糖尿病を伴わない肥満における心血管アウトカム発生とセマグルチドの効果は?(DB-RCT: SELECT試験; N Engl J Med. 2023)

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過体重/肥満患者の心血管イベントの発生リスクに対するセマグルチドの効果は?

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬であるセマグルチドは、糖尿病患者において有害な心血管イベントのリスクを減少させることが示されています。糖尿病を有さない過体重や肥満に伴う心血管リスクをセマグルチドが減少させることができるかどうかは不明です。

そこで今回は、糖尿病を有さない過体重や肥満に伴う心血管リスクに対するセマグルチドの有効性・安全性を検証したSELECT試験の結果をご紹介します。

多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、イベントドリブン優越性試験において、心血管疾患の既往があり、体格指数(体重kgを身長m2で割った値)が27以上であるが糖尿病の既往を有さない45歳以上の患者が登録されました。患者は、セマグルチド2.4mgを週1回皮下投与する群とプラセボを週1回皮下投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けられました。

本試験の主要心血管系エンドポイントは、心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合であり、time-to-first-event解析が実施されました。また、安全性も評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

合計17,604例が登録され、8,803例がセマグルチド投与群に、8,801例がプラセボ投与群に割り付けられました。セマグルチドまたはプラセボの平均曝露期間(±SD)は34.2±13.7ヵ月、平均追跡期間は39.8±9.4ヵ月でした。

セマグルチド群
(8,803例)
プラセボ群
(8,801例)
ハザード比
(95%信頼区間)
vs. プラセボ
主要心血管系エンドポイント
心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合
569例(6.5%)701例(8.0%)ハザード比 0.80
0.72~0.90
P<0.001
 心血管系の原因による死亡223例(2.5%)262例(3.0%)ハザード比 0.85
(0.71~1.01)
P=0.07[優越性の公称有意水準=0.023]
 非致死的心筋梗塞234例(2.7%)322例(3.7%)ハザード比 0.72
(0.61〜0.85)
 非致死的脳卒中154例(1.7%)165例(1.9%)ハザード比 0.93
(0.74〜1.15)
 全死亡375例(4.3%)458例(5.2%)ハザード比 0.81
(0.71~0.93)
試験薬の永久的な中止1,461例(16.6%)718例(8.2%)
P<0.001

主要心血管系エンドポイントイベントは、セマグルチド群では8,803例中569例(6.5%)に、プラセボ群では8,801例中701例(8.0%)に発生しました(ハザード比 0.80、95%信頼区間 0.72~0.90;P<0.001)。

セマグルチド群では1,461例(16.6%)に、プラセボ群では718例(8.2%)に、試験薬の永久的な中止を余儀なくされる有害事象が発生しました(P<0.001)。

コメント

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬であるセマグルチドは、当初、2型糖尿病治療薬として承認されましたが、食欲減退などの消化器系の副次的な作用により肥満症治療剤としても承認されています。

肥満患者においては心血管系疾患の発症リスクが高いことから、肥満症治療剤による心血管疾患の発症リスク低減効果について検証が求められます。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、心血管疾患の既往があり、過体重または肥満であるが糖尿病のない患者における週1回2.4mgのセマグルチド皮下投与は、平均39.8ヵ月の追跡期間において、心血管疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の発生率の減少においてプラセボより優れていました。心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のすべてに対するリスク低減効果ではなく、非致死的心筋梗塞のリスク低下が大きく影響している可能性が高いと考えられます。とはいえ、全死亡のリスク低減も認められていることから、臨床上における患者転帰への影響は大きいと考えられます。

無闇に乱用されることは是正されなければなりませんが、心血管疾患の既往を有する過体重あるいは肥満患者においては、治療選択肢の一つになり得ると考えられます。

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✅まとめ✅ 心血管疾患の既往があり、過体重または肥満であるが糖尿病のない患者における週1回2.4mgのセマグルチド皮下投与は、平均39.8ヵ月の追跡期間において、心血管疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の発生率の減少においてプラセボより優れていた。

根拠となった試験の抄録

背景:グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬であるセマグルチドは、糖尿病患者において有害な心血管イベントのリスクを減少させることが示されている。糖尿病のない過体重や肥満に伴う心血管リスクをセマグルチドが減少させることができるかどうかは不明である。

方法:多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、イベントドリブン優越性試験において、心血管疾患の既往があり、体格指数(体重kgを身長m2で割った値)が27以上であるが糖尿病の既往を有さない45歳以上の患者を登録した。患者は、セマグルチド2.4mgを週1回皮下投与する群とプラセボを週1回皮下投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けられた。
主要心血管系エンドポイントは、心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合とし、time-to-first-event解析とした。安全性も評価された。

結果:合計17,604例が登録され、8,803例がセマグルチド投与群に、8,801例がプラセボ投与群に割り付けられました。セマグルチドまたはプラセボの平均曝露期間(±SD)は34.2±13.7ヵ月、平均追跡期間は39.8±9.4ヵ月であった。主要心血管系エンドポイントイベントは、セマグルチド群では8,803例中569例(6.5%)に、プラセボ群では8,801例中701例(8.0%)に発生した(ハザード比 0.80、95%信頼区間 0.72~0.90;P<0.001)。セマグルチド群では1,461例(16.6%)に、プラセボ群では718例(8.2%)に、試験薬の永久的な中止を余儀なくされる有害事象が発生した(P<0.001)。

結論:心血管疾患の既往があり、過体重または肥満であるが糖尿病のない患者において、週1回2.4mgのセマグルチド皮下投与は、平均39.8ヵ月の追跡期間において、心血管疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の発生率の減少においてプラセボより優れていた。

資金提供:Novo Nordisk社

ClinicalTrials.gov番号:NCT03574597

引用文献

Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes
A Michael Lincoff et al. PMID: 37952131 DOI: 10.1056/NEJMoa2307563
N Engl J Med. 2023 Nov 11. doi: 10.1056/NEJMoa2307563. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37952131/

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