ワクチン接種または未接種のCovid-19成人外来患者に対するニルマトレルビルの効果は?(RCT; EPIC-SR試験; N Engl J Med. 2024)

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成人のCOVID-19患者に対するニルマトレルビルの効果は?

ニルマトレルビルとリトナビルの併用は、軽度〜中等度の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する抗ウイルス治療薬です。

一方で、重症Covid-19の標準的リスクを有する患者、またはワクチン接種が完了しており重症Covid-19のリスク因子を少なくとも1つ有する患者におけるこの治療の有効性は確立されていません。

そこで今回は、過去5日以内に症状が発現したCovid-19が確認された成人を、ニルマトレルビル-リトナビルまたはプラセボを12時間ごとに5日間投与する群に1:1の割合でランダムに割り付け、有効性・安全性を検証した第2-3相試験(EPIC-SR試験)の結果をご紹介します。

Covid-19のワクチンを接種済みで、重症化の危険因子を少なくとも1つ有している患者と、そのような危険因子を持たず、Covid-19のワクチンを接種したことがないか、過去1年以内に接種していない患者が参加対象となりました。参加者は1日目から28日目まで、事前に規定されたCovid-19の徴候と症状の有無と重症度を毎日記録しました。

本試験の主要エンドポイントは、対象としたすべてのCovid-19徴候および症状が持続的に軽減するまでの期間でした。Covid-19に関連した入院とあらゆる原因による死亡も28日目まで評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化を受け、全解析集団に組み入れられた1,296人の参加者のうち、1,288人がニルマトレルビル-リトナビルの投与を少なくとも1回受け(654人)、またはプラセボの投与を少なくとも1回受け(634人)、ベースライン後の来院を少なくとも1回受けました。

ニルマトレルビル-リトナビル群プラセボ群
(95%CI)
Covid-19の対象としたすべての徴候
および症状が持続的に軽減するまでの期間(中央値)
12日
(P=0.60 vs. プラセボ群)
13日
Covid-19関連入院および全死亡5人(0.8%)10人(1.6%)差 -0.8%ポイント
-2.0 ~ 0.4
・Covid-19関連入院5人(0.8%)10人(1.6%)
・全死亡0人(0)1人(0.2%)

Covid-19の対象としたすべての徴候および症状が持続的に軽減するまでの期間の中央値は、ニルマトレルビル-リトナビル群で12日、プラセボ群で13日でした(P=0.60)。ニルマトレルビル-リトナビル群では5人(0.8%)、プラセボ群では10人(1.6%)がCovid-19のために入院するか、何らかの原因で死亡しました(差 -0.8%ポイント、95%信頼区間 -2.0 ~ 0.4)。

有害事象を発現した参加者の割合は両群で同程度でした(ニルマトレルビル-リトナビル群 25.8%、プラセボ群 24.1%)。ニルマトレルビル-リトナビル群で最も多く報告された治療関連の有害事象は、味覚異常(参加者の5.8%)および下痢(2.1%)でした。

コメント

重症Covid-19の標準的リスクを有する患者、またはワクチン接種が完了しており重症Covid-19のリスク因子を少なくとも1つ有する患者におけるニルマトレルビル-リトナビル投与の効果は不明です。

さて、ランダム化比較試験の結果、重症Covid-19の標準的リスクを有する患者、またはワクチン接種が完了しており重症Covid-19のリスク因子を少なくとも1つ有する患者におけるCovid-19のすべての徴候および症状が持続的に緩和されるまでの期間は、ニルマトレルビル-リトナビルを投与された参加者とプラセボを投与された参加者の間で有意差はありませんでした。

プラセボ群の高リスクワクチン接種者1人が死亡しました。入院したニルマトレルビル-リトナビル群の参加者5人のうちICU入院はいませんでしたが、プラセボ群の参加者10人のうち3人がICUに入院しました。高リスクの参加者を含むサブグループ解析では、入院または死亡はニルマルトレルビル-リトナビル群で3人(0.9%)、プラセボ群で7人(2.2%)に発生しました(差 -1.3%ポイント、95%CI -3.3 ~ 0.7)。

