COVID-19発症予防のためのマスク着用の効果はどのくらいなのか?
COVID-19を予防するために様々な感染対策が講じられています。マスクの種類としてN95、外科用、布製が挙げられますが、最適な使用方法や予防効果の比較検討は充分に行われていません。
そこで今回は、SARS-CoV-2感染予防のための地域および医療環境におけるN95、外科用、布製マスクの有効性に関するエビデンスを更新することを目的に実施されたシステマティックレビューの結果をご紹介します。
本試験のデータソースとして、MEDLINE、EMBASE、medRxiv(2022年6月3日~2023年1月2日)、および参考文献リストが対象となりました。
SARS-CoV-2感染リスクに対するマスク使用頻度度を高めるための介入に関するランダム化試験、および潜在的交絡因子を調整したマスク使用に関する観察研究が解析対象となりました。
データ抽出については2名の研究者が順次、研究データを抽出し、質を評価しました。
試験結果から明らかになったことは?
3件のランダム化試験と21件の観察研究が含まれました。
地域環境では、2件のランダム化試験と7件の観察研究に基づき、マスクの使用は、マスクを使用しない場合と比較して、SARS-CoV-2感染のリスクをわずかに減少させることと関連している可能性が示されました。
日常的な患者ケアの環境では、サージカルマスクとN95マスクは、SARS-CoV-2感染の同程度のリスクと関連する可能性が示されました。
観察研究からのエビデンスは、方法論的な限界と矛盾のため、他のマスクの比較を評価するには不充分でした。
コメント
COVID-19発症予防のための基本的対策としてマスクやアルコール消毒があげられます。マスクの効果検証において、一貫した結果が示されることは少なく結果の統合が求められています。
さて、システマティックレビューの結果、マスクが地域環境におけるSARS-CoV-2感染のリスクをわずかに減少させる可能性が示唆されました。しかし、質の高い研究報告が限られていることからメタ解析は実施されておらず結論は得られていません。
本試験の限界として、ランダム化比較試験の報告が少ない、対象となった試験には方法論的な限界や不正確な点がある、ランダム化比較試験のアドヒアランスが最適でないことや実用的な側面が利益を減じる可能性があること、害に関するエビデンスが非常に少ない、オミクロン変異株流行期への適用性が不明、研究間の異質性が高いためメタ解析が行われていない、研究の報告数が少ないことから出版バイアスを正確に評価できない、検索対象となった論文は英語に限定されていることがあげられます。
したがって、本試験結果をもってしてマスクの効果は小さく限定的であるとは結論づけられません。流行する変異株が異なること、マスクのフィッティング、ワクチン接種率など、季節や地域性も含めた研究報告が待たれます。
続報に期待。
コメント