心血管系二次予防における多剤併用(ポリピル)戦略は有効ですか?(RCT; SECURE試験; N Engl J Med. 2022)

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心筋梗塞後の心血管死および合併症の二次予防戦略としてのポリピル戦略は有効なのか?

心筋梗塞後の心血管死および合併症の二次予防の簡便な方法として、予後改善に関連する主要薬剤(アスピリン、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、スタチン)を含むポリピルが提唱されています。通常の配合剤は2種類の成分を含みますが、ポリピル(Polypill, Polycap)とは、数種類の成分を含む配合剤のことを意味しています。

今回ご紹介するのは、過去6ヵ月以内に心筋梗塞を発症した患者を対象にポリピル戦略の有効性について検証したSECURE試験です。

この第3相ランダム化比較臨床試験において、過去6ヵ月以内に心筋梗塞を発症した患者は、ポリピルを用いた戦略または通常治療に割り付けられました。ポリピルは、アスピリン(100mg)、ラミプリル(2.5、5、10mg)、アトルバスタチン(20、40mg)から構成されていました。

本試験の主要複合アウトカムは、心血管死、非致死性1型心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中、緊急血行再建術でした。主要な副次的エンドポイントは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計2,499例の患者がランダム化され、中央値で36ヵ月間追跡されました。

ポリピル群通常治療群ハザード比
(95%CI)
一次アウトカム118/1,237例
(9.5%)
156/1,229例
(12.7%)
0.76
0.60~0.96
P=0.02

一次アウトカムイベントは、ポリピル群では1,237例中118例(9.5%)、通常治療群では1,229例中156例(12.7%)に発生しました(ハザード比 0.76、95%信頼区間[CI] 0.60~0.96;P=0.02)

主要な二次アウトカム事象は、ポリピル群では101例(8.2%)、通常治療群では144例(11.7%)で発生しました(ハザード比 0.70、95%CI 0.54~0.90;P=0.005)。この結果は、事前に特定したサブグループ間で一貫しており、結果の堅牢性が示されました。

患者によって報告された服薬アドヒアランスは、ポリピル群で通常治療群よりも高いことも示されました。

有害事象は両群間で同様でした。

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心血管疾患の二次予防において、血圧および脂質コントロールが重要です。またアスピリンの使用により心血管リスクの低下が報告されています。薬剤数が増えることにより、コンプライアンスが不良となり、期待する効果が得られなくなります。コンプライアンス改善のためにポリピルが提唱されています。

さて、本試験結果によれば、心筋梗塞後6ヵ月以内にアスピリン、ラミプリル、アトルバスタチンを含むポリピルで治療した場合、主要な有害心血管イベントのリスクは通常治療より有意に低いことが示されました。絶対差は3.2%、NNTは32(追跡期間:中央値36ヵ月)と、良好な結果でした。

心血管疾患の二次予防におけるポリピルは、有効な治療戦略の一つになり得るようです。

抄録に記載はありませんが、通常治療は、アスピリン、ラミプリル、アトルバスタチンをそれぞれ服用する治療であると考えられます。

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✅まとめ✅ 心筋梗塞後6ヵ月以内にアスピリン、ラミプリル、アトルバスタチンを含むポリピルで治療した場合、主要な有害心血管イベントのリスクは通常治療より有意に低かった。

根拠となった試験の抄録

背景:心筋梗塞後の心血管死および合併症の二次予防の簡便な方法として、予後改善に関連する主要薬剤(アスピリン、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、スタチン)を含むポリピルが提唱されている。

方法:この第3相ランダム化比較臨床試験において、過去6ヵ月以内に心筋梗塞を発症した患者を、ポリピルを用いた戦略または通常治療に割り付けた。ポリピルは、アスピリン(100mg)、ラミプリル(2.5、5、10mg)、アトルバスタチン(20、40mg)から構成されていた。
主要複合アウトカムは、心血管死、非致死性1型心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中、緊急血行再建術であった。主要な副次的エンドポイントは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中の複合であった。

結果:合計2,499例の患者がランダム化され、中央値で36ヵ月間追跡された。一次アウトカムイベントは、ポリピル群では1,237例中118例(9.5%)、通常治療群では1,229例中156例(12.7%)に発生した(ハザード比 0.76、95%信頼区間[CI] 0.60~0.96;P=0.02)。主要な二次アウトカム事象は、ポリピル群では101例(8.2%)、通常治療群では144例(11.7%)で発生した(ハザード比 0.70、95%CI 0.54~0.90;P=0.005)。この結果は、事前に特定したサブグループ間で一貫していた。患者によって報告された服薬アドヒアランスは、ポリピル群で通常治療群よりも高かった。有害事象は両群間で同様であった。

結論:心筋梗塞後6ヵ月以内にアスピリン、ラミプリル、アトルバスタチンを含むポリピルで治療した場合、主要な有害心血管イベントのリスクは通常治療より有意に低かった。

資金提供:欧州連合ホライズン2020

ClinicalTrials.gov番号:NCT02596126、EudraCT番号:2015-002868-17

引用文献

Polypill Strategy in Secondary Cardiovascular Prevention
Jose M Castellano et al. PMID: 36018037 DOI: 10.1056/NEJMoa2208275
N Engl J Med. 2022 Aug 26. doi: 10.1056/NEJMoa2208275. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36018037/

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