ちなみに本試験の参加者の年齢中央値は42歳(幅 18〜87)であり、65歳以上の患者は全体の5%でした。

これまでに報告されたデータベース研究では、65歳以上の患者において、Covid-19による入院率および死亡率は、ニルマトルビルを投与された患者の方が投与されなかった患者よりも有意に低いことが示されています。一方、若年成人では有益性のエビデンスは認められませんでした。

以上の結果を踏まえると、Covid-19重症化リスクを有する、またはワクチン接種が完了しており重症Covid-19のリスク因子を少なくとも1つ有する若年成人において、ニルマトレルビル-リトナビル投与の恩恵は得られないようです。高齢者(65歳以上など)における更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、重症Covid-19の標準的リスクを有する患者、またはワクチン接種が完了しており重症Covid-19のリスク因子を少なくとも1つ有する患者におけるCovid-19のすべての徴候および症状が持続的に緩和されるまでの期間は、ニルマトレルビル-リトナビルを投与された参加者とプラセボを投与された参加者の間で有意差はなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:ニルマトレルビルとリトナビルの併用は、軽度〜中等度の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する抗ウイルス治療薬である。重症Covid-19の標準的リスクを有する患者、またはワクチン接種が完了しており重症Covid-19のリスク因子を少なくとも1つ有する患者におけるこの治療の有効性は確立されていない。

方法:この第2-3相試験では、過去5日以内に症状が発現したCovid-19が確認された成人を、ニルマトレルビル-リトナビルまたはプラセボを12時間ごとに5日間投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けた。Covid-19のワクチンを接種済みで、重症化の危険因子を少なくとも1つ持っている患者と、そのような危険因子を持たず、Covid-19のワクチンを接種したことがないか、過去1年以内に接種していない患者が参加対象となった。参加者は1日目から28日目まで、事前に規定されたCovid-19の徴候と症状の有無と重症度を毎日記録した。
主要エンドポイントは、対象としたすべてのCovid-19徴候および症状が持続的に軽減するまでの期間であった。Covid-19に関連した入院とあらゆる原因による死亡も28日目まで評価された。

結果:ランダム化を受け、全解析集団に組み入れられた1,296人の参加者のうち、1,288人がニルマトレルビル-リトナビルの投与を少なくとも1回受け(654人)、またはプラセボの投与を少なくとも1回受け(634人)、ベースライン後の来院を少なくとも1回受けた。Covid-19の対象としたすべての徴候および症状が持続的に軽減するまでの期間の中央値は、ニルマトレルビル-リトナビル群で12日、プラセボ群で13日であった(P=0.60)。ニルマトレルビル-リトナビル群では5人(0.8%)、プラセボ群では10人(1.6%)がCovid-19のために入院するか、何らかの原因で死亡した(差 -0.8%ポイント、95%信頼区間 -2.0 ~ 0.4)。有害事象を発現した参加者の割合は両群で同程度であった(ニルマトレルビル-リトナビル群 25.8%、プラセボ群 24.1%)。ニルマトレルビル-リトナビル群で最も多く報告された治療関連の有害事象は、味覚異常(参加者の5.8%)および下痢(2.1%)であった。

結論:Covid-19のすべての徴候および症状が持続的に緩和されるまでの期間は、ニルマトレルビル-リトナビルを投与された参加者とプラセボを投与された参加者の間で有意差はなかった。

試験登録:EPIC-SRのClinicalTrials.gov番号 NCT05011513

引用文献

Nirmatrelvir for Vaccinated or Unvaccinated Adult Outpatients with Covid-19
Jennifer Hammond et al. PMID: 38598573 DOI: 10.1056/NEJMoa2309003
N Engl J Med. 2024 Apr 4;390(13):1186-1195. doi: 10.1056/NEJMoa2309003.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38598573/

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