2型糖尿病における心血管予防療法を最適化するためのコーディネートケアの効果は?(クラスターRCT; COORDINATE–Diabetes Site試験; JAMA. 2023)

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協調的で多面的な介入(評価、教育、フィードバック)の効果は?

これまでの臨床試験により、心血管疾患の発症リスクを低減させるための治療法が示されています。しかし、成人の2型糖尿病患者における動脈硬化性心疾患リスクを低減するためのエビデンスに基づく治療法は、臨床現場で充分に活用されていません。

そこで今回は、評価・教育・フィードバックという協調的で多面的な介入と通常のケアとの比較により、2型糖尿病でアテローム性心血管病を有する成人のうち、推奨される3つの治療法すべてを処方する割合に対する効果を評価したクラスターランダム化比較試験(COORDINATE–Diabetes Site試験)の結果をご紹介します。本試験におけるエビデンスに基づいた治療とは、高強度スタチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬[ACEI]またはアンジオテンシン受容体遮断薬[ARB]、ナトリウムグルコース共輸送体2[SGLT2]阻害薬および/またはグルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト[GLP-1RA]でした。

本試験は、米国の43施設の心臓病クリニックが2019年7月から2022年5月まで参加者を募集し、2022年12月までフォローアップを行うクラスターランダム化臨床試験でした。参加者は、2型糖尿病とアテローム性心血管病を有する成人で、エビデンスに基づく3群すべての治療法をすでに服用していない者でした。介入は、地域の障壁の評価、ケアパスの開発、ケアの調整、臨床医の教育、クリニックへのデータ報告、参加者へのツールの提供(n=459)であり、対照は診療ガイドラインに沿った通常のケア(n=590)でした。

本試験の主要アウトカムは、登録から6~12ヵ月後に推奨される3種類すべての治療法を処方された参加者の割合でした。副次的アウトカムは、アテローム性動脈硬化性心疾患リスクファクターの変化と、全死亡または心筋梗塞、脳卒中、代償性心不全、緊急血行再建術による入院の複合アウトカム(試験は、これらの差を示す検出力はなかった)でした。

試験結果から明らかになったことは?

登録された1,049例の参加者(20施設の介入クリニックで459例、23施設の通常ケアクリニックで590例)のうち、年齢中央値は70歳で、女性338例(32.2%)、黒人173例(16.5%)、ヒスパニック90例(8.6%)でした。

介入群通常ケア群調整オッズ比 [OR] あるいは 調整ハザード比[HR]
(95%CI)
3療法すべての処方173/457例
(37.9%)
85/588例
(14.5%)
OR 4.38
2.49〜7.71
P<0.001
副次的複合アウトカム
(全死亡または心筋梗塞、脳卒中、代償性心不全、緊急血行再建術による入院)
23/457例
(5%)
40/588例
(6.8%)
HR 0.79
0.46〜1.33

最終フォローアップ訪問時(参加者の97.3%が12ヵ月)、介入群では3療法すべてを処方される可能性が高く(173/457例 [37.9%] )、通常ケア群では85/588例 [14.5%] で、23.4%の差がありました(調整オッズ比 [OR] 4.38、95%CI 2.49〜7.71]; P<0.001)。

3療法それぞれをより処方される可能性も高いことが示されました。
◆高強度のスタチン:ベースラインからの変化 66.5%⇨70.7%。介入では66.5%⇨70.7%、通常ケアでは58.2%⇨56.8%[調整後OR 1.73、95%CI 1.06〜2.83
◆ACEIまたはARB:介入では75.1%⇨81.4%、通常ケアでは69.6%⇨68.4%[調整後OR 1.82、95%CI 1.14〜2.91
◆SGLT2阻害薬および/またはGLP-1RA:介入では12.3%⇨60.4%、通常ケアでは14.5%⇨35.5%[調整前OR 3.11、95%CI 2.08〜4.64

介入は、アテローム性心血管系疾患のリスクファクターの変化とは関連しませんでした。副次的複合アウトカムは、介入群では457例中23例(5%)、通常ケア群では588例中40例(6.8%)で発生しました(調整ハザード比 0.79、95%CI 0.46〜1.33] )。

コメント

高強度スタチン、ACE阻害薬/ARB、SGLT-2阻害薬および/またはGLP-1RAは、心血管イベントの発症リスクを低減することが示されています。特に2型糖尿病患者など、ベースの心血管疾患リスクが高い集団において、得られる利益が大きいことが示されています。しかし実臨床において、これらの薬剤の使用は限られています。

さて、クラスターランダム化比較試験の結果、2型糖尿病とアテローム性心血管疾患を有する成人において、協調的で多面的な介入により、エビデンスに基づく3つの治療法(高強度スタチン、ACEI/ARB、SGLT2阻害薬および/またはGLP-1RA)の処方が増加しました。しかし、全死亡または心筋梗塞、脳卒中、代償性心不全、緊急血行再建術による入院の複合アウトカムについては差が認められませんでした。著者は、検出力不足を指摘しています。

本試験における介入は、地域の障壁の評価、ケアパスの開発、ケアの調整、臨床医の教育、クリニックへのデータ報告、参加者へのツール提供であり、これらの協調的・多面的な介入で効果が得られることが示されました。より臨床上重要なアウトカムに対する評価が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病とアテローム性心血疾患を有する成人において、協調的で多面的な介入により、エビデンスに基づく3つの治療法(高強度スタチン、ACEI/ARB、SGLT2阻害薬および/またはGLP-1RA)の処方が増加した。全死亡または心筋梗塞、脳卒中、代償性心不全、緊急血行再建術による入院の複合アウトカムについては検出力不足だった。

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