BNT162b2(ファイザー・ビオンテック社製)およびmRNA-1273(モデルナ社製)を用いたワクチン接種後のSARS-CoV-2抗体反応の比較(前向きコホート研究; JAMA. 2021)

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mRNAワクチンにより抗体価の増加幅は異なるのか?

SARS-CoV-2のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであるBNT162b2(Pfizer-BioNTech社)とmRNA-1273(Moderna社)は、それぞれCOVID-19発病の予防に90%以上の有効性を示しているが(PMID: 33378609PMID: 33301246)、我々の知る限りでは、体液性免疫反応を直接比較したことはない。三次医療機関(ベルギー、Ziekenhuis Oost-Limburg)の医療従事者で、mRNA-1273またはBNT162b2のいずれかを2回接種する予定の人を、この前向きコホートに募集した。

試験結果から明らかになったことは?

SARS-CoV-2 mRNAワクチンを2回接種した医療従事者2,499例のうち、1,647例が本研究に参加しました。mRNA-1273を接種したのは688例(平均年齢 43.2歳、女性 76.7%、SARS-CoV-2既往感染者 21.8%)、BNT162b2を接種したのは959例(平均年齢 44.7歳、女性 84.9%、既往感染者 13.2%)でした。

mRNA-1273を2回接種した集団は、BNT162b2を接種した集団に比べて高い抗体価を示しました(幾何平均力価[GMT] 3,836 U/mL[95%CI 3,586〜4,104] vs. 1,444 U/mL[95%CI 1,350〜1,544]、P<0.001)。

感染の既往がある集団の抗体価は、感染の既往がない集団(GMT 1,613 U/mL [95%CI 1,539〜1,690])に比べて高いことが示されました(P<0.001)。いずれのグループでも、mRNA-1273を接種した集団は、BNT162b2を接種した集団に比べて抗体価が高いことが示されました。
mRNA-1273】感染の既往がある集団:GMT 2,881 U/mL [95%CI 2,721〜3,051] vs. 1,108 U/mL [95%CI 1,049〜1,170]; P<0.001
BNT162b2】感染の既往のある集団:GMT 10,708 U/mL [95%CI 9,311〜12,315] vs. 8,174 U/mL [95%CI 6,923〜9,649]; P=0.01)。

過去に感染していない集団の抗体レベルは年齢と負の相関があり(相関係数 -0.22;P<0.001)、35歳未満の参加者で最も高かった。すべての年齢カテゴリーにおいて、mRNA-1273を接種した感染の既往のある集団は、BNT162b2を接種した既感染者に比べて抗体価が高いことが示されました(すべての比較においてP<0.001)。mRNAワクチンの種類は、重回帰分析においても、対数変換した抗体価と独立して関連していました(P<0.001)。

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mRNA COVID-19ワクチンであるBNT162b2(ファイザー・ビオンテック社製)とmRNA-1273(モデルナ社製)の2回接種後の抗体価を比較検討した試験です。

本試験結果によれば、mRNA-1273(モデルナ社製)接種による抗体価は、BNT162b2(ファイザー・ビオンテック社製)と比較して高いことが示されました。ただし、実際の感染率に対する有効性については検証されていません。抗体価は高い方が良いことは疑いようのない事実ではありますが、今回認められた抗体価の差が、感染予防率においてどの程度の差につながるかは明らかではありません。また、過去の臨床試験では、どちらのワクチンも有効率90%以上であることが示されていますので、どんぐりの背比べになる可能性があります。

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✅まとめ✅ mRNAワクチン接種後の抗体価は、BNT162b2(ファイザー・ビオンテック社製)と比較して、mRNA-1273(モデルナ社製)の方が高かったが、本研究では感染に対する有効率について比較検討されていない。

根拠となった試験の抄録

はじめに:SARS-CoV-2のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであるBNT162b2(Pfizer-BioNTech社)とmRNA-1273(Moderna社)は、それぞれCOVID-19発病の予防に90%以上の有効性を示しているが、我々の知る限りでは、体液性免疫反応を直接比較したことはない。

方法:三次医療機関(ベルギー、Ziekenhuis Oost-Limburg)の医療従事者で、mRNA-1273またはBNT162b2のいずれかを2回接種する予定の人を、この前向きコホートに募集した。血清学的検査は、ワクチン接種前と、2回目の投与から6~10週間後(2021年4月27日から5月20日の間)に実施した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインに対する総免疫グロブリン量は、抗SARS-CoV-2 S酵素免疫測定法(Elecsys, Roche Diagnostics International Ltd)を用いて測定した。ワクチン接種後、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体を測定した。過去の感染は、いずれかの時点で抗ヌクレオカプシドが陽性であること、ワクチン接種前に抗スパイクが陽性であること、および/または鼻咽頭スワブでポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が陽性であった履歴があることと定義した。
各ワクチンの2回目接種後の抗体レベルを、コホート全体、既感染者と非感染者、既感染者の年齢層別(35歳未満、35~55歳、55歳以上)に、log10変換後にt検定を用いて比較した。年齢とlog10変換した抗体価との相関関係は、Pearson相関で評価した。交絡を調整するために、年齢、性別、過去の感染歴、ワクチン接種から血清検査までの期間を含めて、重回帰を行った。検定はすべて両側検定で、統計的有意性はα=0.05とした。解析にはRStudio(バージョン1.2.1335)を使用した。本研究は、地元の研究機関評価委員会の承認を得ており、参加者は書面によるインフォームド・コンセントを得た。

結果:SARS-CoV-2 mRNAワクチンを2回接種した医療従事者2,499例のうち、1,647例が本研究に参加した。mRNA-1273を接種したのは688例(平均年齢 43.2歳、女性 76.7%、SARS-CoV-2既往感染者 21.8%)、BNT162b2を接種したのは959例(平均年齢 44.7歳、女性 84.9%、既往感染者 13.2%)であった。
mRNA-1273を2回接種した参加者は、BNT162b2を接種した参加者に比べて高い抗体価を示した(幾何平均力価[GMT] 3,836 U/mL[95%CI 3,586〜4,104] vs. 1,444 U/mL[95%CI 1,350〜1,544]、P<0.001)。
既往感染者の抗体価は、既往非感染者(GMT 1,613 U/mL [95%CI 1,539〜1,690])に比べて高かった(P<0.001)。いずれのグループでも、mRNA-1273を接種した人は、BNT162b2を接種した人に比べて抗体価が高かった(既往感染者:GMT 2,881 U/mL [95%CI 2,721〜3,051] vs. 1,108 U/mL [95%CI 1,049〜1,170]; P<0.001、既往感染者:GMT 10,708 U/mL [95%CI 9,311〜12,315] vs. 8,174 U/mL [95%CI 6,923〜9,649]; P=0.01)。過去の感染状況による抗体レベルの差は、2つのmRNAワクチンの差よりも高かった。
過去に感染していない参加者の抗体レベルは年齢と負の相関があり(相関係数 -0.22;P<0.001)、35歳未満の参加者で最も高かった。すべての年齢カテゴリーにおいて、mRNA-1273を接種した既感染者は、BNT162b2を接種した既感染者に比べて抗体価が高かった(すべての比較においてP<0.001)。
mRNAワクチンの種類は、重回帰分析においても、対数変換した抗体価と独立して関連していた(P<0.001)。

引用文献

Comparison of SARS-CoV-2 Antibody Response Following Vaccination With BNT162b2 and mRNA-1273
Deborah Steensel et al. PMID: 34459863 DOI: 10.1001/jama.2021.15125
JAMA. 2021 Aug 30. doi: 10.1001/jama.2021.15125. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34459863/

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