症候性孤立性遠位型静脈血栓症患者におけるリバーロキサバン投与期間は6週間と3ヵ月投与、どちらが良さそうですか?(DB-RCT; RIDTS試験; BMJ 2022)

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孤立性遠位型深部静脈血栓症(DVT)に対するリバーロキサバンの最適な治療期間は?

孤立性遠位型深型静脈血栓症(DVT)は下肢静脈に発症し、深部静脈血栓症全体の31~56%を占めます(PMID: 24472834)。孤立性遠位型DVTは一般的に近位型DVTよりも良性の疾患と考えられていますが、未治療の患者では近位静脈への進展や肺動脈への塞栓が22%という高い割合で報告されています(PMID: 28316124)。近位型DVTと同様に、がん関連血栓症患者や続発性でない孤立性遠位型DVT患者では、一過性の危険因子による孤立性遠位型DVT患者よりも再発の危険性が高くなります(PMID: 28732457)。2件の研究で、初めて孤立性遠位型DVTを発症した患者の長期的な再発リスクは、近位型DVTの患者に見られるものと同様であると報告されています(PMID: 24450376PMID: 24713107)。

孤立性遠位型DVTの頻度は比較的高いとされていますが、最適な治療法についてはまだ議論の余地があります。国際的なガイドラインでは、抗凝固療法は重篤な症状を呈している患者や進展の危険因子を有する患者に対してのみ行うことが推奨されています(PMID: 2231526PMID: 34352279)。それ以外の患者には、2週間にわたる深部静脈の連続画像診断が推奨されています(PMID: 2231526PMID: 34352279)。しかし、最近の大規模観察研究では、近位部および孤立性遠位型DVT患者の急性期管理における治療戦略は同様であり、後者の方が治療期間が短いと報告されています(PMID: 33971682PMID: 31370075)。したがって、臨床現場では孤立性遠位型DVT患者のほとんどが治療を受けてはいますが、最適な治療期間については依然として議論の余地があります。

そこで今回は、症候性孤立性遠位型DVT患者を対象に、リバーロキサバンの2つの治療期間について、有効性と安全性を比較検討したRIDTS試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

https://www.bmj.com/content/379/bmj-2022-072623より引用

成人200例がリバーロキサバンの追加投与に、202例がプラセボ投与にランダムに割り付けられた。孤立性遠位型DVTは81例(40%)、86例(43%)でそれぞれ非誘発性でした。

主要評価項目は、リバーロキサバン群23例(11%)、プラセボ群39例(19%)で発生しました(相対リスク 0.59、95%信頼区間 0.36~0.95、P=0.03、治療必要数NNT 13、95%信頼区間 7~126)。

孤立性遠位型DVTの再発は、リバーロキサバン群で16例(8%)、プラセボ群で31例(15%)で認められました(P=0.02)。

近位部DVTまたは肺塞栓症は、リバーロキサバン群で7例(3%)、プラセボ群で8例(4%)に発生しました(P=0.80)。一方、大出血のイベントは発生しませんでした。

コメント

孤立性遠位型(下肢型)深型静脈血栓症(DVT)は下肢静脈に発症し、深部静脈血栓症全体の31~56%を占めますが、近位型DVTと比較して治療期間が短いことが報告されていますが、最適な治療期間については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、リバーロキサバン6週間の治療で問題のなかった孤立性遠位型DVT患者に、さらに6週間投与することで、出血リスクを高めることなく、2年間のフォローアップで静脈血栓塞栓症(主に孤立性遠位型DVTの再発)のリスクを減少させることが明らかとなりました。

大出血は認められなかったようですが、全出血イベントは両群で各1例認められたようです。臨床上懸念される安全性の懸念は示されていないことから、12週間の治療を行った方が良さそうですはありますが、追試が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ リバーロキサバン6週間の治療で問題のなかった孤立性遠位型DVT患者に、さらに6週間投与することで、出血リスクを高めることなく、2年間のフォローアップで静脈血栓塞栓症(主に孤立性遠位型DVTの再発)のリスクを減少させることが明らかとなった。

根拠となった試験の抄録

目的:症状のある孤立性遠位深部静脈血栓症(DVT)患者において、リバーロキサバンの2種類の治療期間を比較すること。

試験デザイン:ランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験

試験設定:静脈血栓塞栓症専門の外来診療所28ヵ所

試験参加者:症状を有する孤立性遠位型DVTの成人(18歳以上)402例

介入:標準量のリバーロキサバンを6週間投与した後、リバーロキサバン20mgまたはプラセボを1日1回、さらに6週間投与する群にランダムに割り付けられた。追跡期間は試験開始から24ヵ月間とした。

主要評価項目:有効性の主要評価項目は、ランダム化後の追跡期間中の静脈血栓塞栓症の再発で、孤立性遠位型DVTの進行、孤立性遠位型DVTの再発、近位型DVT、症候性肺塞栓、致命的肺塞栓の複合と定義された。安全性の主要評価項目は、ランダム化後、リバーロキサバンまたはプラセボを最後に投与してから2日後までの大出血としました。独立委員会がアウトカムを判定した。

結果:成人200例がリバーロキサバンの追加投与に、202例がプラセボ投与にランダムに割り付けられた。孤立性遠位型DVTは81例(40%)、86例(43%)でそれぞれ非誘発性であった。主要評価項目は、リバーロキサバン群23例(11%)、プラセボ群39例(19%)で発生した(相対リスク 0.59、95%信頼区間 0.36~0.95、P=0.03、治療必要数NNT 13、95%信頼区間 7~126)。孤立性遠位型DVTの再発は、リバーロキサバン群で16例(8%)、プラセボ群で31例(15%)に起こった(P=0.02)。近位部DVTまたは肺塞栓症は、リバーロキサバン群で7例(3%)、プラセボ群で8例(4%)に発生した(P=0.80)。大出血のイベントは発生しなかった。

結論:リバーロキサバン6週間の治療で問題のなかった孤立性遠位型DVT患者に、さらに6週間投与することで、出血リスクを高めることなく、2年間のフォローアップで静脈血栓塞栓症(主に孤立性遠位型DVTの再発)のリスクを減少させる。

試験登録:EudraCT 2016-000958-36; ClinicalTrials.gov NCT02722447.

引用文献

Rivaroxaban treatment for six weeks versus three months in patients with symptomatic isolated distal deep vein thrombosis: randomised controlled trial
BMJ 2022; 379 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2022-072623 (Published 23 November 2022)Cite this as: BMJ 2022;379:e072623
— 読み進める www.bmj.com/content/379/bmj-2022-072623

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