潜在性心房細動におけるアピキサバンの脳卒中予防効果はどのくらい?(DB-RCT; ARTESIA試験; N Engl J Med. 2023)

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潜在性心房細動患者におけるアピキサバン vs. 低用量アスピリン

潜在性心房細動は持続時間が短く無症状であり、通常はペースメーカーや除細動器による長期の連続的なモニターによってのみ発見できます。潜在性心房細動は、潜在性心房細動を有さない場合と比較して、脳卒中のリスクを2.5倍増加させますが、経口抗凝固療法による治療の有用性は不明です。さらに抗血小板薬と抗凝固薬との比較検証は充分に行われていません。

そこで今回は、6分〜24時間持続する潜在性心房細動患者を対象にアピキサバンとアスピリンとの比較を行ったランダム化比較試験の結果をご紹介します。

試験参加者は二重盲検二重ダミーデザインで、アピキサバン5mgを1日2回(適応があれば2.5mgを1日2回)投与する群とアスピリン81mgを1日1回投与する群にランダムに割り付けられました。24時間以上持続する潜在性心房細動または臨床的心房細動が発現した場合は試験薬を中止し、抗凝固療法が開始されました。

本試験における有効性の主要評価項目は脳卒中または全身性塞栓症であり、intention-to-treat集団(ランダム割付けを受けた全患者)で評価され、安全性の主要評価項目の大出血はon-treatment集団(ランダム割付けを受け、割り付けられた試験薬を少なくとも1回投与された全患者で、何らかの理由で試験薬が永久的に中止されてから5日後に追跡調査が打ち切られた)で評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

平均年齢76.8±SD7.6歳、平均CHA2DS2-VAScスコア3.9±1.1(スコア範囲:0~9、スコアが高いほど脳卒中のリスクが高い)の4,012例が組み入れられ、患者の36.1%が女性でした。

アピキサバン群アスピリン群ハザード比
(95%CI)
脳卒中または全身性塞栓症55例
(0.78%/患者・年)
86例
(1.24%/患者・年)
0.63
0.45~0.88
P=0.007
大出血1.71%/患者・年0.94%/患者・年1.80
1.26~2.57
P=0.001

平均追跡期間3.5±1.8年後、脳卒中または全身性塞栓症はアピキサバン群55例(0.78%/患者・年)、アスピリン群86例(1.24%/患者・年)に発生しました(ハザード比 0.63、95%信頼区間[CI] 0.45~0.88;P=0.007)。

治療中の集団では、大出血の発生率はアピキサバン群で1.71%/患者・年、アスピリン群で0.94%/患者・年でした(ハザード比 1.80、95%CI 1.26~2.57;P=0.001)。致死的出血はアピキサバン群で5例、アスピリン群で8例にみられました。

コメント

潜在性心房細動患者では、一般集団と比較して脳卒中の発生リスクが高いことから、予防的治療が求められます。しかし、抗血小板薬と抗凝固薬、どちらが優れているのかについては明らかになっていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、潜在性心房細動患者において、アピキサバンはアスピリンよりも脳卒中や全身性塞栓症のリスクが低いことが示されました。一方、大出血のリスクはアピキサバンの方が高いことが示されました。

大出血のリスクが一時的なものなのか、それとも出血に関連する死亡や入院リスクなどのより重篤な患者転帰にまで影響を及ぼすのか、更なる検証が求められます。また出血や大出血の定義も試験間で異なることから、プロトコルの確認が重要となります。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、潜在性心房細動患者において、アピキサバンはアスピリンよりも脳卒中や全身性塞栓症のリスクが低かったが、大出血のリスクは高かった。

根拠となった試験の抄録

背景:潜在性心房細動は持続時間が短く無症状であり、通常はペースメーカーや除細動器による長期連続監視によってのみ発見できる。潜在性心房細動は脳卒中のリスクを2.5倍増加させるが、経口抗凝固療法による治療の有用性は不明である。

方法:6分から24時間持続する潜在性心房細動患者を対象とした試験を行った。患者は二重盲検二重ダミーデザインで、アピキサバン5mgを1日2回(適応があれば2.5mgを1日2回)投与する群とアスピリン81mgを1日1回投与する群にランダムに割り付けられた。24時間以上持続する潜在性心房細動または臨床的心房細動が発現した場合は試験薬を中止し、抗凝固療法を開始した。
有効性の主要評価項目である脳卒中または全身性塞栓症はintention-to-treat集団(ランダム割付けを受けた全患者)で評価され、安全性の主要評価項目である大出血はon-treatment集団(ランダム割付けを受け、割り付けられた試験薬を少なくとも1回投与された全患者で、何らかの理由で試験薬が永久的に中止されてから5日後に追跡調査が打ち切られた)で評価された。

結果:平均年齢76.8±SD7.6歳、平均CHA2DS2-VAScスコア3.9±1.1(スコア範囲:0~9、スコアが高いほど脳卒中のリスクが高い)の4,012例が組み入れられ、患者の36.1%が女性であった。平均追跡期間3.5±1.8年後、脳卒中または全身性塞栓症はアピキサバン群55例(0.78%/患者・年)、アスピリン群86例(1.24%/患者・年)に発生した(ハザード比 0.63、95%信頼区間[CI] 0.45~0.88;P=0.007)。治療中の集団では、大出血の発生率はアピキサバン群で1.71%/患者・年、アスピリン群で0.94%/患者・年であった(ハザード比 1.80、95%CI 1.26~2.57;P=0.001)。致死的出血はアピキサバン群で5例、アスピリン群で8例にみられた。

結論:潜在性心房細動患者において、アピキサバンはアスピリンよりも脳卒中や全身性塞栓症のリスクが低かったが、大出血のリスクは高かった。

資金提供:カナダ保健研究機構など

ClinicalTrials.gov番号:NCT01938248

引用文献

Apixaban for Stroke Prevention in Subclinical Atrial Fibrillation
Jeff S Healey et al. PMID: 37952132 DOI: 10.1056/NEJMoa2310234
N Engl J Med. 2023 Nov 12. doi: 10.1056/NEJMoa2310234. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37952132/

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