不眠症患者におけるオレキシン受容体拮抗薬の処方に関連する因子には何がありますか?(日本のデータベース研究; Drugs Real World Outcomes. 2023)

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オレキシン受容体拮抗薬(ORA)の処方パターンに関連する因子とは?

オレキシンは覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質のひとつであり、オレキシンがオレキシン受容体へ作用すると覚醒システムを活性化させ覚醒が維持されることが明らかとなっています。 この覚醒システムが過剰に働いている状態では、不眠などの症状を引き起こしやすくなることから、オレキシン受容体拮抗薬が作られました。

オレキシン受容体拮抗薬が登場する前は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用が多く、これに伴う依存性や相互作用の面が課題となっています。課題解決のためにオレキシン受容体拮抗薬が処方されていますが、日本の実臨床におけるオレキシン受容体拮抗薬の処方パターンを検討した研究はほとんどありません。

そこで今回は、日本における不眠症患者へのオレキシン受容体拮抗薬処方に関連する因子を分析することを目的としたデータベース研究の結果をご紹介します。

本試験では、2018年4月1日から2020年3月31日の間に不眠症に対して1種類以上の催眠剤(睡眠薬)を処方された外来患者(20歳以上75歳未満)で、12ヵ月以上継続して登録されているものをJMDC Claims Databaseから抽出されました。

多変量ロジスティック回帰を行い、睡眠薬の新規使用者または非新規使用者(それぞれ睡眠薬処方歴のない患者またはある患者)におけるORA処方と関連する因子(患者属性および精神科併存疾患)が特定されました。

試験結果から明らかになったことは?

睡眠薬の新規使用者オレキシン受容体拮抗薬を処方されるオッズ比 OR
(95%CI)
男性OR1.17(1.12〜1.22
双極性障害OR 1.36(1.20〜1.55

新規使用者58,907例のうち、11,589例(19.7%)が指標日にオレキシン受容体拮抗薬(ORA)を処方されていました。男性(オッズ比[OR]1.17、95%信頼区間[CI]1.12〜1.22)および双極性障害(OR 1.36、95%CI 1.20〜1.55)はORAの処方確率の上昇と関連していました。

非新規使用者オレキシン受容体拮抗薬を処方されるオッズ比 OR
(95%CI)
神経認知障害OR 1.64(1.15〜2.35
物質使用障害OR 1.19(1.05〜1.35
双極性障害OR 1.14(1.07〜1.22
統合失調症スペクトラム障害OR 1.07(1.01〜1.14
不安障害OR 1.05(1.00〜1.10

88,611例の非新規使用者のうち、15,504例(17.5%)が指標日にORAを処方されていました。若年(20〜34歳)であること、神経認知障害(OR 1.64、95%CI 1.15〜2.35)、物質使用障害(OR 1.19、95%CI 1.05〜1.35)、双極性障害(OR 1.14、95%CI 1.07〜1.22)、統合失調症スペクトラム障害(OR 1.07、95%CI 1.01〜1.14)、不安障害(OR 1.05、95%CI 1.00〜1.10)などの精神疾患合併症と、より高いORAの処方確立に関連性が認められました。

コメント

ベンゾアゼピン系抗不安薬やZ-Drugの代わりにメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬が用いられてきています。しかし、オレキシン受容体拮抗薬が処方されるケースについては充分に検討されていません。

さて、日本のデータベース研究の結果、オレキシン受容体拮抗薬の処方増加に関連する因子として、睡眠薬の新規使用者では男性および双極性障害、非新規使用者では若年および精神疾患合併症があげられました。具体的には、神経認知障害、物質使用障害、双極性障害、統合失調症スペクトラム障害、不安障害における処方率の増加が示されました。

あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、日本におけるオレキシン受容体拮抗薬が処方されやすいパターンを把握するために貴重な研究結果です。患者予後や患者報告アウトカムについても検証されると、より処方パターンを掴みやすくなると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 日本の実臨床におけるオレキシン受容体拮抗薬の処方増加に関連する因子として、睡眠薬の新規使用者では男性および双極性障害、非新規使用者では若年および精神疾患合併症があげられた。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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