チルゼパチドの心血管イベントの発生リスクはどのくらい?(事前設定メタ解析; Nat Med. 2022)

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チルゼパチドの心血管安全性は?

Tirzepatide(チルゼパチド)は新規の週1回投与のデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬であり、2型糖尿病(T2D)および肥満症の治療薬として開発が進んでおり、日本では「2型糖尿病」の適応で2022年9月26日に承認されました。米国や欧州でも2022年に承認されていますが、欧米では日本とは異なり糖尿病治療薬の承認に際しては、心血管安全性評価が求められています。この安全性評価データとしては、ランダム化比較試験での実施の他、ランダム化比較試験のメタ解析でも可能であることが示されています。

ランダム化比較試験であるSURPASS-CVOT(NCT04255433)による検証が進んでいますが、終了予定日は2024年10月17日です。

そこで今回は、チルゼパチドの心血管アウトカムとの関連について評価した事前規定の心血管メタ解析の結果をご紹介します。

本試験では、チルゼパチドのT2D臨床開発プログラムであるSURPASSから、少なくとも26週間の期間を有する7件のランダム化比較試験すべてが対象となりました。

本メタ解析の主要目的は、4つの主要有害心血管イベント(MACE-4;心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院)が確認されるまでの期間を、プールされたチルゼパチド群と対照群間で比較することでした。

層別化Cox比例ハザードモデルは、治療を固定効果とし、試験レベルの心血管リスクを層別化因子として、チルルゼパチド群と対照群を比較するハザード比(HR)と信頼区間(CI)の推定に用いられました。

試験結果から明らかになったことは?

チルゼパチドによる治療を受けた4,887例と対照2,328例のデータが解析されました。全体として142例の参加者(心血管系リスクの高い試験から109例、心血管系リスクの低い6件の試験から33例)が少なくとも1回のMACE-4イベントを経験しました。

ハザード比 HR
(95%CI)
MACE-4
心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院
HR 0.80(0.57〜1.11
 心血管死HR 0.90(0.50〜1.61
 心筋梗塞HR 0.76(0.45〜1.28
 脳卒中HR 0.81(0.39〜1.68
 不安定狭心症による入院HR 0.46(0.15〜1.41
全死亡HR 0.80(0.51〜1.25

チルゼパチドと対照を比較したHRは、MACE-4で0.80(95%CI 0.57〜1.11)、心血管死で0.90(95%CI 0.50〜1.61)、全死亡で0.80(95%CI 0.51〜1.25)でした。

いずれのサブグループでも効果修飾のエビデンスは観察されませんでしたが、心血管系リスクの高い参加者ではそのエビデンスが堅牢でした。

コメント

2型糖尿病や肥満症は心血管リスクが高いことから、治療薬がリスクを増加させないか検証が求められます。

さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果によれば、チルゼパチドは2型糖尿病患者における主要な心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院)のリスクを対照群に対して増加させませんでした。ただし、組み入れられた研究数が少なく、異質性の評価がされておらず、区間推定値が広いことなどの理由から追試が求められます。

ランダム化比較試験であるSURPASS-CVOT(NCT04255433)による検証が進んでいることから、結果の公表が待たれます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果によれば、チルゼパチドは2型糖尿病患者における主要な心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院)のリスクを対照群に対して増加させなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:Tirzepatide(チルゼパチド)は新規の週1回投与のデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬であり、2型糖尿病(T2D)および肥満症の治療薬として開発中である。心血管アウトカムとの関連については評価が必要である。この事前に特定した心血管メタアナリシスでは、チルゼパチドのT2D臨床開発プログラムであるSURPASSから、少なくとも26週間の期間を有する7件のランダム化比較試験すべてを対象とした。本メタ解析の主要目的は、4つの主要有害心血管イベント(MACE-4;心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院)が確認されるまでの期間を、プールされたチルゼパチド群と対照群間で比較することであった。

方法:層別化Cox比例ハザードモデルは、治療を固定効果とし、試験レベルの心血管リスクを層別化因子として、チルルゼパチド群と対照群を比較するハザード比(HR)と信頼区間(CI)の推定に用いられた。

結果:チルゼパチドによる治療を受けた4,887例と対照2,328例のデータが解析された。全体として142例の参加者(心血管系リスクの高い試験から109例、心血管系リスクの低い6件の試験から33例)が少なくとも1回のMACE-4イベントを経験した。チルゼパチドと対照を比較したHRは、MACE-4で0.80(95%CI 0.57〜1.11)、心血管死で0.90(95%CI 0.50〜1.61)、全死亡で0.80(95%CI 0.51〜1.25)であった。どのサブグループでも効果修飾のエビデンスは観察されなかったが、心血管系リスクの高い参加者ではそのエビデンスが強かった。

結論:チルゼパチドはT2D患者における主要な心血管イベントのリスクを対照群に対して増加させなかった。

試験登録:ClinicalTrials.gov NCT03131687、NCT03954834、NCT03987919、NCT03882970、NCT03730662、NCT04039503、NCT03861052

引用文献

Tirzepatide cardiovascular event risk assessment: a pre-specified meta-analysis
Naveed Sattar et al. PMID: 35210595 PMCID: PMC8938269 DOI: 10.1038/s41591-022-01707-4
Nat Med. 2022 Mar;28(3):591-598. doi: 10.1038/s41591-022-01707-4. Epub 2022 Feb 24.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35210595/

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