抑うつ症状を呈する心不全患者のQOLに対する心理療法 vs. 抗うつ薬(RCT; JAMA Netw Open. 2024)

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心理療法と抗うつ薬、どちらが優れているのか?

心不全(HF)は米国では600万人以上、世界では6400万人以上の成人が罹患しており、うつ病の有病率は50%であるとされています。患者や臨床家は、心不全のうつ病に対してどのような介入がより効果的であるかについて、充分に情報を得られていません。

そこで今回は、行動活性化心理療法(behavioral activation psychotherapy, BA)と抗うつ薬による薬物管理(antidepressant medication management, MEDS)の効果を、HFとうつ病を有する入院患者の患者中心の転帰において比較することを目的に実施された実用的ランダム化比較有効性試験の結果をご紹介します。

本試験では、多様な人口統計学的、社会経済的、文化的、地理的背景を有する200万人以上の人々にサービスを提供する非営利学術医療システムにおいて、1年間の追跡調査を含め、2018年から2022年にかけて実施されました。参加者はHFとうつ病と診断された入院患者と外来患者で、データはintention-to-treatとして解析されました(データ解析期間:2022年〜2023年)。

BAはエビデンスに基づいたうつ病のマニュアル化された治療法であり、患者が選択した”個人的な楽しい活動”への参加を促進します。MEDSは、エビデンスに基づく共同ケアモデルであり、ケアマネジャーが患者、精神科医、プライマリケア医との調整を行い、投薬のみを行いました。

主要アウトカムは6ヵ月後の抑うつ症状の重症度であり、Patient Health Questionnaire 9-Item(PHQ-9)を用いて測定されました。副次的アウトカムは、Short-Form 12-Item version 2(SF-12)を用いて測定した身体的・精神的健康関連QOL(HRQOL)、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaireを用いて測定した心不全特異的HRQOL、Caregiver Burden Questionnaire for Heart Failureを用いて測定した介護者の負担、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時点の救急外来受診、再入院、入院日数、死亡率でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計416例の患者(平均年齢 60.71[SD 15.61]歳;男性243例[58.41%])が登録され、208例がBA群に、208例がMEDS群にランダムに割り付けられました。ベースライン時のPHQ-9スコアの平均値は、BA群で14.54(SD 3.45)、MEDS群で14.31(SD 3.60)でした。

BA群およびMEDS群ともに、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月の時点で抑うつ症状がほぼ50%減少しました(例えば、12ヵ月時の平均スコア: BA 7.62(SD 5.73);P<0.001;MEDS 7.98(SD 6.06);P<0.001;群間P=0.55)。

PHQ-9スコアの平均値行動活性化心理療法群
(BA群)
抗うつ薬による薬物管理群
(MEDS群)
ベースライン時14.54(SD 3.45)14.31(SD 3.60)
6ヵ月時点7.53(SD 5.74)
P=0.88
8.09(SD 6.06)

6ヵ月時点の主要アウトカムであるPHQ-9では、BA群とMEDS群で統計学的有意差はみられませんでした(平均スコア 7.53[SD 5.74] vs. 8.09[SD 6.06];P=0.88)。

BA群では、MEDS群に比べて6ヵ月後の身体的HRQOLがわずかに改善し(SF-12身体的スコアの平均:38.82[SD 11.09] vs. 37.12[SD 10.99];P=0.04)、ED受診が少なく(3ヵ月:38%、95%CI 14〜55減少;P=0.005;6ヵ月:30%、95%CI 14〜40減少;P=0.008;12ヵ月:27%、95%CI 15〜38減少;P=0.001)、入院日数が減少しました(3ヵ月:17%、95%CI 8〜25減少;P=0.002;6ヵ月:19%、95%CI 13〜25減少;P=0.005;12ヵ月:36%、95%CI 32〜40減少;P=0.001)。

コメント

心不全患者では抑うつ症状を呈することが知られています。そのため、どちらも薬物療法が実施されますが、薬物相互作用の観点から使用薬剤を減らすことに関心が寄せられています。また、行動活性化心理療法と抗うつ薬との有効性比較は充分に行われていません。

さて、ランダム化比較試験の結果、うつ病を有する心不全患者を対象とした行動活性化心理療法(BA)と抗うつ薬による薬物管理の有効性比較試験において、両治療法は抑うつ症状を50%近く有意に減少させました。しかし、治療間に統計学的有意差はみられませんでした。BA投与群では身体的HRQOLの改善、救急外来受診の減少、入院日数の減少がみられました。

対象患者が異なるため結果の外挿に注意を要しますが、低侵襲経椎間孔腰椎体間固定術(MIS TLIF)を受けた患者におけるPHQ-9のMCIDは、3.0(2.0〜4.8)であることが報告されています。したがって、ベースラインからのPHQ-9変化は、実臨床においても意義のある変化であると考えられます。

