重度の低酸素血症を有するCOVID-19患者に対するデキサメタゾン用量は12mgと6mgどちらが良い?(RCT; COVID STEROID 2試験; JAMA. 2021)

food healthy leaf pineapple 09_感染症
Photo by Maksim Goncharenok on Pexels.com
この記事は約10分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

重症COVID-19患者に対するデキサメタゾン用量は多い方が良いのか?

重症COVID-19患者は、重度の肺炎と低酸素血症を特徴としており、しばしば高流量酸素の使用、人工呼吸器、さらに病状が進行した場合には、循環器系のサポートや腎代替療法が必要となります(PMID: 32929715)。

デキサメタゾンは、全身性グルココルチコイドの使用による短期死亡率の低下を報告した7つのランダム化試験のプロスペクティブメタ分析(PMID: 32876694)に基づいて、重症および重篤なCOVID-19患者に対して世界保健機関(PMID: 32887691)が推奨しています。これらの試験の中で最も規模の大きいRandomized Evaluation of COVID-19 Therapy(RECOVERY)試験では、デキサメタゾン6mg/日を最大10日間投与することで死亡率の改善が認められました。メタアナリシスの対象となった残りの6つの試験のうち、3つの試験では、グルココルチコイドの1日あたりの投与量がデキサメタゾン6mgよりも高用量で評価されていました(デキサメタゾン換算の中央値は12mg[範囲 6~16mg];PMID: 32876697PMID: 32876689PMID: 32876695PMID: 34138478)。
また、COVID-19を有していない急性呼吸窮迫症候群の患者を対象としたランダム化試験でも、高用量のデキサメタゾンが有効であると報告されています(PMID: 32043986)。薬力学的研究では、プレドニゾン60mg(デキサメタゾン12mg相当)までの増量に伴い、コルチコステロイド受容体の活性化が用量依存的に引き起こることが示唆されています(PMID: 27424036)。

これらの知見から、推奨用量である6mg/日よりも高用量のデキサメタゾンが、より重症のCOVID-19患者に有効である可能性が示唆されました。しかし、高用量のグルココルチコイドを使用することによる副作用が懸念されており(PMID: 29794202)、特にグルココルチコイドで治療を受けたCOVID-19患者において、ムーコル症などの重篤な真菌感染症が報告されています(PMID: 34192610PMID: 34090607)。

そこで今回は、入院中のCOVID-19患者で重度の低酸素血症を呈している成人を対象に高用量のデキサメタゾンの有効性と安全性を評価したCOVID STEROID 2試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された患者1,000例のうち、982例が組み入れられ(年齢中央値65[IQR 55~73]歳、女性305例[31%])、971例(デキサメタゾン12mg群491例、デキサメタゾン6mg群480例)の主要アウトカムデータが得られました。

デキサメタゾン12mg群デキサメタゾン6mg群
生命維持装置なしで生存していた日数22.0日
(IQR 6.0~28.0 日)
20.5日
(IQR 4.0~28.0日)
調整済み平均差1.3日
(95%CI 0~2.6日)
P=0.07

生命維持装置なしで生存していた日数の中央値は、デキサメタゾン12mg群で22.0日(IQR 6.0~28.0 日)、デキサメタゾン6mg群で20.5日(IQR 4.0~28.0日)でした。
☆調整済み平均差 1.3日、95%CI 0~2.6日、P=0.07

デキサメタゾン12mg群デキサメタゾン6mg群
投与後28日目までの死亡率27.1%32.3%
調整済み相対リスク0.86
(99%CI 0.68〜1.08

投与後28日目までの死亡率は、デキサメタゾン12mg群で27.1%、デキサメタゾン6mg群で32.3%でした。
☆調整済み相対リスク 0.86、99%CI 0.68〜1.08

デキサメタゾン12mg群デキサメタゾン6mg群
投与後28日目までの死亡率32.0%37.7%
調整済み相対リスク0.87
(99%CI 0.70〜1.07

投与後90日目までの死亡率は、デキサメタゾン12mg群32.0%、デキサメタゾン6mg群37.7%でした。
☆調整後相対リスク 0.87、99%CI 0.70〜1.07

デキサメタゾン12mg群デキサメタゾン6mg群
敗血症性ショックや侵襲性真菌感染症などの
重篤な副作用
11.3%13.4%
調整済み相対リスク0.83
(99%CI 0.54〜1.29

敗血症性ショックや侵襲性真菌感染症などの重篤な副作用は、デキサメタゾン12mg群で11.3%、デキサメタゾン6mg投与群で13.4%に発生しました。
☆調整相対リスク 0.83、99%CI 0.54〜1.29

コメント

COVID-19に伴いサイトカインストームが引き起こされ、これは疾患の重症度に相関して強い反応が示されます。したがって、重度の低酸素血症を呈するCOVID-19患者に対するデキサメタゾン高用量の有効性に期待がかかります。

さて、本試験結果によれば、重度の低酸素血症を呈するCOVID-19患者におけるデキサメタゾン12mg/日は、6mg/日と比較し、28日目に生命維持装置なしで生存している日数に差が認められませんでした。

