COVID-19入院患者に対するレムデシビルの効果はどのくらい?(オープンRCT; CATCO試験; CMAJ. 2022)

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レムデシビルによる効果とは?

SARS-CoV-2感染によりCOVID-19患者数が増加しています。流行時期により変異ウイルスが異なることから、定期的に治療薬の効果検証が求められます。

入院中のCOVID-19患者の治療におけるレムデシビルの役割は、世界的に見てもまだ充分に定義されていません。世界保健機関(WHO)のが実施したランダム化比較試験(RCT)では、多くの国の患者を対象にレムデシビルを評価しており、カナダではCanadian Treatments for COVID-19(CATCO)試験で拡大したデータ収集形式を用いて患者を登録しています。

そこで今回は、COVID-19入院患者に対するレムデシビルの効果を検証したCATCO試験の結果をご紹介します。本試験は、カナダの病院において、Solidarity試験と並行して非盲検の実用的なRCTが実施されました。患者を、10日間のレムデシビル投与(初日に200 mgを静脈内投与、その後毎日100 mgを静脈内投与)+標準ケア、または標準ケアのみにランダムに割り付けられました。主要評価項目は院内死亡率でした。

試験結果から明らかになったことは?

カナダの病院52施設において、2020年8月14日から2021年4月1日の間に、患者1,282例をレムデシビル(634例)または標準治療(648例)にランダムに割り付けました。このうち、15例が同意を取り下げた、あるいは入院中であったため、合計1,267例の患者が解析対象となりました。

レムデシビル投与群標準ケア群相対リスク[RR]
95%信頼区間[CI])
院内死亡率18.7%22.6%0.83
0.67~1.03
60日死亡率24.8%28.2%0.88
0.72〜1.07

レムデシビル投与群では、院内死亡率 18.7%、標準ケア群では22.6%(相対リスク[RR]0.83、95%信頼区間[CI]0.67~1.03)、60日死亡率はそれぞれ24.8%と28.2%(95%CI 0.72~1.07)でした。

ベースラインで機械的換気を行っていない患者について、機械的換気の必要性は、レムデシビル投与群 8.0%、標準治療群 15.0%でした(RR 0.53、95%CI 0.38~0.75)。

28日目の平均酸素投与フリー日数および呼吸器フリー日数は、レムデシビル投与群 15.9(±標準偏差[SD]10.5)および21.4(±SD 11.3)、標準治療群 14.2(±SD 11)19.5(± SD 12.3)でした(それぞれp=0.006、0.007)。

安全性に関しては、新規透析、クレアチニン値の変化、新規肝機能障害などの事象について、2群間に差は認められませんでした。

コメント

COVID-19レムデシビルの効果を検証したランダム化比較試験の結果、プラセボと比較して、主要評価項目である院内死亡率に差が認められませんでした。院内死亡率、60日間死亡率は減少傾向であったたことから、患者背景により有益性が得られそうです。また28日目の平均酸素投与フリー日数および呼吸器フリー日数におけるレムデシビル使用は、プラセボと比較して有意に日数が延長しています。さらにベースラインで機械的換気を行っていない患者について、レムデシビル使用により機械的換気の必要性が低下することから、医療切迫の回避のために、選択肢の一つとなり得ると考えられます。

ただし、本試験の実施期間中に流行していたのはアルファ変異体のようですので、他の変異体への効果検証が求められます。続報に期待。

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✅まとめ✅ COVID-19入院患者に対するレムデシビル使用は、標準ケアと比較して、死亡率を低下させなかったが、人工呼吸器を要しない日数を有意に延長させた。

根拠となった試験の抄録

背景:入院中のCOVID-19患者の治療におけるレムデシビルの役割は、世界的に見てもまだ十分に定義されていない。世界保健機関(WHO)のランダム化比較試験(RCT)では、多くの国の患者を対象にレムデシビルを評価しており、カナダではCanadian Treatments for COVID-19(CATCO)試験で拡大したデータ収集形式を用いて患者を登録している。カナダの知見について、人口統計、特性、臨床転帰を追加して報告し、異なる医療制度による効果の差の可能性を探る。

方法:カナダの病院において、Solidarity試験と並行して非盲検の実用的なRCTを実施した。患者を、10日間のレムデシビル投与(初日に200 mgを静脈内投与、その後毎日100 mgを静脈内投与)+標準ケア、または標準ケアのみにランダムに割り付けた。
主要評価項目は院内死亡率とした。副次的転帰は、臨床的重症度の変化、酸素・人工呼吸器不要日数(28日)、新たな酸素・人工呼吸器使用の発生率、入院期間、有害事象発生率などとした。試験登録前の症状持続期間、年齢、性別、来院時の症状の重症度により、事前にサブグループ分析を行った。

結果:カナダの病院52施設において、2020年8月14日から2021年4月1日の間に、患者1,282例をレムデシビル(634例)または標準治療(648例)にランダムに割り付けた。このうち、15例が同意を取り下げたか、入院中であり、合計1,267例の患者を解析対象とした。
レムデシビル投与群では、院内死亡率は18.7%、標準ケア群では22.6%(相対リスク[RR]0.83、95%信頼区間[CI]0.67~1.03)、60日死亡率はそれぞれ24.8%と28.2%(95%CI 0.72~1.07)であった。ベースラインで機械的換気を行っていない患者について、機械的換気の必要性は、レムデシビル投与群では8.0%、標準治療群では15.0%であった(RR 0.53、95%CI 0.38~0.75)。28日目の平均酸素投与フリー日数および呼吸器フリー日数は、レムデシビル投与群では15.9(±標準偏差[SD]10.5)および21.4(±SD 11.3)、標準治療群では14.2(±SD 11)19.5(± SD 12.3)だった(それぞれp=0.006、0.007)。安全性に関しては、新規透析、クレアチニン値の変化、新規肝機能障害などの事象について、2群間に差はなかった。

解釈:レムデシビルは、標準治療と比較した場合、人工呼吸器の必要性など患者や医療システムにとって重要なアウトカムに、わずかではあるが有意な影響を与える。

試験登録:ClinicalTrials.gov, no.NCT04330690.

引用文献

Remdesivir for the treatment of patients in hospital with COVID-19 in Canada: a randomized controlled trial
Karim Ali et al. PMID: 35045989 DOI: 10.1503/cmaj.211698
CMAJ. 2022 Jan 19;cmaj.211698. doi: 10.1503/cmaj.211698. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35045989/

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