早期乳癌における化学療法誘発性発熱性好中球減少症の一次予防のためのフィルグラスチムの投与期間は5日で良い?(Open-RCT; Ann Oncol. 2020)

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化学療法誘発性の発熱性好中球減少症(FN)一時予防におけるフィルグラスチムの有効性は?

早期乳癌に対するアジュバント化学療法に伴う好中球減少症は、発熱性好中球減少症(FN)、治療に伴う入院、患者のQOL低下を引き起こし、化学療法の遅延、減量、中止につながる可能性があります(PMID: 23076939)。これらのリスクを低減するために、多くの化学療法レジメンでは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)であるフィルグラスチム(米国Label)またはペグフィルグラスチム(米国Label)の予防投与が併用されています。費用に大きな違いがあるため、カナダのオンタリオ州では、第三者による薬剤保険に加入していない患者にはフィルグラスチムのみが州の資金援助を受けています。

地域(CCO Drug Formulary)、国(NCCN)、国際(EORTCASCO)のエビデンスに基づくガイドラインでは、FNリスク全体が20%以上の場合に一次予防を推奨していますが、フィルグラスチムの投与期間については明確な指針がありません(米国LabelPMID: 21217400)。

フィルグラスチムには一般的な副作用(骨痛、頭痛、発熱、関節痛、筋肉痛、注射部位の痛みなど)があり、毎日の皮下投与が必要で、高価(ニューポジェン®️は約192カナダドル/回、グラストフィル®️は約144カナダドル/回)であることを考えると、最適な投与期間を特定することは、患者と医療従事者の双方にとって重要な臨床的課題となっています(CCO Drug FormularyPMID: 29411131PMID: 21094038)。

そこで今回は、FNと治療関連の入院について、フィルグラスチム5日投与群と7日投与群、10日投与群の間で有効性を比較検討した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

患者466例は、フィルグラスチムを5日投与する群(184例、39.5%)または7/10日(282例、60.5%)投与する群にランダムに割り付けられました。

主要解析では、1サイクルあたりの発熱性好中球減少症(FN)または治療関連入院のリスクの差は-1.52%(95%CI -3.22% ~ 0.19%)であり、5日間のフィルグラスチム投与スケジュールが7/10日間の投与スケジュールに比べて非劣性であることが示されました。

1サイクルあたりの各イベント発生率の差は、FNでは0.11%(95%CI -1.05 ~ 1.27)、治療関連の入院では-1.68%(95%CI -2.73 ~ -0.63%)でした。

FNまたは治療関連の入院のいずれかが1回以上発生した患者の全体の割合は、5日群と7/10日群でそれぞれ11.8%と14.96%でした。
☆リスク差 -3.17%、95%CI -9.51% ~ 3.18%

コメント

乳癌だけに関わらず、化学療法による発熱性好中球減少症(FN)は、患者QOL低下や入院リスク増加などを引き起こし、化学療法の中止を余儀なくされます。以前はFNが発症してから顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤を投与する「治療的使用」がメインでしたが、化学療法レジメンごとのFN発症リスクの定量的エビデンスが集積していること、副作用を最小限にしつつ化学療法を継続することが最優先であることから、近年では、FNに対する一次予防としてのG-CSF製剤の使用が推奨されています(がん診療ガイドライン・G-CSF適正使用)。現在、日本で承認されているG-CSF製剤は、フィルグラスチム、ぺグフィルグラスチム、ノイトロジンの3種類です。使用実績としてはフィルグラスチムが最多ですが、投与期間については、患者背景や化学療法レジメンにより異なるため、明確に規定されていません。

さて、本試験結果によれば、フィルグラスチムを5日投与する群と、7あるいは10日投与する群とを比較した場合、FNまたは治療関連の入院いずれかの発生について非劣性でした。試験プロトコルの変更があったことから、サンプルサイズや検出力について内的妥当性が低くなった可能性がありますが、コストや副作用発生を抑制する観点からフィルグラスチム5日間投与を基本とした方が良いのかもしれません。

今後は、G-CSF製剤による治療後における、より長期の有効性・安全性の検証が求められると考えられます。

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✅まとめ✅ 早期乳癌における化学療法誘発性発熱性好中球減少症の一次予防において、フィルグラスチムの5日間投与は、7/10日間投与に比べて非劣性であった。

根拠となった試験の抄録

背景:早期乳癌患者における発熱性好中球減少症(FN)の一次予防としてのフィルグラスチムの最適な投与期間は不明であり、5日、7日、10日が一般的に処方されている。本試験では、フィルグラスチムの5日間投与が7/10日間投与に比べて非劣性であるかどうかを評価した。

対象者と方法:このランダム化非盲検試験では、FNの一次予防としてフィルグラスチムを投与される予定の早期乳がん患者を、すべての化学療法サイクルでフィルグラスチムを5日 vs. 7日 vs. 10日にランダムに割り付けた。2017年11月のプロトコール修正により、その後の患者(N=324)は5日または7/10日のいずれかにランダムに割り付けられた。
主要アウトカムは、FNまたは治療関連の入院のいずれかの複合とした。副次的アウトカムは、化学療法における用量減量、化学療法の開始遅延、中止などであった。
解析はプロトコールごと(一次)とintention-to-treatで行い、非劣性マージンは化学療法1サイクルあたりのFNおよび/または入院の発生リスクに対して3%とした。

結果:患者466例は、フィルグラスチムを5日(184例、39.5%)または7/10日(282例、60.5%)投与する群にランダムに割り付けられた。主要解析では、1サイクルあたりのFNまたは治療関連入院のリスクの差は-1.52%[95%信頼区間(CI) -3.22% ~ 0.19%]であり、5日間のフィルグラスチム投与スケジュールが7/10日間の投与スケジュールに比べて非劣性であることが示された。
1サイクルあたりのイベントの差は、FNでは0.11%(95%CI -1.05 ~ 1.27)、治療関連の入院では-1.68%(95%CI -2.73 ~ -0.63%)でした。FNまたは治療関連の入院のいずれかが1回以上発生した患者の全体の割合は、5日群と7/10日群でそれぞれ11.8%と14.96%であった(リスク差 -3.17%、95%CI -9.51% ~ 3.18%)。

結論:フィルグラスチムの5日間投与は、7/10日間投与に比べて非劣性であった。この薬剤のコストと毒性を考慮すると、5日間投与を標準治療とみなすべきである。

ClinicalTrials.Gov登録:NCT02428114およびNCT02816164

キーワード:乳がん、フィルグラスチム、支持療法。

引用文献

A multicentre, randomised trial comparing schedules of G-CSF (filgrastim) administration for primary prophylaxis of chemotherapy-induced febrile neutropenia in early stage breast cancer
M Clemons et al. PMID: 32325257 DOI: 10.1016/j.annonc.2020.04.005
Ann Oncol. 2020 Jul;31(7):951-957. doi: 10.1016/j.annonc.2020.04.005. Epub 2020 Apr 20.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32325257/

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