重症COVID-19患者に対するステロイド療法としては低用量デキサメタゾンが良いかもしれない(RCTのメタ解析; Expert Rev Respir Med. 2021)

syringe and pills on blue background 09_感染症
Photo by Miguel Á. Padriñán on Pexels.com
この記事は約6分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

重症COVID-19に対するステロイド療法の効果は薬剤によって異なる?

SARS-CoV-2感染によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症度により軽症、中等症、重症の3つに大別されます。中でも重症患者はサイトカインストームにより死亡リスクが高くなることから、早期に炎症を抑えるステロイド療法が推奨されています。

しかし、ステロイドの用量や種類により、COVID-19に対する有効性・安全性が異なる可能性があります。

そこで今回は、COVID-19患者におけるコルチコステロイドの有効性と安全性を、標準治療またはプラセボと比較評価したメタ解析の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

10件のランダム化臨床試験が対象となりました。COVID-19患者にコルチコステロイドを投与しても、死亡(RR 0.93、95%CI 0.82〜1.05)と人工呼吸の必要性(RR 0.82、95%CI 0.62〜1.08)のリスクは有意に減少しませんでした。また、機械的換気が必要な患者のサブグループでも死亡率の低下は認められませんでした(RR 0.90、95%CI 0.79〜1.03)。

コルチコステロイドの使用は、酸素補給を必要としない患者のサブグループで死亡率を増加させました(RR 1.24、95%CI 1.00〜1.55)。

生存率の向上は、低用量コルチコステロイド(RR 0.90、95%CI 0.84〜0.97)およびデキサメタゾン(RR 0.90、95%CI 0.79〜1.04)で認められました。

有害事象(RR 1.13、95%CI 0.58〜2.20)および二次感染(RR 0.87、95%CI 0.66〜1.15)の発生率には差が認められませんでした。

コメント

COVID-19に対するステロイド治療の有効性は一貫していません。これは、疾患の重症度により、リスクとベネフィットのバランスが異なるためです。

さて、10件のRCTのメタ解析の結果、コルチコステロイドの使用は、酸素投与を必要としない患者のサブグループで死亡率を増加させました(RR 1.24、95%CI 1.00〜1.55)。一方、生存率の向上は、低用量コルチコステロイド(RR 0.90、95%CI 0.84〜0.97)およびデキサメタゾン(RR 0.90、95%CI 0.79〜1.04)で認められました。ただし、デキサメタゾンはリスク低下傾向です。

全体として、死亡(RR 0.93、95%CI 0.82〜1.05)と人工呼吸の必要性(RR 0.82、95%CI 0.62〜1.08)のリスクは有意に減少していません。また、機械的換気が必要な患者のサブグループでも死亡率の低下は認められませんでした(RR 0.90、95%CI 0.79〜1.03)。

ここまでの情報を整理すると、酸素投与を必要としない軽症患者においては、やはりステロイド投与は無効なようです。より重症度の高い患者集団においては、低用量ステロイドの使用は考慮しても良いのかもしれません。

pills on blue background

✅まとめ✅ コルチコステロイドの使用は、機械的換気が必要な患者で死亡リスクが低下傾向であったが、酸素投与を必要としない患者集団では死亡リスクが増加した。低用量ステロイドあるいはデキサメタゾンによる有効性の検証には、より質の高い研究の実施が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19患者におけるコルチコステロイドの有効性と安全性を、標準治療またはプラセボと比較して評価する。

方法:電子データベースを検索し、関連する研究を特定した。死亡率、有害事象、その他のデータをプールし、統計解析を行った。

結果:10件のランダム化臨床試験が対象となった。COVID-19患者にコルチコステロイドを投与しても、死亡(RR 0.93、95%CI 0.82〜1.05)と人工呼吸の必要性(RR 0.82、95%CI 0.62〜1.08)のリスクは有意に減少しなかった。また、機械的換気が必要な患者のサブグループでも死亡率の低下は認められなかった(RR 0.90、95%CI 0.79〜1.03)。コルチコステロイドの使用は、酸素補給を必要としない患者のサブグループで死亡率を増加させた(RR 1.24、95%CI 1.00〜1.55)。生存率の向上は、低用量コルチコステロイド(RR 0.90、95%CI 0.84〜0.97)およびデキサメタゾン(RR 0.90、95%CI 0.79〜1.04)で認められた。
有害事象(RR 1.13、95%CI 0.58〜2.20)および二次感染(RR 0.87、95%CI 0.66〜1.15)の発生率には差がなかった。

結論:コルチコステロイド治療は、重度のCOVID-19患者の生存率を改善しなかった。低用量デキサメタゾンはCOVID-19患者の治療のための薬剤として考慮できる。この結論をさらに検証するためには、より質の高い試験が必要である。

キーワード 有害事象;COVID-19;コルチコステロイド;投与量;死亡率

引用文献

Effects of different corticosteroid therapy on severe COVID-19 patients: a meta-analysis of randomized controlled trials
Jiayuan Tu et al. PMID: 34541972 DOI: 10.1080/17476348.2021.1983429
Expert Rev Respir Med. 2021 Sep 18. doi: 10.1080/17476348.2021.1983429. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34541972/

関連記事

【COVID-19重症患者における全身性コルチコステロイド投与による死亡率への影響はどのくらいですか?(RCT 7件のメタ解析; JAMA 2020)】

【SARS-CoV-2, SARS-CoV, or MERS-CoV感染患者に対するコルチコステロイドの効果はどのくらいですか?(SR&MA; Leukemia. 2020)】

【BMJ News】COVID-19患者に対する低用量ステロイドの効果はどのくらいですか?(News; BMJ 2020)

コメント

タイトルとURLをコピーしました