疾患による死亡またはHFによる入院はサクビトリル/バルサルタン群で対照群に比して30%減少しました(HR 0.70、95%CI 0.54〜0.91;P=0.0077)。

上記の効果はEF≦60%の範囲で一貫していました。

サクビトリル/バルサルタンは症候性低血圧を増加させました(リスク比 1.35、95%CI 1.05〜1.72)。

コメント

サクビトリル/バルサルタンは高血圧や心不全に用いられています。しかし、左室駆出率(EF)の異なる心不全(HF)入院患者における有効性・安全性については充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験2件のプール解析の結果、WHF後に安定化した患者において、サクビトリル/バルサルタンは対照療法と比較して、特にEF≦60%の範囲において血漿中NT-proBNPをより低下させ、臨床転帰(心血管疾患による死亡または心不全による入院)を改善することが示されました。

ただし、本試験にはいくつかの限界があります。まず、主要評価項目は代替のアウトカムである血漿中NT-proBNPであり、心血管疾患による死亡または心不全による入院については複合かつ副次評価項目です。次に対症療法として何が使用されたのか不透明です。結果の解釈に注意を要します。さらにプール解析の対象となったのは2件のランダム化比較試験であり、より客観的かつ定量的な結果を得られていません。

追試が求められます。続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験2件のプール解析の結果、WHF後に安定化した患者において、サクビトリル/バルサルタンは対照療法と比較して、特にEF≦60%の範囲において血漿中NT-proBNPをより低下させ、臨床転帰(心血管疾患による死亡または心不全による入院)を改善した。

根拠となった試験の抄録

背景:左室駆出率(EF)の異なる心不全(HF)入院患者におけるサクビトリル/バルサルタンの有効性と安全性についてはこれまで報告されていない。

目的:EF40%以下の心不全患者(PIONEER-HF[Comparison of Sacubitril/Valsartan Versus Enalapril on Effect of NT-proBNP in Patients Stabilized From an Acute Heart Failure Episode]試験)および40%超の心不全患者(PARAGLIDE-HF[Prospective comparison of ARNI with ARB Given following stabiLization In DEcompensated HFpEF]試験)におけるサクビトリル/バルサルタンのランダム化比較試験のデータをプールし、最近の心不全増悪(WHF)における治療効果を検討した。

方法:PIONEER-HF試験とPARAGLIDE-HF試験は、サクビトリル/バルサルタンと対照療法(それぞれエナラプリルまたはバルサルタン)の二重盲検ランダム化比較試験であった。PIONEER-HF試験では全参加者が、PARAGLIDE-HF試験では69.5%の参加者が、安定化後のHFによる入院中に登録された。PARAGLIDE-HF試験の残りの参加者はWHFイベント後30日以内に登録された。
両試験の主要エンドポイントはN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のベースラインから4週目と8週目までの時間平均比例変化であった。判定された臨床的エンドポイントは、試験で調整した上で追跡終了時まで解析された。

結果:プール解析には1,347例(PIONEER-HFから881例、PARAGLIDE-HFから466例)が含まれた。ベースラインの特徴は、年齢中央値66歳、女性36%、黒人31%、de novo HF34%、EF中央値30%であった。NT-proBNPの減少はサクビトリル/バルサルタンの方が対照療法より24%大きかった(n=1,130、変化率=0.76、95%CI 0.69〜0.83、P<0.0001)。心血管疾患による死亡またはHFによる入院はサクビトリル/バルサルタン群で対照群に比して30%減少した(HR 0.70、95%CI 0.54〜0.91;P=0.0077)。この効果はEF≦60%の範囲で一貫していた。サクビトリル/バルサルタンは症候性低血圧を増加させた(リスク比 1.35、95%CI 1.05〜1.72)。

結論:WHF後に安定化した患者において、サクビトリル/バルサルタンは対照療法と比較して、特にEF≦60%の範囲において血漿中NT-proBNPをより低下させ、臨床転帰を改善した。(PIONEER-HF:NCT02554890、PARAGLIDE-HF:NCT03988634)。

キーワード:駆出率、心不全、サクビトリル/バルサルタン

引用文献

Sacubitril/Valsartan in Patients Hospitalized With Decompensated Heart Failure
David A Morrow et al. PMID: 38508844 DOI: 10.1016/j.jacc.2024.01.027
J Am Coll Cardiol. 2024 Mar 26;83(12):1123-1132. doi: 10.1016/j.jacc.2024.01.027.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38508844/

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