40歳におけるマンモグラフィー検査は乳がん死亡率を低下できますか?(DB-RCT; UK Age trial; Lancet Oncology 2020)

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Effect of mammographic screening from age 40 years on breast cancer mortality (UK Age trial): final results of a randomised, controlled trial

Prof Stephen W Duffy et al.

Lancet Oncology 2020

Published: August 12, 2020 DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(20)30398-3

PMID: 未

Funding: National Institute for Health Research Health Technology Assessment programme.

背景

乳がん検診の適切な年齢範囲は依然として議論の余地がある。我々は、40〜48歳におけるマンモグラフィー検診の乳がん死亡率への影響を推定することを目的とした。

方法

我々は、英国全土の23の乳房スクリーニング施設を対象としたランダム化比較試験を行った。39~41歳の女性を、一般診療所によって層別化した個別のランダム化を用いて、1:2の比率で、試験に組み入れた年から48歳に達した暦年までの年1回のマンモグラフィー検査(介入群)、または約50歳で最初のNational Health Service Breast Screening Programme(NHSBSP)のスクリーニングに招待されるまでスクリーニングを行わない標準的なケア(対照群)にランダム割り付けした。

介入群の女性は郵便での招待により募集された。対照群の女性はこの研究を知らなかった。

主要エンドポイントは、介入期間中に診断された乳がん(乳がんが死因としてコード化されている)による死亡率であり、参加者の最初のNHSBSPスクリーニングの前であった。

死亡率効果のタイミングを研究するために、異なる追跡期間における結果を分析した。女性は、ランダム化の状態へのコンプライアンスに関係なく一次比較に含まれた(intention-to-treat分析)。

本論文では、長期フォローアップ解析について報告する。

所見

・1990年10月14日から1997年9月24日までの間に女性160,921例が募集された。女性53,883例(33.5%)が介入群に、106,953例(66.5%)が対照群にランダム割り付けされた。

・ランダム化から2017年2月28日までの間、女性は中央値 22.8年(IQR 21.8〜24.0)の追跡調査を受けた。追跡期間10年での乳がん死亡率の有意な減少が観察され、介入群の乳がん死亡数83例に対し、対照群の乳がん死亡数は219例であった。

★相対率[RR] 0.75、95%CI 0.58〜0.97; p=0.029

・その後も有意な減少は認められず、10年以上の追跡期間を経た後の死亡数は126例 vs. 255例であった

★相対率[RR] 0.98、0.79〜1.22; p=0.86

結果の解釈

50歳前に、40歳または41歳から毎年マンモグラフィーを受けることは、乳がん死亡率の相対的な減少と関連していた。しかし、10年後には減少の絶対値は一定だったが、その減少は減衰していた。

スクリーニングの下限年齢を50歳から40歳に引き下げることは、乳がん死亡率を減少させる可能性がある。

コメント

乳がん検査のうち、マンモグラフィーは被験者への負担が少なく簡便であるため、スクリーニング検査としてよく使用されています。しかし、スクリーニング検査の有用性に関する研究報告は少ないと考えます。

英国では、他の多くの国と同様に、50~70歳の女性にマンモグラフィー検査を3年ごとに提供する乳がん検診プログラムを実施しています。これは、スクリーニングを開始する適切な年齢、特に50歳未満の女性をスクリーニングするかどうかについて、不確実性が残っているためであると考えます。

50歳未満の女性におけるマンモグラフィー検診は、放射線学的にも公衆衛生学的にも、50歳以上の年齢層よりも以下のような大きな課題を有しています。
第一に、若い女性の乳房の典型的な構成は放射線学的に密度が高く、マンモグラフィーの感度が低下します。
第二に、乳がんの発生率および死亡率は、50歳未満の女性の方が50歳以上の女性よりも低いため、スクリーニングによる潜在的かつ絶対的な利益は低いです。
第三に、若い女性の腫瘍は進行が早く、エストロゲン受容体陰性である可能性が高く、組織学的に好ましくない悪性度であるというエビデンスがあります。

このように、40~49歳の女性におけるマンモグラフィー検査の効果には、好ましいものも好ましくないものも含めて、依然として関心があるようです。

50歳前のマンモグラフィー検査に関する主要な英国の研究として、検診年齢範囲を47~73歳に延長したAgeX試験と、40歳から1年ごとに検診を行うUK Age試験であります。AgeX試験は2026年まで結果が報告されないようです。UK Age試験は2015年に17年間の追跡調査結果を報告しており、40歳からの年1回のスクリーニングで乳がん死亡率が減少し、ランダム化後の最初の10年間は有意で、その後は減衰したことが示されました。今回ご紹介する研究は、UK Age試験のさらに長期的な結果です。

さて、追跡期間 22.8年のUK Age試験の結果、介入群では死亡数が126例、対照群では255例でした。数値的には死亡リスクが減少していそうですが、相対率[RR]は0.98(0.79〜1.22; p=0.86)と有意ではありませんでした。しかし、介入後10年では有意な死亡リスク減少が認められています(RR 0.75、95%CI 0.58〜0.97; p=0.029)。

本試験は非常に大規模かつ長期の追跡を行っており、非常に有益な結果であると考えます。ただし、医療制度や地域格差などの違いから、他国への外的妥当性は低いと考えられます。また患者背景により、乳がん死亡リスクの程度が異なるため、マンモグラフィー介入による乳がん死亡リスクの低下効果に差が現れると考えられます。

行政的な施作として、少なくとも英国の女性は、40歳からマンモグラフィーを毎年受けた方が良いのかもしれません。ただし前述した通り、患者背景により乳がん死亡リスクが異なるため、どの患者にマンモグラフィー検査を適用した方が良いかを明らかにしていく必要があると考えます。

✅まとめ✅ 40歳または41歳から毎年マンモグラフィーを受けると、検査を受けない場合と比較して、乳がん死亡率が相対的に減少したが、10年後以降はリスク減少の程度が衰退し、有意な差は認められなかった

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