本研究は12ヵ月までの介入結果であることから、より長期間にわたる検証が求められます。また薬物療法に伴う有害事象についてもモニタリングが求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ うつ病を有するHF患者を対象とした行動活性化心理療法(BA)と抗うつ薬による薬物管理の有効性比較試験において、両治療法は抑うつ症状を50%近く有意に減少させたが、治療間に統計学的有意差はみられなかった。BA投与群では身体的HRQOLの改善、救急外来受診の減少、入院日数の減少がみられた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:心不全(HF)は米国では600万人以上、世界では6400万人以上の成人が罹患しており、うつ病の有病率は50%である。患者や臨床家は、心不全のうつ病に対してどのような介入がより効果的であるかについての情報を欠いている。

目的:行動活性化心理療法(behavioral activation psychotherapy, BA)と抗うつ薬による薬物管理(antidepressant medication management, MEDS)の効果を、HFとうつ病を有する入院患者の患者中心の転帰において比較すること。

試験デザイン、設定、参加者: この実用的ランダム化比較有効性試験は、多様な人口統計学的、社会経済的、文化的、地理的背景を有する200万人以上の人々にサービスを提供する非営利学術医療システムにおいて、1年間の追跡調査を含め、2018年から2022年にかけて実施された。参加者はHFとうつ病と診断された入院患者と外来患者で、データはintention-to-treatとして解析された。データは2022年から2023年にかけて解析された。

介入:BAはエビデンスに基づいたうつ病のマニュアル化された治療法であり、患者が選択した個人的な楽しい活動への参加を促進する。MEDSは、エビデンスに基づく共同ケアモデルであり、ケアマネジャーが患者、精神科医、プライマリケア医との調整を行い、投薬のみを行う。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは6ヵ月後の抑うつ症状の重症度であり、Patient Health Questionnaire 9-Item(PHQ-9)を用いて測定された。副次的アウトカムは、Short-Form 12-Item version 2(SF-12)を用いて測定した身体的・精神的健康関連QOL(HRQOL)、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaireを用いて測定した心不全特異的HRQOL、Caregiver Burden Questionnaire for Heart Failureを用いて測定した介護者の負担、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時点の救急外来受診、再入院、入院日数、死亡率であった。

結果:合計416例の患者(平均年齢 60.71[SD 15.61]歳;男性243例[58.41%])が登録され、208例がBA群に、208例がMEDS群にランダムに割り付けられた。ベースライン時のPHQ-9スコアの平均値は、BA群で14.54(SD 3.45)、MEDS群で14.31(SD 3.60)であった;BA群およびMEDS群ともに、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月の時点で抑うつ症状がほぼ50%減少した(例えば、12ヵ月時の平均スコア: BA 7.62(SD 5.73);P<0.001;MEDS 7.98(SD 6.06);P<0.001;群間P=0.55)。6ヵ月時点の主要アウトカムであるPHQ-9では、BA群とMEDS群で統計学的有意差はみられなかった(平均スコア 7.53[SD 5.74] vs. 8.09[SD 6.06];P=0.88)。BA群では、MEDS群に比べて6ヵ月後の身体的HRQOLがわずかに改善し(SF-12身体的スコアの平均:38.82[SD 11.09] vs. 37.12[SD 10.99];P=0.04)、ED受診が少なかった(3ヵ月:38%、95%CI 14〜55減少;P=0.005;6ヵ月:30%、95%CI 14〜40減少;P=0.008;12ヵ月:27%、95%CI 15〜38減少;P=0.001)、入院日数が減少した(3ヵ月:17%、95%CI 8〜25減少;P=0.002;6ヵ月:19%、95%CI 13〜25減少;P=0.005;12ヵ月:36%、95%CI 32〜40減少;P=0.001)。

結論と関連性:うつ病を有するHF患者を対象としたBAとMEDSの有効性比較試験において、両治療法は抑うつ症状を50%近く有意に減少させたが、治療間に統計学的有意差はみられなかった。BA投与群では身体的HRQOLの改善、ED受診の減少、入院日数の減少がみられた。この試験結果は、HF患者がうつ病を改善するためにBAかMEDSのどちらかを選択できる可能性を示唆した。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT03688100

引用文献

Comparative Effectiveness of Psychotherapy vs Antidepressants for Depression in Heart Failure: A Randomized Clinical Trial
Waguih William IsHak et al. PMID: 38231511 PMCID: PMC10794938 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.52094
JAMA Netw Open. 2024 Jan 2;7(1):e2352094. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.52094.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38231511/

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