サンプルサイズの推定に用いられたのは、28日死亡率で15%、生命維持装置を必要とする期間で10%の予想相対差に基づいていましたが、本試験で示された28日死亡率で群間差5.7%、生命維持装置を必要とする期間で群間差5.2%だったことから、より大きなサンプルサイズが必要であった可能性を否定できません。また、いずれのアウトカム発生も6mg/日投与群と比較して、12mg/日投与群で減少傾向、敗血症性ショックや侵襲性真菌感染症などの重篤な副作用の発生は12mg/日投与群で少ないことが示されました。

したがって、重度の低酸素血症を呈するCOVID-19患においては、高用量である12mg/日の使用を考慮しても良いのかもしれません。続報に期待。

grey kitten on floor

✅まとめ✅ 重度の低酸素血症を呈するCOVID-19患者におけるデキサメタゾン12mg/日は、6mg/日と比較し、28日目に生命維持装置なしで生存している日数に差がなかったものの、検出力不足の可能性が残っていた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:重症で重篤なCOVID-19の患者には、デキサメタゾン6mgを1日1回、最大10日間投与することが推奨されるが、より重症の患者には、より高用量の投与が有効である。

目的:COVID-19 で重度の低酸素血症を呈する患者において、デキサメタゾン12mg/日と6mg/日の効果を評価すること。

試験デザイン、設定および参加者:2020年8月から2021年5月にかけて、欧州とインドの病院26施設で多施設共同ランダム化臨床試験を実施し、10L/min以上の酸素または機械的換気を必要とするCOVID-19が確認された成人1,000例を対象とした。90日フォローアップの終了は2021年8月19日だった。

介入方法:患者は、最大10日間、デキサメタゾン12mg/日の静脈内投与(n=503)またはデキサメタゾン6mg/日の静脈内投与(n=497)に1:1でランダムに割り付けられた。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、投与28日目までの生命維持装置(侵襲的人工呼吸、循環補助、腎代替療法)なしで生存していた日数とし、層別変数で調整した。事前に規定された8つの副次的転帰のうち、5つを本解析に含めた(①90日目に生命維持装置なしで生存した日数、②90日目に退院して生存した日数、③投与後28日目までの死亡率、④投与後90日目までの死亡率、⑤投与後28日目までに1つ以上の重篤な有害反応)。

結果:ランダム化された患者1,000例のうち、982例が組み入れられ(年齢中央値65[IQR 55~73]歳、女性305例[31%])、971例(デキサメタゾン12mg群491例、デキサメタゾン6mg群480例)の主要アウトカムデータが得られた。
生命維持装置なしで生存していた日数の中央値は、デキサメタゾン12mg群で22.0日(IQR 6.0~28.0 日)、デキサメタゾン6mg群で20.5日(IQR 4.0~28.0日)であった(調整済み平均差 1.3日[95%CI 0~2.6日]、P=0.07)。投与後28日目までの死亡率は、デキサメタゾン12mg群で27.1%、デキサメタゾン6mg群で32.3%であった(調整済み相対リスク 0.86[99%CI 0.68〜1.08])。投与後90日目までの死亡率は、デキサメタゾン12mg群32.0%、デキサメタゾン6mg群37.7%でした(調整後相対リスク 0.87[99%CI 0.70〜1.07])。
敗血症性ショックや侵襲性真菌感染症などの重篤な副作用は、デキサメタゾン12mg群で11.3%、デキサメタゾン6mg投与群で13.4%に発生した(調整相対リスク 0.83[99%CI 0.54〜1.29])。

結論と関連性:重度の低酸素血症を呈するCOVID-19患者におけるデキサメタゾン12mg/日は、デキサメタゾン6mg/日と比較し、28日目に生命維持装置なしで生存している日数が統計的に有意に多くなることはなかった。しかし、本試験は有意差を確認するには力不足であった可能性がある。

試験の登録 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04509973およびctri.nic.in Identifier: ctri/2020/10/028731

引用文献

Effect of 12 mg vs 6 mg of Dexamethasone on the Number of Days Alive Without Life Support in Adults With COVID-19 and Severe Hypoxemia: The COVID STEROID 2 Randomized Trial
COVID STEROID 2 Trial Group. PMID: 34673895 DOI: 10.1001/jama.2021.18295
JAMA. 2021 Oct 21. doi: 10.1001/jama.2021.18295. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34673895/

関連記事

【重症COVID-19患者に対するステロイド療法としては低用量デキサメタゾンが良いかもしれない(RCTのメタ解析; Expert Rev Respir Med. 2021)】

【SARS-CoV-2, SARS-CoV, or MERS-CoV感染患者に対するコルチコステロイドの効果はどのくらいですか?(SR&MA; Leukemia. 2020)】

【BMJ News】COVID-19患者に対する低用量ステロイドの効果はどのくらいですか?(News; BMJ 2020)

【14日以内の経口コルチコステロイド使用による重篤な有害事象とは?(台湾人口ベース コホート研究; Ann Intern Med. 2020)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました