高齢者の直接作用型経口抗凝固薬治療におけるギャップ予測因子と臨床転帰の関連性は?(後向きコホート研究; Thromb Res. 2023)

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DOAC治療のギャップがもたらす影響とは?

直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は半減期が12時間程度と短いため、DOAC治療の短いギャップ期間であっても抗凝固作用が低下し、有害な臨床転帰のリスクが増加する可能性があります。しかし、このGapが臨床転帰に及ぼす影響は明らかとなっていません。

そこで今回は、心房細動を有するDOAC治療のギャップがもたらす臨床的影響を評価し、その潜在的予測因子を同定することを目的としたレトロスペクティブ・コホート研究の結果をご紹介します。

本試験では、2018年の韓国全国請求データベースからAFを有する65歳以上のDOAC使用者を対象としました。DOAC治療のギャップは、リフィル処方箋の期限から1日以上後にDOACの請求がないことと定義されました。結果の解析には、時間変動解析法が用いられました。

本試験の主要アウトカムは、死亡と虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症を含む血栓性イベントの複合でした。ギャップの潜在的な予測因子として、社会人口統計学的因子および臨床的因子が挙げられました。

試験結果から明らかになったことは?

11,042例のDOAC使用者のうち、4,857例(44.0%)が少なくとも1回のギャップ期間を有していました。

標準的な国民健康保険、医療機関の非都心部、肝臓病、慢性閉塞性肺疾患、がん、認知症の既往、利尿薬や非経口薬の使用は、ギャップ発生のリスク上昇と関連していました。一方、高血圧、虚血性心疾患、脂質異常症の既往は、ギャップ発生のリスク低下と関連していました。

ハザード比
(短期間のギャップ vs. ギャップ期間なし)
死亡と虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症を含む血栓性イベントの複合ハザード比 4.04
(95%信頼区間 2.95〜5.52

DOAC治療の短期間のギャップは、ギャップ期間がない場合と比較して、主要転帰のリスクが高いことと有意に関連していました(ハザード比 4.04、95%信頼区間 2.95〜5.52)。

コメント

DOACはワルファリンと比較して半減期が短いことから、薬剤の有効性を得るためには継続的な服用が重要となります。とはいえ、対象患者によってはDOACの半減期が延長することから、服用間隔が患者転帰に影響しない可能性もあります。

さて、後向きコホート研究の結果、ギャップ期間があることで、死亡と虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症を含む血栓性イベントの複合リスクが上昇しました。潜在的な予測因子として、ギャップ期間のリスク上昇には国民健康保険、医療機関の非都心部、肝臓病、慢性閉塞性肺疾患、がん、認知症の既往、利尿薬や非経口薬の使用が、ギャップのリスク低下には高血圧、虚血性心疾患、脂質異常症が関連していることが示されました。

本試験は韓国の全国規模コホートを解析した結果であることから、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。とはいえ、イベントリスクが増加する可能性のある患者背景を捉えるための知見を得ることができます。今後の研究報告が待たれます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ギャップ期間があることで、死亡と虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症を含む血栓性イベントの複合リスクが上昇した。国民健康保険、医療機関の非都心部、肝臓病、慢性閉塞性肺疾患、がん、認知症の既往、利尿薬や非経口薬の使用は、ギャップのリスク上昇に、高血圧、虚血性心疾患、脂質異常症の既往は、ギャップのリスク低下に関連していた。

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