起立性低血圧が降圧療法に与える影響はどのくらいなのか?
症候性起立性低血圧の患者では、降圧療法の管理は困難であり、降圧療法に関するランダム化比較試験から除外されることが多い集団とされています。起立性低血圧は、転倒や失神などの有害事象の発生に関連することから、降圧効果を検証する臨床試験において交絡因子となりえます。したがって、起立性低血圧を除外することは理にかなっているように思われますが、この除外による真の影響については充分に検証されていません。
そこで今回は、降圧療法と有害事象(例:転倒、失神)の関連性が、起立性低血圧患者を含む試験と含まない試験で異なるかどうかを明らかにすることを目的とした系統的レビューとメタ解析の結果をご紹介します。
血圧降下薬とプラセボ、または異なる血圧目標値を比較したランダム化対照試験が対象となりました。ランダム効果メタ分析により、起立性低血圧患者を除外した試験と起立性低血圧患者を除外しなかった試験のサブグループにおけるプールされた治療効果全体を推定し、相互作用についてPテストが行われました。本試験の主要アウトカムは、転倒イベントでした。
試験結果から明らかになったことは?
46件の試験(n= 233,357)が含まれ、そのうち18件の試験(n= 97,976)は起立性低血圧を除外し、28件の試験(n= 135,381)は除外していませんでした。
起立性低血圧の参加者を除外した試験 | 除外しなかった試験 | |
低血圧 | 1.3% P<0.001 | 6.2% |
転倒 | 4.8% P=0.40 | 8.8% |
失神 | 1.5% P=0.67 | 1.8% |
低血圧の発生率は、起立性低血圧の参加者を除外した試験で有意に低いことが示されましたが(1.3% vs. 6.2%;P<0.001)、転倒の発生率(4.8% vs. 8.8%;P=0.40)や失神(1.5% vs. 1.8%;P=0.67)では有意差は認められませんでした。
降圧療法は、起立性低血圧の参加者を除外した試験(OR 1.00、95%CI 0.89〜1.13、I2=0.0%) または参加させた試験(OR 1.02、95%CI 0.88〜1.18、I2=42.7%) において、転倒リスクの増加とは関連していませんでした(交互作用P=0.90)。
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起立性低血圧は転倒や失神の発生リスクと関連していることから、降圧療法を検証する臨床試験において交絡因子となる可能性があります。しかし、その影響度については充分に検証されていませんでした。
さて、本システマティックレビュー・メタ解析によれば、起立性低血圧患者の除外は、降圧試験における転倒および失神の相対リスク推定値に影響を与えないようでした。一方、低血圧については起立性低血圧の参加者を除外した試験において、有意に発生率が低いことが示されました。転倒の発生率についても、有意な差はなかったものの発生率は低いことから、今後の試験結果により異なる結果が得られる可能性があります。
続報に期待。
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