第3相試験とリアルワールドデータにおけるCOVID-19ワクチンの有効性・安全性に違いはあるのか?
SARS-CoV-2感染による新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)が猛威を奮っています。このパンデミックを抑えるためには、手洗い、マスク、3密回避などの基本的な感染対策に加えて、COVID-19ワクチンの接種が必要であると考えられます。
これまでの臨床試験の結果から、ワクチンによるCOVID-19感染予防効果、副反応の発生頻度が報告されていますが、リアルワールドにおける有効性・安全性のデータは充分ではありません。
そこで今回は、英国のCOVID Symptom Studyアプリ利用者のデータを解析した、よりリアルタイムに、より実臨床に近い状況におけるCOVID-19ワクチンの有効性・安全性について検証した試験の結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
2020年12月8日から2021年3月10日の間に、627,383人が655,590回の接種を受けたことを報告しました。282,103人がBNT162b2の1回接種を受け、そのうち28,207人が2回目の接種を受け、345,280人がChAdOx1 nCoV-19の1回接種を受けていました。
発生率(人) | 全身性の副反応 | 局所的な副反応 |
BNT162b2ワクチン (接種1回目) | 13.5% (38,155/282,103人) | 71.9% (150,023/208,767人) |
BNT162b2ワクチン (接種2回目) | 22.0% (6,216/28,207人) | 68.5% (9,025/13,179人) |
ChAdOx1 nCoV-19ワクチン (接種1回目) | 33.7% (116,473/345,280人) | 58.7% (104,282/177,655人) |
全身性の副反応は、BNT162b2ワクチン1回目の接種後に13.5%(38,155/282,103人)、BNT162b2ワクチン2回目の接種後に22.0%(6,216/28,207人)、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン1回目の接種後に33.7%(116,473/345,280人)の人が報告しました。
局所的な副反応は、BNT162b2ワクチン1回目の接種後に71.9%(150,023/208,767人)、BNT162b2ワクチンの2回目の接種後に68.5%(9,025/13,179人)、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの1回目の接種後に58.7%(104,282/177,655人)の人が報告しました。
全身性の副反応は、SARS-CoV-2感染歴のある人では、感染歴のない人よりも多く(ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの1回目の接種後に1.6回、BNT162b2ワクチンの1回目の接種後に2.9回)発生しました。
局所的な副反応も同様に、過去に感染したことがある人の方が、過去に感染したことがない人よりも高いことが明らかとなりました(ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの1回目の接種後1.4倍、BNT162b2ワクチンの1回目の接種後1.2倍)。
有効率 (95%CI) | |
BNT162b2ワクチン (接種21~44日) | 69% (66~72) |
BNT162b2ワクチン (45~59日) | 72% (63~79) |
ChAdOx1 nCoV-19ワクチン (接種21~44日) | 60% (95%CI 49~68) |
ワクチン接種者103,622人のうち3,106人、ワクチン未接種の対照者464,356人のうち50,340人がSARS-CoV-2感染の陽性反応を示しました。感染リスクの有意な低下は、初回接種後12日目から見られ、21~44日にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンで60%(95%CI 49~68)、BNT162b2ワクチンで69%(66~72)、45~59日にはBNT162b2ワクチンで72%(63~79)に達しました。
コメント
リアルワールドにおけるCOVID-19に対するワクチンの有効性(感染予防率)および安全性(副反応の発生率)は、第3相試験において認められた値よりも低いことが明らかとなりました。
とはいえ、傾向としては変わりありません。ウイルスベクターよりもmRNAベースのCOVID-19ワクチンの方が有効性は高そうです。
本試験では詳細まで述べられていませんが、副反応についてもワクチンの種類により事象、そして発生率が異なります。どのような患者で利益が最大化するのか検討する必要はありますが、基本的には、感染予防効果の高いワクチンの接種を優先した方が良いと考えます。
✅まとめ✅ BNT162b2ワクチンおよびChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後の全身および局所の副反応は、第3相試験で報告されたものよりも低い頻度で発生した。
✅まとめ✅ 感染リスクの有意な低下は、初回接種後12日目から見られ、21~44日にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンで60%、BNT162b2ワクチンで69%、45~59日にはBNT162b2ワクチンで72%だった。
