HFpEF治療におけるSGLT-2阻害剤の費用対効果はどのくらい?(費用対効果分析; JAMA Cardiol. 2023)

crop person in latex gloves with american money on background of flag 02_循環器系
Photo by Karolina Grabowska on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

HFpEF患者におけるSGLT-2阻害薬の追加は費用対効果に優れているのか?

駆出率が維持された心不全(HFpEF)患者において、標準治療薬にナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2-I)を追加すると、心不全悪化または心血管死亡の複合転帰のリスクが低下することが報告されていますが、米国のHFpEF患者における費用対効果については充分に検討されていません。

そこで今回は、HFpEF患者において、標準治療とSGLT2-Iを併用した場合の生涯費用対効果を標準治療と比較して評価した費用対効果分析の結果をご紹介します。

本経済評価では、2021年9月8日から2022年12月12日まで、状態遷移マルコフモデルにより、毎月の健康アウトカムと直接医療費のシミュレーションが行われました。入院率、死亡率、コスト、ユーティリティなどの入力パラメータは、HFpEF試験、公開文献、および一般に入手可能なデータセットから抽出されました。

SGLT2-Iのベースケースの年間コストは4,506ドルでした。EMPEROR-Preserved(Empagliflozin in Heart Failure With a Preserved Ejection Fraction)とDapagliflozin in Heart Failure With Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction(DELIVER)試験の参加者と同様の特性を持つシミュレーションコホートが使用されました(標準治療+SGLT2-I vs. 標準治療)。

入院、緊急医療機関受診、心血管系および非心血管系の死亡についてモデルを用いてシミュレーションされ、割引率じゃ年率3%でした。主要アウトカムは、米国の医療部門の観点から、SGLT2-I療法の質調整生存年(QALY)、直接医療費(2022年の米ドル)、増分費用対効果比(ICER)でした。SGLT2-I療法のICERは、米国心臓病学会/米国心臓協会の価値観の枠組みに従って評価されました(高値: <$50,000、中間値: $50,000~<$150,000、低値: ≥$150,000)。

試験結果から明らかになったことは?

シミュレーションコホートの平均(SD)年齢は71.7(9.5)歳、12,251例中6,828例(55.7%)が男性でした。

標準治療+SGLT2-Iは、標準治療と比較して26,300ドルのコスト増で、質調整生存率を0.19QALY増加させました。その結果、ICERは獲得QALYあたり141,200ドルであり、1,000回の確率的反復のうち59.1%が中間値、40.9%が低値を示しました。

ICERは、SGLT2-IのコストとSGLT2-I療法による心血管死への影響に最も感度が高いことが示されました(例えば、SGLT2-I療法が死亡率に影響しないと仮定した場合、得られるQALYあたり373,400ドルに増加)。

コメント

SGLT-2阻害薬は糖尿病治療薬として開発され、製造販売されていますが、様々な作用・効果を有していることから、適応拡大されています。特に心不全治療においては、左室駆出率を問わずに心不全の増悪リスクを低減することが示されています。しかし、その費用対効果については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、米国の成人HFpEFにおいて、標準治療にSGLT-2阻害薬を追加することは、標準治療と比較して経済価値が中間または低いことが示唆されました(2022年の米ドル薬価)。HFpEF患者に対するSGLT-2阻害薬へのアクセスを拡大する努力は、SGLT-2阻害薬による治療のコストを下げる努力と連動させる必要性が示されました。

これまでの報告も踏まえると、駆出率の低下した心不全(HFrEF)に対しては、費用対効果が高そうですが、駆出率の保たれた心不全(HFpEF)に対しては、その費用対効果は限定的なようです。どのような患者で、SGLT-2阻害薬を積極的に使用すると費用対効果が高くなるのか、検証が求められます。

続報に期待。

american flag and money falling down

✅まとめ✅ 2022年の薬価では、米国の成人HFpEFにおいて、標準治療にSGLT2-Iを追加することは、標準治療と比較して経済価値が中間または低いことを示唆している。HFpEF患者に対するSGLT2-Iへのアクセスを拡大する努力は、SGLT2-I治療のコストを下げる努力と連動させる必要がある。

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました