帯状疱疹後の脳卒中リスクはどのくらい?(ドイツ自己対照ケースシリーズ研究; PLoS One. 2016)

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帯状疱疹後に脳卒中の発症リスクが増加する?

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染によって引き起こされる疾患ですが、その発症は、潜伏していたVZVの再活性化によって引き起こされます。帯状疱疹の重篤な合併症はVZV血管障害であり、虚血性または出血性脳卒中を引き起こす可能性があります。しかし、帯状疱疹後の脳卒中リスクがどの程度かについては充分に検討されていません。

そこで今回は、帯状疱疹発症後の脳卒中リスクを評価し、脳卒中のサブタイプ、帯状疱疹発症部位、帯状疱疹発症から脳卒中発症までの時間間隔の役割について検討したドイツの自己対照ケースシリーズ研究の結果をご紹介します。

本試験では、ドイツ全土の約2,000万人を対象としたドイツ薬事疫学研究データベース(GePaRD)に記録された脳卒中発症患者コホートが用いられました。同一症例におけるリスク期間(帯状疱疹発症後)とコントロール期間(帯状疱疹が認められない期間)の脳卒中発症率を比較し、時間不変の交絡因子と時間不変の可能性のある主要交絡因子をコントロールして調整後発症率比(IRR)が推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

このコホートには124,462例の脳卒中患者が含まれ、そのうち6,035例(5%)はデータベースにおいて、退院時の主な診断、あるいは抗ウイルス剤による治療を受けた帯状疱疹として、少なくとも一つの帯状疱疹の診断を受けたことが確認されました。

脳卒中発症後3ヵ月間のリスク全帯状疱疹
IRR(95%CI)
帯状疱疹眼症
IRR(95%CI)
全脳卒中1.29
1.16〜1.44
1.59
1.10〜2.32
虚血性脳卒中と特定不能脳卒中1.27
1.13〜1.42
1.57
1.05〜2.35
出血性脳卒中1.53
1.11〜2.11
1.82
(0.62〜5.37)

脳卒中のリスクは、帯状疱疹発症後3ヵ月のリスク期間において、コントロール期間に比べ約1.3倍高いことが示されました(IRR 1.29、95%CI 1.16〜1.44)。虚血性脳卒中と特定不能脳卒中では同程度のリスク上昇が認められましたが、出血性脳卒中では1.5倍のリスク上昇が認められました。また、帯状疱疹眼症発症後3ヵ月間に脳卒中リスクへのやや強い影響が観察されました(IRR 1.59、95%CI 1.10〜2.32)。脳卒中リスクは帯状疱疹発症後の3〜4週が最も高く、その後減少しました。

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帯状疱疹は感覚神経節、関連する皮膚分節の皮膚、その他まれではありますが灰白質の前角・後角、髄膜、前根・後根に炎症が生じる疾患であり、ピリピリするような持続性疼痛が認められます。神経反応が過敏になっていることから、風がふいただけでも皮膚に痛みが生じます。また発症部位によっては、合併症として帯状疱疹後脳卒中リスクの増加が報告されています。

さて、本試験結果によれば、脳卒中のリスクは、帯状疱疹発症後3ヵ月のリスク期間において、コントロール期間に比べ約1.3倍高いことが示されました。さらに出血性脳卒中では1.5倍のリスク上昇が認められました。また顔面の帯状疱疹である帯状疱疹眼症の発症後には、コントロール期間に比べ約1.6倍高いことが示されました。期間別において、脳卒中リスクは帯状疱疹発症後の3〜4週が最も高いことが示されました。

頭部に近い位置に帯状疱疹を発症した場合(帯状疱疹眼症の発症)は、特に脳卒中リスクが高まりそうです。発症後の少なくとも1ヵ月間は脳卒中の初期症状について注視した方が良さそうです。

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✅まとめ✅ 帯状疱疹発症後3~4週目に脳卒中リスクが上昇するかもしれない

根拠となった試験の抄録

背景:帯状疱疹(HZ)は、潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる疾患であり、その発症は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染によって引き起こされる。HZの重篤な合併症はVZV血管障害であり、虚血性または出血性脳卒中を引き起こす可能性がある。本研究の目的は、HZ発症後の脳卒中リスクを評価し、脳卒中のサブタイプ、HZ発症部位、HZ発症から脳卒中発症までの時間間隔の役割について検討することであった。

方法:ドイツ全土の約2,000万人を対象としたドイツ薬事疫学研究データベース(GePaRD)に記録された脳卒中発症患者コホートに対して、自己対照ケースシリーズ研究を実施した。同一人物におけるリスク期間(HZ発症後)の脳卒中発症率とコントロール期間(HZが認められない期間)の脳卒中発症率を比較し、時間不変の交絡因子と時間不変の可能性のある主要交絡因子をコントロールして調整後発症率比(IRR)を推定した。

結果:このコホートには124,462例の脳卒中患者が含まれ、そのうち6,035例(5%)はデータベース(GePaRD)において、退院時の主な診断、あるいは抗ウイルス剤による治療を受けたHZとして、少なくとも一つのHZ診断を受けたことが確認された。
脳卒中のリスクは、HZ発症後3ヵ月のリスク期間では、コントロール期間に比べ約1.3倍高かった(IRR 1.29、95%CI 1.16〜1.44)。虚血性脳卒中と特定不能脳卒中では同程度のリスク上昇が認められたが、出血性脳卒中では1.5倍のリスク上昇が認められた。また、HZ眼症(HZO)発症後3ヵ月間に脳卒中リスクへのやや強い影響が観察された(1.59、1.102.32)。リスクはHZ発症後3週と4週が最も高く、その後減少した。

結論:本研究は、HZ発症後3~4週目に脳卒中リスクが上昇することを裏付けるものである。この結果は、HZO後のリスクがより顕著であり、虚血性脳卒中よりも出血性脳卒中で数値的に高いことを示唆している。

引用文献

Risk of Stroke after Herpes Zoster – Evidence from a German Self-Controlled Case-Series Study
Tania Schink et al. PMID: 27880853 PMCID: PMC5120818 DOI: 10.1371/journal.pone.0166554
PLoS One. 2016 Nov 23;11(11):e0166554. doi: 10.1371/journal.pone.0166554. eCollection 2016.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27880853/

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