根拠となった試験の抄録
背景:Pfizer-BioNTech(BNT162b2)およびOxford-AstraZeneca(ChAdOx1 nCoV-19)のCOVID-19ワクチンは、第3相試験で優れた安全性と有効性を示している。我々は、英国の地域社会におけるこれらのワクチンの安全性と有効性を調査することを目的とした。
方法:この前向き観察研究では、COVID Symptom Study appを用いて、BNT162b2ワクチンを1回または2回接種した人、またはChAdOx1 nCoV-19ワクチンを1回接種した人を対象に、ワクチン接種後8日以内に自己申告した全身および局所の副作用の割合と確率を調べた。また、ワクチン接種者のうち、その後PCRまたはラテラルフロー検査でSARS-CoV-2の検査を受けた人のサブセットの感染率と、ワクチン未接種の対照者の感染率を比較した。すべての解析は、年齢(55歳以下 vs 55歳以上)、性別、医療従事者の有無(二項変数)、肥満(BMI<30kg/m2 vs 30kg/m2以上)、併存疾患(二項変数、併存疾患の有無)で調整した。
調査結果:2020年12月8日から2021年3月10日の間に、627,383人が655,590回の接種を受けたことを報告した。282,103人がBNT162b2の1回接種を受け、そのうち28,207人が2回目の接種を受け、345,280人がChAdOx1 nCoV-19の1回接種を受けていた。
全身性の副反応は、BNT162b2ワクチン1回目の接種後に13.5%(38,155/282,103人)、BNT162b2ワクチン2回目の接種後に22.0%(6,216/28,207人)、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン1回目の接種後に33.7%(116,473/345,280人)の人が報告した。
局所的な副反応は、BNT162b2ワクチン1回目の接種後に71.9%(150,023/208,767人)、BNT162b2ワクチンの2回目の接種後に68.5%(9,025/13,179人)、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの1回目の接種後に58.7%(104,282/177,655人)の人が報告した。
全身性の副反応は、SARS-CoV-2感染歴のある人では、感染歴のない人よりも多く(ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの1回目の接種後に1.6回、BNT162b2ワクチンの1回目の接種後に2.9回)発生した。
局所的な副反応も同様に、過去に感染したことがある人の方が、過去に感染したことがない人よりも高かった(ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの1回目の接種後1.4倍、BNT162b2ワクチンの1回目の接種後1.2倍)。
ワクチン接種者103,622人のうち3,106人、ワクチン未接種の対照者464,356人のうち50,340人がSARS-CoV-2感染の陽性反応を示した。
感染リスクの有意な低下は、初回接種後12日目から見られ、21~44日にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンで60%(95%CI 49~68)、BNT162b2ワクチンで69%(66~72)、45~59日にはBNT162b2ワクチンで72%(63~79)に達した。
結果の解釈:BNT162b2ワクチンおよびChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後の全身および局所の副反応は、第3相試験で報告されたものよりも低い頻度で発生している。両ワクチンとも12日後のSARS-CoV-2感染のリスクを減少させる。
資金提供:ZOE Global、National Institute for Health Research、Chronic Disease Research Foundation、National Institutes of Health、UK Medical Research Council、Wellcome Trust、UK Research and Innovation、American Gastroenterological Association
引用文献
Vaccine side-effects and SARS-CoV-2 infection after vaccination in users of the COVID Symptom Study app in the UK: a prospective observational study
Cristina Menni et al. PMID: 33930320 PMCID: PMC8078878 DOI: 10.1016/S1473-3099(21)00224-3
Lancet Infect Dis. 2021 Jul;21(7):939-949. doi: 10.1016/S1473-3099(21)00224-3. Epub 2021 Apr 27.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33930320/
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